習熟度別クラスと考査共通問題(その3)

定期考査を共通問題で行い、優良差分から指導知見を抽出し、それを共有していくことが学校全体での指導力を高めていくことになります。今回は、習熟度別クラス編成を採った場合の共通問題のあり方と、その結果をどのように利用すべきか、シリーズ冒頭で提起したままになっていた問題に対し、考えるところをまとめて締めくくりとします。 ❏ 考査問題を2部構成に 考査問題を作成するとき、「知識・技能」を主に測定するAパート…

習熟度別クラスと考査共通問題(その2)

習熟度別クラス編成では、進度差は設けず、単元ごとの学びの深め方で差をつけていくのが好適であるというのが、前回の主旨です。成績上位の生徒が集まるクラスでは、「思考」や「表現」の要素を多く取り入れ、既習内容の習熟に不安があるクラスでは、集団知で課題に挑ませるなど、状況に応じた学習を設計しましょう。今回は、定期考査を学年共通問題で行うことの必要性について、一緒に考えていただこうと思います。 ❏ 共通問題…

習熟度別クラスと考査共通問題(その1)

習熟度別にクラスを編成/展開する場合、考査問題を共通にするか、別にするかは悩みどころです。共通問題とした場合、上位で点差がつきにくくなったり、下位で低得点に集中したり何かと問題が生じます。別問題にすると、今度はクラス間の比較ができないだけでなく、指導上の改善課題も見えにくくなるなど、こちらもスムーズに行きません。こうした問題への解決策を探ってみる前に、まずは、前提となる「習熟度別クラス」の運用方法…

即興型英語ディベート大会

平成26年12月、東京都立西高等学校で開催された、首都圏公立高等学校即興型英語ディベート大会を見学する機会に恵まれました。西、日比谷、湘南、浦和の4校の生徒さんたちが集まり、会場は熱気に包まれていました。この大会は、文部科学省助成事業である「高等学校における多様な学習成果の評価手法に関する調査研究」のうち、「即興型英語ディベートを活用した統合型ルーブリック評価の研究」(研究代表者:大阪府立大学工学…

評価方法の再整備~高大接続答申から

昨年12月に公表された、いわゆる高大接続答申。ご覧になられたと思いますが、「選抜性の高低にかかわらず、学力については、アドミッション・ポリシーに基づき、学力の三要素を踏まえた総合的な評価を行うことが重要」と打ち出しています。 大学入学者選抜改革の全体像(イメージ)[資料 p.39] ❏ 学力の三要素 上記の答申では、入学選抜で評価すべき「学力の三要素」を、 「知識・技能」  「思考力・判断力・表現…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置

マトリクス点検とは「生徒に求めている学習方法」「評価基準」「テスト問題を通して試そうとしている学力」などを、教科・科目を縦軸に、学年・学期を横軸に、ずらりと並べてみて、段階性や整合性を点検してみようという試みを指す造語です。入学から卒業までを左から右に、教科・科目を上下に、それぞれの時期×科目で「学習活動において生徒に求めるもの」を配列してみることで、指導主眼の適正配置を実現しようというのが狙うと…

即興型英語ディベート大会(その3)

この大会は「即興型英語ディベート」ですから、当然ながら「英語の使用」という点でも教える側に大切なメッセージを伝えてくれています。学んできたことが 「運用力」 に昇華するには、「使う場面」 が整えられる必要がある、ということです。 ❏ 適切な使用場面が、学んできたことを統合する ディベートの参加者たちは、さすがにトップ校の生徒ですが、それでも英語力には個人差もあります。しかしながら、誰もが、必死に且…

即興型英語ディベート大会(その2)

前回に引き続き、首都圏公立高等学校即興型英語ディベート大会を見学して感じたところをお伝えします。学校の垣根を越えた生徒同士の交流の起点になっただけでなく、チームディベートという活動そのものが、生徒の間に良好な人間関係を築くきっかけを与えました。当然ながら、この大会を通じて生徒が得たものはこれだけに止まりません。 ❏ 課題解決力/協働力を、意識させずに養う機会として 即興型英語ディベー…

即興型英語ディベート大会(参観録)

先日、東京都立西高等学校で開催された、首都圏公立高等学校即興型英語ディベート大会を見学する機会に恵まれました。西、日比谷、湘南、浦和の4校の生徒さんたちが集まり、会場は熱気に包まれていました。 この大会は、文部科学省助成事業である「高等学校における多様な学習成果の評価手法に関する調査研究」のうち、「即興型英語ディベートを活用した統合型ルーブリック評価の研究」(研究代表者:大阪府立大学工学研究科の中…

学習指導・進路指導を通じた汎用スキルの獲得(その2)

汎用スキルの一部をなす 「批判的思考」 は、教科学習指導や進路指導を行う上できちんと整えておきたい土台の一つです。その能力は、それだけを取り出して訓練するより、具体的な場面で教えるやり方(文脈モデル)の方が所期の成果を得やすいとのこと。学習・進路の指導に、どんな発想を持って臨んだらよいか、もう少し考えてみたいと思いますのでおつきあいください。 ❏ 言語活動を自己目的化させない 自由研究や自主レポー…

