“その科目が得意か苦手か”――生徒自身に意識によって、負荷(課題の難易度など)に耐えられる力が異なります。得意と考える生徒は、チャレンジングな課題を与えられた方がより強固な手応えを感じ取り、苦手な生徒はちょっと難しいと感じただけでも諦めてしまうと考えれば、無理からぬことと思えます。
実際のデータを見ても、以下の通りです。
● この科目が「得意」「やや得意」と答えた生徒の評価
● この科目が「苦手」「やや苦手」と答えた生徒の評価
難易度に関する回答分布と得点化数値の関係は概ね以下の通りです。
「A難しい」「Bやや難しい」40%、「易しい」「やや易しい」20% → +1.5
「A難しい」「Bやや難しい」50%、「易しい」「やや易しい」10% → +3.0
得意と考える生徒がたくさんいるクラスで負荷を下げ過ぎてしまったり、逆に、苦手な生徒が多いのに負荷を高めて“鍛えて”しまったりしては、意図したのと逆方向に進んでしまいます。
得意/苦手の意識は、テストの点数では測れません。あくまでも生徒の側での自己認識なので、質問紙法か聞き取り調査が必要です。授業評価アンケートを行うとき、この自己認識を問う質問を入れておけば、担当クラス内での得意・苦手の分布が把握できますので、意識の分布に合わせた負荷調整を的確に行いたいものです。
とは言え、クラス内には得意な生徒もいれば、苦手な生徒もいます。クラス内の学力差はいかなる手段でも解消できないだけに、ひとつの課題で全員にぴったりという状態はなかなか作れません。
本時の授業をきちんと理解していたかを試すアウトプット場面では、授業冒頭に提示しておいた問いに答えを書かせる「言語化」が有効です。しかしながら、ある程度の長さ(字数)でしっかりと文章にまとめるのは、成績上位者にはチャレンジングでも、中下位の生徒には厳しいものがあります。
そこで、取り入れたいのは、同じ問題に対してガイドの強さを数段階で設けること。
「○○について80字で論じなさい」といった問いに対して、全くのガイドなしで生徒が自力で文章を構成するAタイプ、キーになる部分だけを文に近い形で書き上げるBタイプ、重要語句をサブノート式に埋め込むだけのCタイプを1枚のプリントに収めてしまうというものです。
ひとつの課題から複線的なハードルを作る から転載
学習を通した到達目標を複線的に設けた上で、それぞれの学力層むけの課題について、正答率・達成率を見ながら、こまめに難度調整を図るという発想が必要ではないでしょうか。
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■ 負荷の高め方 #INDEX
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一