選択した結果に向き合う

受験シーズンも後半戦。いよいよ旅立ちが近づいてきました。生徒や学生が、自ら選択した進路に新たな一歩を踏み出す季節です。
これまでの頑張りをたたえて、「おめでとう、頑張って」と温かく送り出してあげたいものですが、高校や大学の卒業生アンケートなどの結果を拝見していると、気になるデータもちらほらと…。
生徒が自分で選択した結果に向き合うことをテーマに、感じるところをまとめてみたいと思います。

2015/02/16 公開の記事をアップデートしました。

❏ 決定先進路を候補として認識したのはいつか

決定先進路が自分の中の候補リストに加わった時期、つまり志望順位に関わらずその大学や企業を現実的な選択肢として認識した時期がいつであったかによって、決定先進路への満足度に違いが見られます。
卒業前年の夏前をピークに、その時期が遅くなればなるほど、「決定した進路に満足していますか」という質問にYESと言い切れる生徒/学生が減り、「どちらかと言えば」という但し書きがついた肯定、あるいは「どちらとも言えない」を答えに選ぶ割合が増える傾向があります。
早い時期から候補に挙がっていたということは、志望順位そのものが上位であったはずなので、如上の傾向も当たり前と言えば当たり前。
自分の希望をしっかり作り、その実現に一定以上の期間にわたって努力を続けていく中で、決定先進路への帰属意識(「ここが自分の場所」という気持ち)を高めてきたものと思われます。

❏ そこにいる自分に何ができるか、もう一度考える

逆に候補リストに加える時期が遅くなったのは、別の興味を見出して舵を切り直したというケースもあるでしょうが、志望順位の上位にあった希望が実現困難な状況になっての「転進」だって少なくないはずです。
諦めたものへの憧憬が、手に入ったものの価値を低く見せてしまうことは、大人でも往々にしてあろうかと思います。
自分が選んだ進路(の候補)に向き合う期間が短く、「そこにいる自分」を気持ちの中で消化しきれていない可能性もあります。
そんな生徒には、「決定した進路の中で、自分は何ができるのか」をもう一度しっかりと考える場を作ってあげましょう。

❏ 早すぎる場合も、満足度は下がる傾向

一方、不思議なことに、早すぎる時期から志望を決めていた生徒/学生に、決定先進路への迷いが見られるケースも少なくありません。進路希望の実現にまい進してきたはずなのに、…。
自分の可能性を広く見つめ直すことなく、早々に「現実的な進路」を決め込んでしまったのかもしれません。
迷いながら自分の未来をあれこれ探す努力を重ねる友達の姿を周囲に見る中、「本当にこれで良かったのか」「もっと考えた方がよかったのでは」という思いが膨らんできたという趣旨のコメントが、アンケートの中に少なからず見つかります。
ものすごい努力を重ねて最難関を突破した生徒/学生であっても、決定先進路への不満や自分が辿ってきた進路決定までのプロセスへの後悔をアンケートに残していることがあります。
探っていない可能性を残したことに悔いを感じている様子が、理由記述から窺われます。進路が決まり、心に余裕が生まれて後ろを振り返ってみたら、めくっていないカードがたくさん残っていた、ということかもしれません。

❏ 自らの選択結果に向き合う必要

とは言え、ああすればよかった、こうすればよかったと悔いてばかりいては、これから出会う「キャリアの80%を決める偶然」を存分に楽しむことはできません。
進路先が決定したとはいえ、生涯を通して積み上げていくキャリアの中ではスタートラインに立ったかどうかの段階。今の段階で決定したものは、過去の自分が選んだものですが、これから歩く広々とした世界への入り口に過ぎません。
卒業生を送り出す“おめでとう”に添えて、「現実は、あなたが考える以上の選択肢を提供しているかもしれない」(クランボルツ)と伝えてあげてみてください。
「ぐらぐらしている生徒には、志望理由書を改めて書かせる宿題を卒業式までに提出させる」という先生もいらっしゃいました。

決定した進路の中には、たくさんの「予期しない偶然との出会い」が待っています。それを活かしきれるかどうかは、今後の自分次第。
もし、不満や後悔に気を取られている生徒が居たら、まずは、手に入れた環境で自分に何ができるかを考えさせるようにさせたいところです。

(まとめページ)

最終局面での進路指導~出願校選定から卒業まで
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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