カリキュラム・年間指導計画

参照型教材を徹底して使い倒す(その2)

不明を前にしたら手元の教材を参照する習慣を 前稿(その1)では、課題解決に使う場面を十分に経験させないまま、知識の拡充を図ったり、体系的な理解を形成しようとするアプローチのリスクと、コスパの低さについて考えるところをまとめました。生徒にとっての自分事となり得る課題を用意し、それに立ち向かわせる中で、知識の獲得と理解の形成を図っていく、所謂PBL型(課題解決型学習)の授業/学ばせ方への転換を図る中で…

参照型教材を徹底して使い倒す(その1)

記銘のための反復は、課題解決に活用する中で 例えば古典の授業では、まとまりのある文章を題材にした読解指導に入る前に、文法をひと通り勉強させるという手順を採ることがあります。ある程度の体系的な文法理解を作ってからでないと読解に入ってからも躓きが多くてスムーズに進めないという思いからの選択でしょう。英語でも、主教材と切り離して単語集や例文集を個々に覚えさせていくのは「普通」ですし、概説書をひと通り学び…

到達目標は適正な水準にあるか~大学編(後編)

前の記事では、大学で行われる授業評価アンケートで、到達目標の設定が適正な水準にない授業でうけた高い評価を鵜呑みにすることのリスクを指摘させていただきました。目標水準の設定が適正かどうかを確かめる仕組を整える必要があります。既にご紹介した通り、授業の目標を達成できた/できそうかを尋ねる質問と、学習時間を把握する質問とが併存している授業アンケートでは、後者の結果で回答を二分したうえで、前者の回答を捉え…

到達目標は適正な水準にあるか~大学編(前編)

大学生があまり勉強しない――批判的な文脈でよく耳にする話題です。欧米に比べ、あるいは小学生と比べても、学習にかける時間が極端に短いとまで言われる始末。小学生と大学生を一緒くたにするのはどうかと思いますが、それはそれとしてひとまず脇に置いて…。大学からお預かりした授業評価アンケートのデータを見ても、大学設置基準が「標準」とする、授業1回あたり2時間以上の勉強時間を授業外学習に投じている学生の割合は確…

ホームルームの年間実施計画

新学期に向けて、各教科の年間指導計画は完成に近づいていることと拝察いたしますが、各学年におけるロングホームルームの年間実施計画の作成は進んでいるでしょうか。年間で30回ほどの貴重な指導機会に、生活、学習、進路の各領域の到達目標を達成するための活動を余さずに配置するには、実施計画を十分に練る必要があります。活動の一つひとつに優先順位をつけて、限られた指導機会という枠に落とし込んでいこうとする中で、こ…

過去問演習への取り組ませ方(指導計画への組み込み)

受験期に限らず、大学入試の過去問を授業内外の課題に採り入れることは、「今やっている勉強がどう問われるか/どんな場面に繋がるのか」を生徒に知らしめる効果的な方法です。学びに方向性を持てるようになるなど、生徒にとっても小さからぬメリットがあろうかと思います。しかしながら、大切なのは過去問の使い方、取り組ませ方です。単純に過去問演習を増やし、出題の形式に慣れさせ、解法を知っている問題を増やすだけでは、演…

授業外の学習指導機会の位置づけと実施方法

補習や講習など、学校では様々な学習指導の機会が「授業外」に設けられていますが、通常の(=教育課程の中に設定されている)授業との関連付けが曖昧なまま、それ以外の指導機会(補習や講習)が「追加」されているだけのケースが少なくないように思われます。生徒が学習に向けられる時間には「枠」があります。そこに色々な指導機会を加えていくだけでは、あふれ出すものが増えるばかり。個々の指導機会の関連付けを明確にして、…

年間行事予定の書きだし方#INDEX

向こう3か月、半年、1年、…と先を見渡して、選択の場、越えるべきハードルを意識して過ごす日々と、次々に訪れるイベントを特に準備を整えるわけでもなくただ経験していくだけの毎日とでは、歩みに大きな差が生じます。卒業までの3ヵ年/6ヵ年で到達できるところ(=教育成果)にも大きな違いが生じるのは想像に難くありません。 2016/03/11 公開の記事インデックスを再アップデートしました。 生徒が先の予定を…

年間行事予定の書きだし方(その5)

年間行事予定に配された様々な指導の一つひとつの背後には、生活、学習、進路の3観点での段階的到達目標が存在しているはずです。既存の年間行事予定や来年度の原稿を前に、各行事に込められた指導意図を取り出してみる(=言語化してみる)ことで、これまでの指導計画/行事予定に朱入れすべきところが明らかになるというのが前稿の主旨です。この工程を踏むことで、段階的に設けるべき到達目標を正しく配列した適切な構造に改め…

年間行事予定の書きだし方(その4)

年間行事予定の起草は、単にカレンダーを諸行事で埋めていくことではありません。領域ごとの段階的な到達目標が正しく配列されているか、その目標群を達成するのに必要な指導の機会が過不足なく用意できているかを確認しながら、教育リソースの最適配分を実現すべく調整を重ねることだと思います。選択の場としての行事であれば、そこに至る準備が十分に行えるだけの期間とプロセスが用意されている必要があります。体験や学びの場…

