どこまで伸びるか見立てる(進路希望の維持:続編)

前稿「模試受験後の指導~進路希望を維持させる~」の続編です。模試などの結果を踏まえて、生徒は最終的な出願先を選び出していきます。
最終的に出願する大学・学部が、生徒が入学してきたときや進路を考え始めたときに思い描いていたものと違っても、高校生活を送る中で「学びたいこと、学んだことを活かしてやってみたいこと」を見つけて、積極的に選び出した進路であれば何ら問題はありません。
むしろ、生徒が努力を重ねて進路選択のプロセスをきちんと踏めたということでしょうし、目標を持った状態で巣立たせることができたことを進路指導/教育活動の成果と考えても良いのではないでしょうか。
しかしながら、どこかの局面で「やっぱり自分には無理そうだ」と決め込んでしまい、頑張り続ければ手が届いたかもしれない目標を諦めた結果の「消去法的選択」だとしたら、生徒を送り出す思いは複雑です。
進路選択の過程において生徒に「自分の伸びしろ」を過少に見積もらせないようにするには、先ずは指導に当たる先生方が、生徒一人ひとりについて成績伸長の見立てを正しく持つことが大切ではないでしょうか。

2017/01/30 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 可能性を小さく見積もらせない/見積もらない

残りの期間が3年だろうと1年だろうと、3か月あるいは3週間だろうと、成績や学力がどこまで伸びるか正確な予測はできません。
でも、展望をもって頑張るからこそ伸びるのであり、そこにある可能性に気づかず、頑張りをやめてしまえばそれ以上の伸びはありません。
冷静に且つポジティブに伸びしろを見立てることが大切だと思います。
もちろん、どうやっても可能性が見いだせないのにしがみついては、他の可能性に目がいかず、チャンスを失うこともありますから、「あきらめないこと」が「常に最善」とは限りませんが…。

❏ 成績推移だけでは伸びしろの見立てはつかない

成績の伸びしろは、模擬試験の成績変化だけをたよりに判断していては見立てを誤るリスクを抱えます。
個々の設問に正解するには、様々な知識、理解、考え方など設問の要求をすべて満たさなければならず、残り一つのパーツが欠けただけでも、まったく要求を満たせていない状態でも不正解という結果は同じです。
パーツの一つが欠けているだけなのに、結果の点数だけ見て「まったく伸びていない」と判断するのは合理的とは言えないのは明らかです。
必要なパーツが揃っていく途中では、努力の成果(学力要素の獲得)は点数の変化には現れず、一見すると「伸びが停滞」しているように見えますが、パーツが揃ってくると点数は急に伸び始めたりします。
見かけ上の「停滞」に、生徒本人も指導に当たる先生方も「やっぱりだめなのかな」と判断するのは拙速に過ぎるかもしれません。
逆に、一定の成績を取れていても学び方が間違っていれば、その先の伸びは期待できず、「貯金」を失う中で、成績が低下に転じることもあります。日々の学びへの取り組み方と成果もきちんと観察しましょう。

❏ 正解できなかった理由とその解消を図る様子を観察する

より正確な見立てを立てるためには、模擬試験や過去問演習の振り返りで、「正解を導けなかった理由」を明らかにして、それらを一つひとつ解消するために正しい行動を取れているかをみたいもの。
単に知識が足りずに点数を落としているだけなら、きちんと学習時間をかけて覚える努力を継続していることが「伸びる可能性」と考えることができます。
現時点での知識の不足量と、一定期間あたりにどのくらいの知識拡充が図れているかを見比べることで、ある程度の見立てができるはずです。
解き方を知っている問題はかっちり点数を取るのに、それ以外の問題はからっきしという生徒は、題意を読み取り、手持ちの知識を組み合わせながら解き方を考える姿勢と方法を学んでいないということです。
それまでの学び方の限界に気づいて、解法パターンを覚えるだけの学習から離脱を図り、少しずつでもできることが増えてきているようなら、今後の伸びを期待していいのではないでしょうか。

❏ 生徒の思考を覗き込むための「適切な問い」

この観点での見立てには、提出された課題や答案だけを見ていても、ましてや模試の点数だけを見ても不十分です。
普段の授業の中で、「解き方を考えだす必要のある問題」を与え、思考の過程、答えを導きだしていく様子を観察する必要があります。
指名して発言させたときも、「どうして、そう判断したのか」「なぜ、そのアプローチを選択したのか」という問いを重ねてみれば、頭の中で起きていることを推定することもできるはずです。
大前提となるのは、生徒が志望する大学群が求める学力要素をきちんと含む問題を、授業内外の課題として与えることです。(模試問題だって生徒の目標校の出題と趣旨が異なっている場合があります。)
そうした課題を解けたり、仮に解けなかったとしても「こうやればいいのか」と気づければ、「何とかなりそうだ」との展望のもと、生徒は頑張りを継続できるのではないでしょうか。

❏ 模擬試験のやり直しを通じた振り返りと課題形成

模試や過去問演習をさせながら、現段階での「解けない理由」を特定し、その解消に向かっているかどうかを観察を通じて判定することが、個々の生徒の伸びしろを正しく見立てる上で欠かせません。
生徒に模擬試験のやり直しをさせるとき、間違い直しを徹底させるだけでは足りないものがあるのは、以下の拙稿で既に申し上げた通りです。

答案を鏡に、自分の学びを客観的に捉えさせることに注力することが、自分の可能性を小さく見積もって消極的な選択に向かうのを押しとどめるのに必要なこととお考え下さい。
振り返りを通じて、「より良い自分になる/成績をもっと伸ばす」ために何をすれば良いか、どう学んでいけば良いかを見出した生徒は、そう簡単には「あきらめる」という最後のカードを切らないはずです。

❏ 伸びた生徒と伸びなかった生徒の行動特性にも照らして

学校には過年度に在籍した生徒のデータが残っているはずです。これを利用して、「終盤に大きく伸びた生徒」「先行逃げ切りを成功させた生徒」などを抽出、類型化して、それぞれの生徒の学習行動の特徴をとらえ直してみる中にも、今後の指導に役立てられる知見が得られます。

 

データで抽出した生徒について、実際に指導に当たられた先生方の記憶を持ち寄ったり、ポートフォリオへの記載を読み直してみたりすることで、進路希望の実現に好適な行動が見えてくると思います。
伸びた生徒に特長的な行動、伸びなかった生徒にみられた行動パターンなどを知っておけば、目の前にいる生徒の取り組み方を評価し、見立てにつなげるときの拠り所にもなるはずです。
受験生を送り出すのが初めてという先生や、いわゆる「進学校」での指導経験が浅い先生に「経験則での観察」を求めても酷というものです。
ベテランの先生方の経験(観察の記憶と記録)と校内に蓄積されたデータを照らした考察の結果は、経験が浅い先生方のみならず、学校全体での指導知見になります。
そうした指導知見はきちんと継承するとともに、模試分析会や進路検討会などを通して、継続的にブラッシュアップを図るべきだと思います。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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