授業中の活発な発言や思考を促そうと、様々なアクティビティを仕掛けてみても思ったように生徒が動いてくれないことも少なくありません。生徒が自力で/協働で解決すべき課題を与えないと、活動が自己目的化し、盛り上がりにも学びの深まりにも欠けてしまいます。
しかしながら、しっかりお題を与え、生徒が考え/話し合う場を作ってみても、戸惑いもあるのか動き出しが悪かったり、然したる意見も出なかったりと、思考の深まりが一向に見て取れないこともままあります。原因は様々ですが、状況を変える一手を考えていきましょう。
2017/07/07 公開の記事を再アップデートしました。
❏ 指示が曖昧/説明が長い+全体像が捉えにくい
こちらが与える指示が曖昧だったり、手順の説明が不完全だったりしたら、生徒が戸惑うのも当然です。初めて授業に採り入れてみて、生徒が経験したこともない(当然ながら、習熟していない)タイプの活動ならなおさらです。
手順の説明をするときに、流れ全体をいっぺんに伝えても生徒は覚えきれません。結局はステップごとに説明をやり直す羽目になり、活動に当てる時間がどんどん減っていきます。
かといって、丁寧に説明しようと時間をかけるだけでは、途中で生徒が飽きてしまい、いざ活動というときに集中してくれません。
また、ワンステップずつ説明する方法では、活動の全体像が捉えにくく、何をしようとしているのかを分かりにくくすることもあります。
全体の流れを概観できる図をあらかじめプロジェクタ/プリント/板書などで示してしまい、それから流れの順に一つずつ目の前の作業を指示するようにすれば、如上の問題を同時に片づけることができます。
先の展開が予想できてこそ、生徒は目先のやるべきこと/指示されたことに意味と目的を見つけるのではないでしょうか。
❏ 考えるだけの材料が揃っていない
考えるだけの材料が足りなければ、思考が膨らまないのも致し方ないところ。対話に参加させる前に、教科書や資料を読む/調べる、考える/まとめるといった「準備」にしっかり取り組ませましょう。
但し、個人でのタスクに行き詰まり、一人でうんうん頭を抱えていても先には進めません。周囲とちょっと話し合って知識や発想の交換で、行き詰まりを打破するタイミングも見極めていきましょう。
ここで教える側が我慢しきれず、うっかり正解を与えて説明してしまっては、生徒はそれ以上考えることも、自分で調べることも、当然ながら発言する(=思考を言語化する)こともなくなってしまいます。
行き詰りが見て取れる場面では、出口に気づかせる「問い掛け」を行うのが第一の選択肢。目の前にある教科書や資料に書かれているのに意識/サーチライトが向けられていないだけかもしれません。
学びにおける対話は、生徒同士の話し合いだけではなく、文字を介して書いた人との対話、加えて先生との問答の3つでその大半が構成されます。それぞれの利点を活かし、バランスよく上手に活用させましょう。
❏ 先生が持っている正解を探り当てようとしている
先生が問いを発したとき、「先生は正解を持っている」と生徒は思うもの。その正解を探り当てようとする意識が有意になりがちです。
自分が思いついた答えが「正解」だという自信が持てなければ、「口に出さないでおく」という選択をするのも無理からぬところかと。間違って恥ずかしい思いをするくらいなら、と考える生徒も少ならずです。
これまでの学習経験の中で、指名されてせっかく答えたのに、「ちょっと違うね」で片づけられていたら、「わかりません」で通した方がマシと考えるようになっても当然かもしれません。
生徒を指名するときは、正解が出ようと出まいと、想定しておいた人数に発言させ、正誤判定や評価を挟まずに、一つひとつの発言にじっくり耳を傾ける姿勢を示していくことも大切です。
教室内での活動を通じて、「思いついたことを言葉にしてこそ、発想の交換で相互啓発が働くし、多様性を学べ、判断力も高められる」ということを生徒に身をもって学習させるようにしたいところです。
❏ 活動の配列を変えてみるだけで劇的な変化が
1コマの授業の中に含まれる活動が、パーツとして同じであっても、配列の仕方が違えば、生徒の学習活動を活性化させる効果は大きく異なります。例えば、ある問いを示した場合を想定してみましょう。
配列A: | 答えを考えさせ、自分なりの答えを手元で文字に起こしてから発表させる。 |
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配列B: | 周囲と自由に話し合わせ、意見を出させてから、改めて自分の考えを文字に起こさせる。 |
当初の指導案で配列Aを予定していても、生徒の手元を覗いてみて思考が膨らんでいないようなら、その段階で配列Bに切り替えられるかどうかで、授業の成否は変わります。
前述の「考えるための材料(知識や発想)の不足」 も解消できますし、「正解を探り当てなければ」という不安を、周りと相談した結果なんだから、大丈夫だろうという安心感に切り替わるかもしれません。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一