同じ教材を用い、同じ展開で授業を行ったとしても、授業を終えるときのアクションや教室を離れて行わせる学びの仕上げのあり方しだいで、学習効果は大きく異なります。授業を進めて、教科書の予定のページまで終わったからと言って「ほっ」としている場合ではありません。
以下のそれぞれの場面で、押さえるべきところをしっかり押さえていたか、これまでのご指導をときどき振り返ってみるのも良さそうです。
- 授業を終えて生徒を教室から送り出す前
- 教室を離れて学びの仕上げに取り組ませるとき
- 学ばせたことの体系化と知識の拡充を図る場面
- 指導計画や授業デザインを考える段階で
2016/08/31 に公開した「まとめページ」を再更新しました。
(前回更新:2018/10/15)
❏ 授業を終えて生徒を教室から送り出す前に
板書を辿り直して、学びの振り返り(板書の技術 #4)
授業を進める過程で書き残してきた板書を辿り直すのは、そこまでの学びを振り返るのに好適。知識や理解の補完を図るのにも、重要点を押さえ直すのにも効果的に使えるはずです。
既習の範囲の中に質問を作りなさいというタスクを課すと、わかっていたつもりのことにも改めて問いを立ててみる必要が生じます。これにより学びはさらに深まっていきます。
授業を終える前の5分間は、本時の学びの成果をアウトプットすることに当てましょう。理解も確かめられますし、不足の所在を知ることで学びの仕上げに向かいやすくなります。
正解が示された瞬間に、生徒は答えを考えることをやめ、与えられた答えを覚えることに向きを変えてしまいます。答えを示す前にどれだけ生徒に考えさせられるかが勝負です。
cf. 思考力を鍛えるのは、教える前が勝負
❏ 教室を離れて学びの仕上げに取り組ませるとき
教室での学びで得た気づきや理解を携え、改めて課題に取り組ませることで、学びをより深く確かなものにさせていきましょう。不明の所在に気づけばその解消に向かう行動も生まれます。
グループでの話し合いなどを通して、何となく答えが出た/わかったような気になり、そこで学びを止めてしまう生徒が居ます。学びの場の盛り上がりで安心してはいけません。
課題や活動に取り組ませたとき、理解の確認や達成の検証を行っても、不足が見られた生徒へのその後の指導が曖昧になっていることはないでしょうか。仕上げさせてこその「確かな学び」です。
学習活動に取り組ませる目的は、個々の生徒に学力(知識・技能、能力・資質)を獲得させるためのもの。仕上げにきちんと取り組ませることで、獲得の機会を逃させないようにしましょう。
教室を離れて仕上げた結果(個々の生徒が作り上げた答案など)をクラスでシェアすれば、他の生徒の気づきや思考に触れて、さらなる学びの深化が期待できるはずです。
cf. 答案のシェアや発表で相互啓発を正しく働かせる
❏ 学ばせたことの体系化と知識の拡充を図る場面
授業内に設けた様々な学習活動を通して学ばせたことも、ときに断片化していたり、部分理解に止まったりしていることがあります。教科書に落とし込むことで体系化を図りましょう。
単元を振り返って、まとめシートを生徒に作らせてみたりすると、当該単元の理解が進むだけでなく、情報を知に編む力などの獲得も期待できます。まとめの工程も生徒にチャレンジさせましょう。
教室の学びで刺激した生徒の興味・関心は、知識や理解の拡張を図るための起点です。学びの仕上げを図ると同時に、学びの総量(深さ✕広さ✕密度)を大きくする策も効果的に講じたいところです。
知識や理解の拡張を図るときに、クラス全員をカバーするような最大限の網をかけようとすると、必要としていない生徒に過剰な負荷を掛けてしまい、様々な弊害を生じさせることになります。
❏ 指導計画や授業デザインを考える段階で
教室内には一定の学力差が存在するもの。クラス一律の課題だけでは、全ての生徒に達成可能で且つチャレンジングなハードルを用意したことにはなりません。
学力や学欲が高い生徒の成長に蓋をしないためにも、進路希望の実現により広く深い学びが必要な生徒のニーズに応えるためにも、指導計画には「学びの拡張」を組み込んでおきましょう。
各教科の学びは、探究活動における研究テーマを見つける機会。授業で刺激した興味を掘り下げる起点となる具体的な問いを用意することで、探究から進路への接続を図りましょう。
限られた授業時間を有効に使うには、教室でしかできないこと(対話的な学び)と生徒が個々に取り組めること(知識の獲得など)の切り分けをはっきりさせた指導計画が欠かせません。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一