授業改善を加速するための共通言語(用語集)

より良い授業の実現を目指した先生方の協働(学校全体での/学校を跨いだ授業改善)を進めるときに大切なことの一つに、「授業や学習を語る共通言語」の存在があります。当然ながら、学習指導要領で用いられている言葉の数々もそこに含まれますが、それだけではありません。
日々の授業研究の中で、一定以上の頻度で使われていながら、きちんと定義されていない言葉も少なくないかと思います。概念を共有できる言語がなければ、噛み合った議論は生まれず、アイデアも育ちません。
例えば、「学ぶことへの自分の理由」という言葉ひとつでも、その意味を深いところで共有できていれば、先生方それぞれが考え、試したことが結び付き、より効果的な具体化/改善のアイデアが生まれます。

当ブログの記事の中で「よく使っている言葉」も、一つひとつ取り出して、定義と説明をきちんと行い、リストにまとめる必要を感じました。このページをインデックスに、順次、項目を整えていきます。

ターゲット設問 問いの分割 仮の答え
認知の網 相互啓発 適正負荷
学習方策 目線合わせ 成果のたな卸し
 


ターゲット設問:学習内容を俯瞰する問い、学習活動配列の「軸」

本時の授業/単元の学習を通じて答えを作る、「学習内容を俯瞰し得る問い」のこと。その問いに答えるのに不足するものを揃え得る学習活動を選択・配列することで、授業は設計されます。導入フェイズで提示すれば、学習に見通しを与えますし、学び終えて答えを仕上げさせれば、深く確かな学びが実現し、学びの成果のたな卸しもできます。>詳細

問いの分割:思考負荷を下げ、学びに方向性を与えるための段階化

問いの分割/スモールステップ化とは、問いや課題を、その答えに至る思考・作業のプロセスに即して、複数の問いや段階的タスクに分解し、学びに取っ掛かりと方向性を与える授業設計の考え方。フェイズごとに理解や進捗を確かめることで、観察とリカバーの機会を作ります。学力差の不要な拡大や、思考停止の長時間化を防げます。>詳細

仮の答え:ターゲット設問に対して、授業の最初に作らせる暫定解

本時/単元で設定した「ターゲット設問」に対し、学習を本格的に始める前の段階で、生徒がその時点で持ち合わせている知識・経験・発想をもとに作る未完成の答え。導入で作らせることで、理解の範囲や誤解・不明の所在といった学びの初期値を把握します。学習後に答えを作り直させれば、両者の差分により、学びの成果も可視化できます。>詳細

認知の網:物事を理解するための、知識や経験が作るネットワーク

これまでに獲得した知識や経験によって形成され、新しい情報を拾い上げたり、理解したりするために働く認知の構造です。新たに入ってくる情報を拾い上げて結び付けるその働きを、ものごとを掬い取る「網」に喩えました。既得の知識や経験、記憶などが存在する領域にしか張られず、その広さや密度が理解や発想の及ぶ範囲を規定します。>詳細

相互啓発:他者の思考や取り組みに触れることで生じる学びの更新

学習者が答案・発言・思考過程を共有し合い、その違いや着眼点に触れることで理解や発想を更新していく学習作用のこと。自分の考えだけでは見えにくい不足や別の見方に気づくことで、学びが深まります。多様な発想が交わるコミュニティがその作用を大きくします。共有で得た気づきを踏まえて学びを仕上げることも徹底しましょう。>詳細

適正負荷:課題の調整と、準備・仕上げを含めた総合的な指導設計

課題が易しすぎれば「できたことの確認」に止まり、不足している理解や思考の穴に気づけません。逆に難しすぎれば、途中で手が止まり、挑戦意欲も損なわれます。少しの背伸びを要する程度の負荷をかけ、不足に気づかせてこそ、学びの改善を促せます。学習方策、目的意識などを見極めて、問いの分割などの手札を有効に使いましょう。>詳細

学習方策:学習を進める上で獲得すべき行動と思考の様式の総体

学習方策とは、課題に向き合い、必要な情報を集めて理解を深め、試行錯誤を通して学びを進めていくための取り組み方や思考の型のこと。知識の更新が加速する社会では、自律的に学び続けられることが「生きる力」です。自ら学び直し、学び続けていく力の基盤として、日々の学習の中で、そうした方法と姿勢を学ばせていきましょう。>詳細

目線合わせ:言語化を通じた、指導目標と評価観点の共通理解

目線合わせとは、実際の指導を始める前に、指導者間で指導目標や到達水準、評価観点の理解を共有し、指導や評価の方向性を揃えること。期待する行動や評価規準、考査問題などを言語化し、具体的な形で確認し、解釈のずれを解消します。揃えた方針は、生徒や保護者にも必要に応じて示し、理解と共感を得ておくことも大切です。>詳細

成果のたな卸し:次の学びに向かうための進捗と改善課題の整理

学習前の考えや理解と、学習後の状態を比べ、どこが変わり、何ができるようになったかを整理して可視化すること。導入フェイズの「仮の答え」と作り直した答えの差分や、評価基準に照らした到達状況を確かめることで、学びの成果と不足を具体的に捉えます。結果だけでなく思考の過程に焦点を置くことで次の課題が明確になります。>詳細

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一