年間行事予定の書きだし方(その3)

あらゆる指導機会は、時期や段階ごとに目指すべき「到達状態」に生徒を導くために設けられるものである以上、年間行事予定に記載されるすべての行事は、学校の教育目標と「生活」「学習」「進路」の三領域のいずれかで関連付けられていなければなりません。これを着実に実現するには、本稿でご紹介するような前工程をしっかりと踏んでおく必要があると考えます。 2014/07/28 公開の記事を再アップデートしました。 ❏…

年間行事予定の書きだし方(その2)

年間行事予定表は生徒が常に参照できるようにしておきましょう。先の予定をきちんと把握していれば、次にどんな選択や課題が控えているのか、それに向けて何をすべきなのか、生徒の意識は自ずと高まります。心構えも準備もなく、指導機会に臨んだり行事に参加したりでは、そこで得られるものはぐっと減ってしまいます。何を学ぶのか、そのためにどんな準備が必要なのか生徒自身が考える機会を作ることが大切です。もっとも、年間行…

年間行事予定の書きだし方(その1)

どの学校でも作られている年間行事予定表。様々な行事が組み込まれ、生徒には行事にじっくり向き合える、忙しすぎない学校生活を送らせてあげたいと思っても、そうそう行事の整理・再編は進みません。すべての行事を3年間/6年間のカレンダーに落とし込むだけでも容易ではなく、分掌や学年、生徒会との調整に当たる先生のご苦労ばかりが目に浮かびます。どうにか行事を配列できても、それでOKという訳ではありません。年間行事…

教材としての大学入学共通テスト問題

週末に行われた大学入学共通テスト。様々な学びの場を想定した出題など、工夫の数々が見て取れます。新しい学力観の下での「学ばせ方」を改めて考える材料として、しっかり目を通したいと思います。出題研究は「教科書で何をどう学ばせるか」を捉え直す機会。指導観/授業観のアップデートに欠かせません。各単元の内容を学ばせる過程にどんな学習活動を配列することで、どんな能力・資質を養っていくかをしっかりイメージしないと…

令和7年度(2025年度)の大学入学共通テスト

先週水曜日(11月9日)に大学入試センターが「令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等」を公開し、大きな話題になっています。国語でも、グラフがいくつも問題に組み込まれ、データを基に考察する場面が設定されるなど、ひと昔前の出題とは大きく様変わりです。試作問題に添えて公開された「問題作成方針に関する検討の方向性について」や各科目の「試作問題の概要」にも目を通した上で、どのような方向で今後の学習指導…

進級後の指導を見据えて(円滑な学びの接続)~まとめ

教科学習指導にしても、進路指導や生活指導にしても、単年度で指導が完結するわけではありません。ある学年での指導は進級/進学後に必要になるものを獲得させるためのものでもあり、そこでの指導目標が未達なら、先の指導は補完やフォローに追われ、計画は崩れていきます。カリキュラムは、単元内容を理解させることを手段に、様々な能力・資質を獲得させるために編まれているものですので、各単元の学習内容を理解させるだけでは…

前年度の指導に起因する学習指導上の課題

あるクラスを担当していて、学習指導がうまく行かない場合、その遠因が前年度までに生徒たちが受けていた授業に存在する場合があります。既習事項の習熟が不十分では学び直しに時間がかかり本時の学びが十分に深められないこともありますが、ことはそれだけではありません。生徒は授業を担当する先生の教え方にあわせて学びのスタイルを作りますが、新年度からご担当される先生が変わって学ばせ方が違ったものになれば、当然ながら…

中高一貫校での中高/前後期接続

中高一貫校の強みは、6ヵ年を通した指導計画のもとで中断なく指導の成果を積み上げられることにありますが、中高/前後期の接続に課題を抱え、本来の強みを生かし切れていないケースもあります。中学/前期課程では高い学力向上感や積極的な学ぶ姿勢が観測されていたのに、高校/後期課程に進んだとたんに伸びを欠くこともしばしばです。 新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続 下図は、中等教育学校を含むいくつかの…

生徒が学んできたこと、経験してきた学び方の確認を

どの教科の学習指導でも同じですが、本時の学びに繋がるところ[既習内容]を、目の前にいる生徒がどこまで/どのように学んできたか正しく把握した上でなければ、効果的な学びの場は作り出せないはずです。知っているだろうと先生方が思い込み、「既習」と想定していたことを生徒が学んでいなかったとしたら通じる話も通じませんし、既に学んで知っていることを「初出」と取り違えていても無駄が生じます。既視感の中で退屈を覚え…

探究活動の舞台としての地域連携

これまで(=新課程への移行前)に教育活動の一環として「地域連携」に力を入れてきた学校では、新たに始まる「総合的な探究の時間」でも引き続き「地域課題」に取り組ませることが多いかと思います。長きに亘り築いてきた地域との関係は大いに生かすべきであろうと思いますし、学校が教育目標として「地域課題に向き合える人材の育成」を掲げてきたのであれば、急に旗を降ろすわけにはいかないはずです。地域課題の解決を「ターゲ…