即興型英語ディベート大会(その2)

前回に引き続き、首都圏公立高等学校即興型英語ディベート大会を見学して感じたところをお伝えします。学校の垣根を越えた生徒同士の交流の起点になっただけでなく、チームディベートという活動そのものが、生徒の間に良好な人間関係を築くきっかけを与えました。当然ながら、この大会を通じて生徒が得たものはこれだけに止まりません。
❏ 課題解決力/協働力を、意識させずに養う機会として
即興型英語ディベートは、3対3のチームで行われます。お題は、「高齢者が車を運転することを禁じるべきか否か」など。ディベート開始の時点ではじめて示されます。ここからチームの協働が一気に盛り上がっていきます。
チーム内では、一人ひとりが異なる役割を担うのですが、それぞれがどう論法を立てるか、相手の反論は何か、持てる知識と知恵を出し合って、チームとしての「解」を作ることに集中していきます。
お題を変えながら、ディベートは3ラウンド続きます。前ラウンドの成果と反省を活かし、新たな考え方を試し、数時間というごく短い間に、参加者は急速に成長を遂げていきます。
21世紀型スキルの重要な一部を形成する、「チームでの課題解決力」を養うトレーニングを、特別に意識することなく、活動に集中する中で積み上げていく姿は、容易に想像していただけるものと思います。
❏ 分析的なフィードバックが、参加者を成長させる
ラウンドの合間に、ジャッジ役の大学院生に訊ねてみたところ、数週間前にはじめて即興型英語ディベートを経験したときと比べて、参加者のパフォーマンスには格段の違いが見られるとのこと。
相手の主張・反論を予想しての返しや、説得力を持たせるエビデンスの引き方など、実に多くを、短期間に学んだようです。
また、ディベート準備の進め方、チームでの議論への関わり方など、活動の姿勢にも、大きな成長、著しい変化が見られたそうです。
わずか1回の大会経験で生徒が驚くほど大きく成長したのには、ジャッジ役からのフィードバックに鍵があります。
ラウンドごとに、ジャッジが勝敗を決め、その理由を分析的に参加者に説明します。その中で、参加者は、勝利に繋がった要因は何か、自分たちのチームに足りなかったものは何かを学んでいきます。
❏ 評価とフィードバックは、学習者を成長に導く必須スキル
ここで行われたことは、パフォーマンス評価/ポートフォリオ評価にほかなりません。
評価は生徒を育てます。日常の教室でも様々な活動を採り入れるケースが増えていますが、ただ活動させても得るものは限定的です。生徒に成長や好ましい変化をもたらすのは、分析的で建設的な評価(フィードバック)です。
フィードバックなしには、「目の前の体験からどれほどを学べるか」 は本人任せ、運頼みです。この状態では、活動を設計した側が十分に責任を果たしたことにはなりません。
今回の大会では、「ジャッジ方法のミニレクチャー」 も行われていました。ジャッジ方法を学ぶことは、ディベーターにとっては自らを成長させる方策を学ばせることです。
日常の教室に視点を戻して考えると、学ぶ者を成長に導くための必須スキルとして、教える側が「評価やフィードバックの方法を学ぶこと」の大切さを改めて思い知らされます。
活動を通じて、各教科の学びをつなぐ に続く

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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