学習の手引きやシラバス、あるいはオリエンテーションで配布する資料には、評価方法や評価基準が明示されているはず。まったく言及されていないようなら、加筆が必要です。特にシラバスに評価に関する記載がないと、シラバスたる要件を満たしていないことになってしまいます。
❏ 評価基準も、学習の成果を踏まて段階的に引き上げる
どのように評価されるかを十分に理解すれば、生徒はそれに応じた行動をとるようになります。
中には「定期考査の素点、課題の提出、授業態度などから総合的に評価する」という書き方も少なからず見られますが、これでは「言われた通りにする」という以上の意識に生徒は至れないのではないでしょうか。
評価基準は学習者と指導者との間に交わされる約束事です。授業はカードを伏せたまま駆け引きを行うゲームではありません。きちんと情報をオープンにして、相互理解の上で進めていくべきです。
評価に際し、観点ごとに「S:期待を超える」「A:期待通り」「B:期待に近い」「C:期待から遠い」という段階的な基準を設ける取り組み(=ルーブリック評価の導入)が校種を問わずに始まっています。
予習復習への取り組み、授業への積極参加などにおいても、生徒自身が自己評価できる仕組み、ひいては教員の側で生徒一人ひとりの行動を客観的に評価でできる仕組みを作っていくことが必要です。
評価と目標は一体です。「A:期待通り」の記載は、そのまま生徒に示す目標となります。その目標との距離の遠近の度合いが、「B:期待に近い」「C:期待から遠い」という評価に反映されるとお考え下さい。
❏ 生徒に求めるタスクも徐々に高度化
ある学年の英語の予習で、「本文を書き写す」「新出単語の意味を調べる」「本文訳を行う」という3つのタスクを課しているとしましょう。
本文を手で書き写すことは、英文を見て実際に手を動かして書く中に対象の観察という意味がありますが、コピーを貼るのは英語を全く見ないでもできるため、時間短縮という効率化以上の意味はありません。
手書きで写したら「A」、時間がないときはコピーで済ましてもかまわないが「B」、というように評価を分けます。
何もやってこなかければ当然「C」です。本文を写すときに動詞は○、接続詞や関係詞は□で囲むなどの工夫があれば「S」を与えることになります。
未習語・不明語の扱いも同じです。辞書指導が不十分な段階では、品詞を特定して文脈にふさわしい訳語を拾うことは難しく、とりあえず書き出しただけでも「B」でしょうか。
概ね正しい訳語が選べていたら「A」とし、本文中と同じ用法の例文を探して書き出してくるようなら「S」を与えます。
学習が進み、品詞のマークアップを必須のタスクに指定する状態に移行したら、新たな基準を与えて要求水準を引きあげます。
たとえば、初見言語材料以外の部分が正しくマークアップできていれば「A」でしょうか。一応やったが間違いが多ければ「B」、新しい文法事項を含む部分も解説などを参照しながら自力で適切にマークアップできたら「S」が相当かと思います。
繰り返しになりますが、与えたハードルを生徒が越えてきた段階でもう一段高いものを求めることが、伸びこぼさせずに可能性を引き出していくための要件です。
その8に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一