授業終了のチャイムまで30秒を残して、「さて、今日の授業でどんな気づきがありましたか」と生徒に尋ねた先生がいました。どの生徒もささっと鉛筆を走らせ、先生が出す次のキューで隣同士ノートを見せ合っていました。一連の動きによどみなく動くところを見ると、すっかり習慣化している様子です。
❏ 気づきを言語化&振り返りの習慣化
リフレクションシートを用意して振り返りをさせる代わりに、その日のノートの最後に自分の言葉を書くというのも悪くありません。
隣同士で互いに見せ合うだけに、ノートの工夫にも目が行くかもしれません。
休み時間に生徒に頼んでノートを見せてもらったら、面白いとか頑張ったとかの単なる感想ではなく、その日に学んだことをもとに自分で考えたことを書いている生徒もいました。
継続的に行わせ、且つノートチェックを通して見つけた「よい記述」をクラスで紹介しているうちに、徐々にかけるようになってきたというのは、担当先生に後で聞いた話です。
❏ 気づきを作るには、問いかけて考えさせることが必要
如上の取り組みそのものも素晴らしいもので、チャンスがあれば取り入れてみたいものですが、「今日の授業での気づきは何か」に答えを持ち得る授業そのものに倣うべきものがあると感じます。
山場もなく、単に教科書をなぞって終える、いわゆる「教科書を教える授業」では、気づきが生まれないことがあります。
気づきとは、先生から問われたり、自分で疑問に思ったこと(ときとして「疑問」という具体的な形をとらず、「引っかかる何か」ということもありますが)を考えてこそ得られるもの。
問い掛けを重ねて、考えさせる授業を日々実践していないと、冒頭で紹介した「授業の終え方」はできないのではないでしょうか。
❏ 教員同士ですら如上の問いに答えられない授業もある
そんなことを考えながら、ある学校の授業公開にお邪魔したとき、数人の先生が参観されていたので、その場にいた先生方に「今日の授業で生徒が見つけた気づきは何でしょうね?」と尋ねてみました。
その授業は発問が少なく、生徒は先生の話を聞いているだけの時間が長く、山場らしい活動もありませんでしたので、はっきりした答えがなかなか返ってきません。
更にそのあと、授業をされた先生ご本人に聞いてみたところ、きょとんとされた顔で、質問の意味を図りかねる様子でしたが、やがて本時に扱った項目を並べ始めました。
それは「生徒の気づき」ではなくて、「先生が伝えたこと」です。
❏ 本時の気づきは何かへの答えを予想して授業を立案
ひとつの授業で、いくつもの気づきや、知的興奮を与えられるような授業をしたいものです。
まずは、先の質問に授業者ご本人がいくつかの答えをすぐに並べられる必要があるように思います。
本時の主眼や学習目標を明確にする、一つの形ではないでしょうか。
その上で、授業を終えるときに生徒に「本時の気づき」を言語化させてみれば、指導に込めた意図をどこまで実現できたか測るバロメーターが持てるような気がします。
ご参考記事: 終了時の工夫で成果を高める(記事まとめ)
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一