観点毎の段階評価(S~C)を生徒自身に行わせ、記録に残させることも、積極的な学習姿勢を引き出す上で有効です。自分が頑張ってきた足跡を目にすれば、これまでの努力を投げ出すのがもったいなく感じるようになります。
❏ 評価基準は生徒自身による振り返りに利用
ノートに貼り込める小さなサイズで作成したチェックリスト用紙を予め配っておき、予習、授業、復習のサイクルが一巡した段階で、自己点検をさせて結果をノートに貼らせるようにすれば、自らの学習行動の積み上げを可視化できます。
貼り込んだものにはノート点検や机間指導で目を通します。積み上げが十分な生徒は言葉にして評価してあげましょう。“頑張っているのに認めてもらえない”というのが一番やる気を削ぐようです。
一定期間の自己評価を行わせたのち、生徒自身に集計をさせてマークシートで申告させることも検討してみてください。
大きな手間をかけずに、うまく行っているクラスがデータで特定できるので、そこでの実践を共有・継承するきっかけになります。
なお、ずっとサボってきた生徒は「今さら、真面目にやっても…」と捨て鉢な態度をとることもあります。記録は適当な周期でリセットしていくのが好適です。
❏ 評価基準のマトリクス点検へ
再び、マトリクス点検に戻りましょう。今度は模造紙ではなく、A3のコピー用紙を台紙にしてもかまいません。以下のように、少々入り組んだレイアウトが下地に必要なので、コピーしてしまうのが手っ取り早いからです。
次には、生徒の行動にブレイクダウンした標語を付箋に書き出していきます。語句ではなく、センテンスで書き出すことがポイントです。真偽(成否)判断はセンテンスでしかできません。
「○○のしかた」「○○の姿勢」「○○の理解」では、何をもってOKとするか判断がつきません。「知らない単語があったらノートに書き出している」であれば、生徒も教員も直感的に成否判断ができます。
もしかしたら、シラバスに記載されている基準があいまいであったり、記載そのものがなかったりで、容易に書き出せないかもしれません。
その際は、思い切って「はじめから作る」というスタンスに切り替えてしまうことをお奨めします。普段の授業を振り返りつつ、生徒に期待している行動を一つひとつ言葉にしていきましょう。
❏ 着眼点の広がりを楽しみましょう
ワークショップに参加している先生方が、それぞれ付箋に書き出すことが想定外に多岐におよび、収集がつかないほど拡散することも十分に想定されます。
議論がまとまらないことにうんざりするのではなく、様々な考え方に触れて、発想を押し広げるチャンスと捉えていただくのが好適ではないでしょうか。
その場では発想を十分に膨らませておくことでOKとし、結論(=共有された方針や評価基準表の原案完成)は、次の機会に持ち越す課題にするので良いと思います。
❏ 評価基準においても、段階性と整合性がキーワード
前述の予・復習方法の指示と同様に、評価基準も段階を追ってより高いものを求めるようにするのが当然です。
また、ある時期のS基準を、次の段階でのA基準にするのを基本線にしてしまえば、書き出しのペースも上がります。
繰り返しになりますが、横方向での段階性・連続性のほか、縦方向(たとえば英語表現Ⅱとコミュニケーション英語Ⅱ)の整合性も大切です。
双方にきちんと共通したものがあり、且つそれぞれの科目特性や学習目標の棲み分けにふさわしい基準が設けられているか、確かめながら作業を進めましょう。
その9に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一