マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その1)

シラバスや学習の手引き、あるいは勉強合宿でのガイダンスプリントなど、「学習法」や「到達目標」といった「学習活動において生徒に求めるもの」を書面化したものは数多く見つかります。
授業態度や提出物、小テストなど、シラバスの「評価基準」に言及されているものも、直接的・間接的に、生徒に求める行動を表現しているものの一部です。

❏ シラバス、進路講演、定期考査、・・・

授業中に予習・復習の進め方を説明するのも、進路講演会などで時間の使い方を示すのも、学習「活動において生徒に求めるもの」を伝える機会のひとつです。
書面化されていない場合も含めば、こうしたメッセージを生徒が受け取る場面は、ほぼすべての行動領域をカバーしつつ、入学から卒業まで、絶え間なく用意されていることになります。
また、生徒は考査問題に合せて勉強することを考えると、テスト問題そのものが「学習活動において生徒に求めるもの」を伝える上で大きな位置を占めていることも自明です。
どんな問題を出すかによって、生徒の学習のあり方に方向付けがなされます。授業中に与えられた知識や正解を記憶して答案上に再現すれば点数が取れるような出題に傾けば、生徒の学習もそうしたものに偏っていきます。
こうしたメッセージは、通常、それぞれの教科・科目、もっと言えば、学年教科担当の先生方の判断に基づいて機会あるごとに発信されていますから、生徒が接する機会がどれほどあるかは正確に数え上げることすら難しそうです。
学年や教科を跨ぎ、学校としての方向性や段階性が整ったメッセージが発信されているのかどうか、どこかのタイミングで全体を見渡して確かめてみる必要があるのではないでしょうか。

❏ マトリクス点検とは

マトリクス点検とは、「生徒に求めている学習方法」「評価基準」「テスト問題を通して試そうとしている学力」などを、教科・科目を縦軸、学年・学期を横軸に並べてみて比較点検しようという試みを指します。
概念は、名称を与えられて初めて共有されます。本稿でお伝えしたい考え方にも何らかの名前を付ける必要から作り出した「造語」です。今のところググってみても検索結果は表示されないはずです。
イメージとしては、下図の通りです。入学から卒業までを左から右に、教科・科目を上下方向に、それぞれの時期×科目で「学習活動において生徒に求めるもの」をタイル状に展開したものをお考えください。

画像


求めるものは、それが一定割合で満たされるようになるたび、少しずつ高められたり、表現を変えたりするため、重なり部分があるのが当然ですが、表現を簡素にするため「のりしろ」のない形で描いてみました。
その2に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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