高校生にとっての探究活動

高校生にとって課題研究などの探究活動は、新たな知を生成する方法を学ぶ場でもあり、また大学に進んで学んでみたいことを見つけ、さらにはその先に社会との接点を見出す進路意識形成にも繋がります。このように考えると、高校の3年間の中のどこかに、こうした活動を組み込む必要があるのではないでしょうか。探究を軸に各教科の学びを繋いだり、進路希望を形成する指導と探究活動の一体化を図ることを、本気で考えなければいけな…

『TOK(知の理論)を解読する』 を読んで

今年2月に出てすぐに買ったにもかかわらず、積読(つんどく)になっていた同書をようやく読み終えました。以前から国際バカロレアのカリキュラム、特にTOKには大変興味があり、テキストを取り寄せて読んでみたり、実際の教室を参観させて頂いたりしてきましたが、知れば知るほど大きな可能性を感じます。ただし、国際バカロレアのDPを導入するとなるとコストは膨大…。まずは、教える側がそのエッセンスをじっくり学んで、教…

生徒を活動させることの意味を考える(記事まとめ)

各地で行われる研究授業を拝見する中、協働学習やアクティビティなど授業内での生徒の活動性が、以前とは比較にならないほど高まっていることを実感します。その一方で、活動性が、「深い学び、対話的な学び、主体的な学び」 に直結し、思考力・判断力・表現力の向上やコンピテンシーとしての学力形成に直接的に寄与しているかというと、一定の疑問も残ります。そんな疑問を起点に、データを検証してみると、「個々の活動に生徒が…

せっかくの授業内活動を活かすために(その3)

授業時間内の活動性を高めることには、①生徒の頭の中を覗く「観察の窓」を開く、②他の生徒の意見や考えに触れさせて、相互啓発を働かせる、③学習方策や知識の不足を生徒が相互に補完する、④知識や経験を交換することでの発想の拡充を図る、などの狙いがあるというのが前稿で申し上げたことです。 これらに加えて、 といった効果も同時に狙っていきたいものです。 ❏ 目的を達成しようとする中で意識せずに学びに集中 学ん…

せっかくの授業内活動を活かすために(その2)

授業内活動を設計するときに、「この活動で狙っているものは何か」 を明確にしておくことが大切です。手段の合理性や妥当性は、目標に照らしてこそ評価ができるということを忘れないようにしたいものです。 昨日の記事では、 について考えました。 今日はその続きとして、 に焦点を当てて、考えるところをまとめてみたいと思います。 ❏ ちょっとした隙間を作り、自助・互助に使わせる ある問題を解こうにも、一人で挑んで…

せっかくの授業内活動を活かすために(その1)

授業における学習者の活動性を高めることは目的ではなく、別の目的を達成するための手段です。個々の活動によって目指しているものをきちんと区別しておけば、その活動が妥当なものか工夫の余地が残っていないか判断がつきやすくなるのではないでしょうか。 一昨日に公開した「生徒がみな一斉に反応できていることに感じた違和感」 から続くシリーズです。 活動とかアクティビティという言葉でひとくくりにするから、根っこの問…

生徒がみな一斉に反応できていることに感じた違和感

この数年、高校に限らず機会があれば小中学校の授業も参観させていただいています。素晴らしい実践、実に様々な工夫を拝見して、大いに刺激されます。生徒や児童の活動性を高める工夫が随所に凝らされ、「おおっ、こんな方法もあるのか」と勉強になります。しかし、小中のみならず高校も含めた話ですが、授業内活動の充実を図ったことの成果が、どこに繋がっているかに注目してみると、ちょっと立ち止まって冷静に考えてみる必要を…

教室の学びをサンドウィッチに喩えてみると

学習目標の理解と言語化を伴うアウトプットが伴えば、学習の成果は確かなものになるのは、これまで様々な記事で申し上げてきた通りです。 生徒の学習活動を、「目標提示」と「アウトプット」で挟んで、きちんとサンドイッチにしましょう。間に挟まれる「生徒自身による学習」は、言ってみればサンドイッチの中身です。パンで挟まれていないと食べにくくて仕方ありませんよね。 ❏ 1枚目のパン: 導入時にやること 本時に学ぶ…

次期学習指導要領改訂スケジュール

次期学習指導要領は、平成32年に小学校で、平成33年に中学校で全面導入され、高校では平成34年度から年次進行で実施予定とされています。平成32年度からはセンター試験に代わる新テストが実施されるなど、今後数年間は様々な変革への対応に迫られることになりそうです。 二度手間を防ぐには、正式な発表を待つのが得策ですが、かといって座して待っているだけでは後手を踏むリスクばかりが増えそうです。 ご参考: ht…

ルーブリック評価の作成と運用

ポートフォリオと並び、次期学習指導要領で導入が検討されている評価ツールの一つが「ルーブリック」です。基本形は、観点ごとに段階的な到達状況を配置したマトリクスに各々の規準を書き込んだものであり、目標準拠評価(絶対評価)の一つです。あまり馴染みのないせいか、導入を終えて本格的な運用に踏み込んだ学校はまだ少数派。今からスタートして実運用を経てブラッシュアップしておけば、2020年には他校への大きなアドバ…

カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ

「キャリア教育の充実」という言葉があちらこちらで聞かれますが、職業調べ、職場体験などを起点に行うことが多く、そのやり方にぬぐいきれない疑問を少々感じています。もちろん成果をあげているケースもあると拝察しますが、どのような意識の変化を目指した体験なのかは一度しっかり考えてみる必要があろうと思いますし、私の知る狭い範囲では、その成果か検証がなされているのはむしろ少数派のようにも感じます。 ❏ 自らのゴ…

高大接続改革に向けて今できる準備(その2)

昨日の記事でご紹介した「採点ルーブリック」ですが、すでに一部の学校では、定期考査において自由英作文や意見論述問題などで利用が始まっているようです。最初から満点のものなど作りようもなく、使いながら、規準そのものの妥当性(※)を高め、適用しやすいものに改めていくことが大切です。 「直感で与えた点数と、基準に沿った点数が一致するのが良い基準」というのも荒っぽく聞こえるかもしれませんが事実です。良い答案だ…

高大接続改革に向けて今できる準備

大学入試改革では、これまでと違った新しいタイプの問題が登場すると考えられています。昨年末に文科省のホームページでイメージ例が公表されましたが、検討の途中とあってまだサンプルは十分ではありません。現段階では、出題の変容を正確に予想するのは困難です。しかしながら、すでに一部の大学で出題されている「正解がひとつに決まらない問題」 などは、今後も出題を増やすはず。正解がひとつに決まらない以上、結論を書かせ…

学力の三要素とは~もう一度考えてみました

平成28年に出された馳文部科学大臣のメッセージ「教育の強靭化に向けて」 では、従来と変わらない時間枠の中に、思考・判断・表現の各要素を織り込み、主体性・多様性・協働性を身につける場を設けながら、学習内容は減らさないという方針が再確認されました。知識・技能を整えてから、思考力・判断力・表現力を鍛えて、という段取りでは所定の指導時間には収まらないことになるのは容易に予想がつきますし、主体性・多様性・協…

思考力をはぐくみ評価する#INDEX

大学入試改革で、「表現力」と並んで注目されている「思考力」。きちんと定義されることもなく用いられてきたことが多いだけに、それをどう評価し、どのように獲得させていくかは教える方それぞれの経験則や主観で語られがちです。頭の中で起きている思考は、アウトプットされたものを外から観察できる表現力とは異なり、プロセスのすべてを直接的に観察することはできません。答案として書き出されたものから伺えない部分は、生徒…

思考力をはぐくみ評価する(その4)

学びの過程で、途中のどこかと仕上げの段階とで答えを作る場を2度おいてみると、最初の答えと最後の答えとの間には当然ながら違いが生じます。両者の違いには、その間に獲得した知識に加えて「積み上げられた生徒の思考」も含まれていますよね。 ❏ 思考の広がりと深まりを見て、学習を評価 その違いを最も大きくするような授業が好ましい授業であることは言うまでもありません。教育経済学の言葉を借りれば、「付加価値が大き…

思考力をはぐくみ評価する(その3)

思考を評価するには、課題解決行動そのものを観察することが必要です。「考えるための問い」を示したら、まずは生徒に解かせてみて、その過程でどんな思考がおこなわれているか/どこで躓いているか(どのような思考ができていないのか)を注意深く観察してみましょう。 ❏ 問いには2つのタイプ~特性を見極めて 問い(設問・課題)と一括りにされるものの中には、外から見える解決行動で2つのタイプに分けることができます。…

思考力をはぐくみ評価する(その2)

思考力の向上を図るにも、測定・評価するにも「思考させる場」を与えることが大前提。そのために欠かせないのが「考えさせるための問い」であるというのが昨日の記事の趣旨でした。本日は、その問いを教室でどう使っていくべきかを考えてみます。 ❏ レディネスを整えたら、まずは生徒にやらせてみる 「考えるための問い」を示しても、答えを出すまでのプロセスを丁寧に誘導しては問いの意味がなくなります。教えてしまえば、生…

思考力をはぐくみ評価する(その1)

知識・技能に加えて、思考力・表現力や協働性・多様性・主体性がより強く求められています。それぞれの学力要素を目標水準に引き上げるには、個々の生徒について評価を通じて「現況と目標との差分」 を明らかにするのが第一歩。何がどのくらい足りていないのか特定できないことには、それを埋める計画も立ちません。 ❏ 測定/評価方法の確立にむけて 知識・技能の多くは、テストによってある程度まで正確に測ることができます…

家庭学習の習慣形成に向けて

もうじき新学期です。「授業開き」やオリエンテーションでは、予習や復習の方法、家庭学習の時間についてもお話しをされているかと。家庭学習について、昔からよく言われるのは、「学年+2時間」とか「平日は2時間以上、休日は4時間以上」といったもので、そう伝えているのは、今もよく見聞きします。確かにこれだけ勉強すれば、成績も伸びるでしょうし、進路希望の実現にも近づけると思いますが、あくまでも「実のある学びを、…