「目線合わせ」とは、教育活動を進める前に、指導者間で指導目標や到達水準、評価観点などについて理解を共有し、解釈のずれを解消する作業。各人が持つ期待や判断基準を言語化し確認し合うことで、指導や評価の方向性を共通の前提のもとに揃えることを目的とします。
この作業は、生活、学習、進路、探究の各領域の指導について行います。学年・学期を経て指導の成果を積み上げていくには、最終的なゴールだけでなく、教育活動の各フェイズでの指導方針、到達目標(評価規準など)を、言語化してすり合わせていく必要があります。
目線合わせでは、抽象的な理念の共有にとどまらず、考査問題の案や行動評価のルーブリックといった「具体的な形」に落とし込むことが肝要です。検討の材料には、過年度の考査問題とその結果、探究の成果物なども積極的に取り込むことで、その具体性を高めましょう。
こうした手続きを経ないと、指導のばらつきも防げず、3年間/6年間の指導を整合的に「接続」していくことも難しくなるはずです。また、目線合わせの結果は、必要に応じて生徒や保護者にも示し、理解と共感を得ておくことも重要です。
必要とされる背景
指導者ごとに指導目標や到達水準の解釈が異なるまま教育活動を始めると、生徒への指示や評価結果にばらつきが生じます。その結果、生徒が不要な戸惑いを抱くと頑張りの方向が乱れるとともに、指導の意図が伝わらず、不公平感が生じるなどの問題も生じます(2196、20045)。
定期考査の出題でも、指導方針、到達水準、評価基準に関する共通理解の確立は欠かせません。生徒は考査問題に合わせて学習のスタイルを作るため、3年間/6年間分の考査問題を並べてみて、連続性や段階性に乱れないように、予め出題計画を作りたいところです(5246)。
教科固有の知識・技能の獲得と並行して、生徒は基礎力(言語、数量、情報の各スキル)や思考力(問題発見力、メタ認知・適応的学習力)、実践力などを身につけていきますが、これらは全教科を挙げてコミットすべきもの。教科を跨いで、「学力観」と「生徒の成長ストーリー」の共有なしには、効果的な教育設計ができません(22865、4252)。
目線を揃えて日々の指導に当たっていると、先生方それぞれが工夫した実践やその課題の共有も進み、より良い指導法の確立に向けた校内の共有が加速します。新しいことに取り組むときの前提です(2237)。
実践の方法(目線合わせの進め方)
1.期待する行動をどう伝えるか(どんな表現を与えるか)
生徒に伝える期待(=先生方の指導目標)を明確にでは、生徒に何を求めるのかを教師間で先に言語化して揃える必要があると伝えました。授業開きやオリエンテーションで何をどう伝えるか、しっかり話し合っておくことで、「どんな行動を生徒に求めるか」を明確化します。
2.成果物やルーブリックを並べて評価の目線を揃える
評価の基準と機会を見直し~指導計画の起案前にでは、評価規準やルーブリック、過年度の成果物を材料に評価の観点を突き合わせる方法を紹介しました。実際の成果物を前に「どこが評価ポイントか」を確認することで、指導の重点や評価判断の基準を具体的に揃えられます。
3.定期考査の出題計画を作成しながら、指導の方針を揃える
定期考査の出題計画作りで、指導目標の確認と目線合わせでは、考査問題の素案を作ることで、測定する学力や到達水準を具体化し、教師間の学力観のズレを解消する方法を示しました。出題計画を共有することは授業の方向を揃える作業にもなります。
4.科目固有の知識・技能以外の「能力・資質」の育成マップ
全教科でコミットすべき能力・資質の涵養では、言語・数量・情報などの基礎スキルや思考力をどの教科でどう育てるかを共有する必要があると述べました。教科を越えて学力観を揃え、生徒が3年間/6年間でどのように成長するかの見通しを共有します。
5.新たなチャレンジへの協働は、検証手段の協議と共有が先決
新たなチャレンジに先生方の協働で取り組むときでは、手順やマニュアルを先に決めるのではなく、まず「何を目標とするのか」と「成果をどう測るのか」を共有して目線を揃えることが重要だと申し上げました。その上で、それぞれが最善と思う方法で実践し、結果を比較して効果の高い方法を見つけることで、より良い指導法への接近が図れます。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
