先週16日に検討・準備体制などが発表された「大学入学共通テスト(仮称)」では、英語の外部検定利用や国語と数学の記述式問題などが話題になっていますが、「第1回、第2回モニター調査実施結果の概要について」や文科省HPで公開された「高大接続改革の進捗状況について」などにも注目すべき箇所があります。
❏ 探究活動への取り組み方が合否を分けるようになる
以下は、文科省HPの「高大接続改革の進捗状況について2(平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告・案)からの抜粋です。
一般入試の課題の改善 (上記文書内44ページ目)
筆記試験に加えて、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をより積極的に評価するため、調査書や志願者本人が記載する資料等(※)の積極的な活用を促す。
としたうえで、資料等の注釈には以下の記述が見られます。
※その他、エッセイ、面接、ディベート、集団討論、プレゼンテーション、各種大会や顕彰等の記録、総合的な学習の時間などにおける生徒の探究的な学習の成果等に関する資料やその面談など。
この中で「総合的な学習の時間などにおける生徒の探究的な学習の成果等に関する資料やその面談」には特に注目が必要でしょう。
大学入学希望者の選抜にあたり、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を合否判断に用いることが求められる方向性は以前から示されていましたが、総合的な学習の時間などでの「探究的な活動」の成果が提出書類や面談を通じて問われることになります。
この方針が適用されるのは、推薦入試(⇒「学校推薦型選抜」)やAO入試(⇒「総合型選抜」)だけではありません。
一般入試(⇒「一般選抜」)で受験させる場合も、進路意識形成と結びつく形での探究的活動をしっかり組み込んだカリキュラムでないと対応できなくなる可能性があると考えておくべきだと思います。
❏ 探究型学習のプログラム整備は喫緊の課題
総合的な学習については、「高大接続改革の進捗状況について3 参考資料1」の27ページ目に、このような記述があります。
総合的な学習の時間
総合的な学習の時間の目標は各学校の学校教育目標を踏まえて設定することとするなど、目標や内容の設定についての考え方を示す。
総合的な学習の時間を通して育成する資質・能力について、探究のプロセスを通じて働く学習方法(思考スキル)に関する資質・能力を例示するなどの示し方の工夫を行う。
高等学校の総合的な学習の時間を、小・中学校の成果を踏まえつつ自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、生涯にわたって探究する能力を育むための総仕上げとして位置付ける。名称を「総合的な探究の時間」とし、主体的に探究することを支援する教材の導入も検討する。
中教審のワーキンググループが、高校の「総合的な学習の時間」の名称を「総合的な探究の時間」(あるいは「探究の時間」に変更する案をまとめた、との報道があったのは昨年6月のことです。
当オフィスのブログでも、その報道の直後に、拙稿「総合的な探究の時間」を公開しました。「探究活動の目的から考えるテーマ選び」と合わせて、お時間が許すときにご高覧いただければ光栄です。
❏ ルーブリックを用いた活動評価も必須になるか
テストで点数化できる結果学力に加え、生徒の行動/活動そのものを評価する必要が強まる点もまた、今回の改革での大きなポイントです。
推薦書の見直し (冒頭文書の49ページ目)
推薦書を求める場合、単に本人の長所だけを記載させるのでなく、入学志願者の学習や活動の成果を踏まえた「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する評価についての記載を必ず求めることとする。
さらには、50ページ目にはこんな記述も見られます。
大学入学希望理由書や学修計画書を活用する際には、各大学が、学部等の教育内容を踏まえ、大学入学希望者に対し、入学希望理由や入学後に学びたい内容・計画、大学卒業後を見据えた目標等を記載させる。
昨日の記事でも、「採点基準に照らしたメタ認知形成」が、教科学習指導の中で重要度を増すことをお伝えしましたが、推薦書の見直しによって、主体性・多様性・協働性を定量的に評価する必要が生じてきます。
推薦書のフォーマットが変わるのに加え、以下のように調査書の電子化が導入されるとなれば、新しいルールに沿った評価が求められるのはほぼ確実とみて良いのではないでしょうか。
「大学入学者選抜改革推進委託事業」において、高校段階でのeポートフォリオとインターネットによる出願システムを連動させたシステムのモデルや、主体性等を評価するためのモデルの開発等を行っており、その取組状況も踏まえながら、調査書等の電子化の在り方について検討する。
これらを併せ考えると、ルーブリックを用いた活動評価の導入は避けられそうもありません。後手を踏まず、いざ導入となってあたふたしないためにも、今のうちからできるところに手を付けておく必要がありそうです。以下の拙稿が、いくらかでもご参考になれば幸いです。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一