学習指導・進路指導を通じた汎用スキルの獲得

11月1日に玉川学園で行われた、「21.5世紀探究型学習研究会」で勉強してまいりました。実践報告からは多くの刺激と学びを頂戴しました。また、京都大学大学院教育学研究科の楠見孝教授による「批判的試行を育む:探究学習スキル」と題する基調講演では、探究型学習について理解を深め、整理できただけでなく、たくさんの新たな可能性に気づかされました。楠見孝先生の基調講演は、文科省のホームページにある「批判的思考に…

小中高合同研究授業をお訪ねして(その4)

今回の授業公開&合同研究協議では、非常に多くの優れた授業実践に触れることができました。私の拙い表現力でどこまでお伝えできるか甚だ不安です。より多くの先生方に、足をお運び頂き、斯様な好機を利用いただけることを願ってやみません。 ❏ 優れた実践をより広く伝えるためにも 優れた実践を広く見てもらうために、思いついたのは、YouTubeなどを利用した授業ビデオの公開です。 現在、東京都では指導教諭の模範授…

小中高合同研究授業をお訪ねして(その3)

授業を拝見していて強く感じたもう一つのことは、生徒同士、生徒と先生の間に見られる良好な人間関係です。ペアを変えながら練習をする場面でも、新しいパートナーともすっと練習を再開できるし、生徒が周囲の目を気にして発言を躊躇するような場面もほとんど見られません。良好な人間関係が授業を支える基盤であることを改めて感じました。 ❏ 好ましい人間関係を、授業が作っている可能性 現場の先生方が、良好な人間関係作り…

小中高合同研究授業をお訪ねして(その2)

教員側の主導で進める講義形式、学習者を主体とする支援者としての役割、協働学習など、様々な授業観があり、前の時代の主流であったスタイルは何となく否定される傾向があるように感じます。しかしながら、それらはどれか一つを「選択」するものではなく、その場の必要に応じて使い分けられるべきものであり、最適なバランスの中で組み合わされるべきものだと考えます。 ❏ 教員主導、学習者主体、協働学習、… 今回の公開授業…

小中高合同研究授業をお訪ねして

10月2日、東京都立両国高校等学校(大井俊博校長)をお訪ねして、授業公開&小中高合同研究協議会を見学させていただきました。近隣のみならず広い地域から、小学校、中学校、高校の先生方がお集まりになり、のべ50以上の公開授業を熱心に参観され、研究協議では密度の高い議論を交わしておられました。この小中高合同授業研究は、同校が平成24年度からの3ヵ年で段階的に進めている学校改善計画“両国スカイツリープラン”…

ビジネス手帳を用いた指導の可能性(その6)

手帳を使った、日々の、あるいは週ごと月ごとの振り返りの効果は、その場だけのものに限りません。記録を残して定期的に読み返すことで、様々な副次的効果も期待できます。同じ轍を踏まないこと、そして成功したときの自己イメージを強く持つことも、記録によってもたらされる効果です。 ❏ 反省や思いを記録に残すこと自体に意味がある うまくいった時の記憶をはっきりさせておくことは、次の似たような状況で採るべき行動を示…

ビジネス手帳を用いた指導の可能性(その5)

手帳の回収・点検を通じて、日々の学習時間を把握している学校があります。当然ながら、生徒が手帳に記録したままの状態では、集計したりデータとして解析に利用したりすることができないため、担任の先生が手帳を見ながらエクセルに手入力しているケースがありました。 ❏ 手帳に記録されている定量的情報をデータ化 手間の負担は計り知れません。生徒指導のために行っていることが、生徒指導の時間を奪うというジレンマは避け…

ビジネス手帳を用いた指導の可能性(その4)

3ヵ月先、半年先を見据えて今なすべきことをイメージできる状態を保つことは、分岐点となる「選択の機会」に十分な準備を整えて臨むために欠かせません。そのためのツールとして、ビジネス手帳には大きな可能性と優れた機能が備わっています。 ❏ 進路の手引きや進路通信との併用を前提に しかしながら、同様のことを手帳なしで実現している学校も少なくありません。都内で毎年多くの東大合格者を出しているトップ校の一つでは…

ビジネス手帳を用いた指導の可能性(その3)

中学生や高校生が養うべきと考えられる自己管理能力のうち、2つ目は「予定を立てて、計画的に行動できること」です。これについても、時間軸に沿って配置された紙面を眺めて全体を掴む、という手帳が持つ利点が生かせそうです。 ❏ 予定を立てる=所用時間を見積って、優先順位をつける 宿題や提出物など、それぞれの用事について、どのくらいの時間が掛かるのかを見立て、どのタイミングで処理していくのかは、頭の中だけであ…

ビジネス手帳を用いた指導の可能性(その2)

提出物などの忘れものが減ったという報告は、手帳を導入した学校の大半で聞かれます。授業、ホームルーム、部活、委員会など、様々な場面からのタスクを一括で情報管理しておくことは、失念を防ぐのに効果的であることは容易に想像できます。 ❏ 情報の一括管理が、忘れ物を減らす たとえば宿題が出されたときに、科目ごとに作っている授業用のノートに書き留めても、予復習の習慣がない限り、宿題が出たことを覚えていなければ…