学校ホームページでの情報発信(その3)

#03 伝えたいことにフォーカスする重みづけと導線作り

学校ホームページを通じて何をどう伝えるかを考えるとき、常に意識すべきは「この情報は誰に伝えたいのか」です。校内外の様々なステークホルダーを思い浮かべ、それぞれのニーズに応えていきましょう。
広報活動が目指すのは、学校の教育活動への認知・理解・共感を高め、肯定的な認識を得ること。最終的にはそれが協働、あるいは選択という相手側の行動に結びつくことです。
何のための広報活動/ホームページなのか、誰に何を伝えたいのか目的をはっきりさせておかないと、掲載項目の取捨選択や導線の作り方を誤り、その効果が大きく損なわれてしまいます。

2015/03/11 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 重点的な教育活動には特設セクションを設ける

特に力を入れている「特色ある教育活動」は、他の情報から切り離し、学校ホームページ内に特設セクションを設けるのも好適です。
長期間にわたって活動が積み上げられていく「探究活動」などは、取り組みそのものが多岐にわたり、ボリュームのある情報になりがちです。指導の経過とともに局面もどんどん変わっていきます。
こうした、長期間にわたるダイナミズムを持つ(動性の高い)教育活動に関する情報は、独立したセクションでの発信によくマッチします。
他の項目と一緒にして通常のサイト構造に組み込んでしまうと、新着情報などに情報を置いてリンクを張っても、途中に別のことが挟まり、連続した動き/流れが見えにくくなります。
近くに迫る行事などの予告から始まって、当日の様子を伝える速報、リフレクション・ログの抜粋などを使ってその後に見られた生徒の変化を伝える「成果検証」まで、時系列に沿った流れの中で紹介していくことで、指導を通じた生徒の成長を伝えられます。

❏ 成果を客観的にかつ説得力を持って伝える

特色ある教育活動の様子や成果を伝えようとするときに、「こんな教育活動を行っています/こんな体験をしました」とアピールに終始するのと、「行事を経て生徒の考えや行動にはこんな変化が生じました/こういう効果が確認されました」という成果に関する具体的な記述を伴う場合とでは、読み手の受け止め方は全く違います。
指導機会ごとにきちんと指導方法の効果測定 を行い、その結果をもって取り組みの好適性や意味合いを伝えていくことが大切です。
校外に対する発信のみならず、校内向けにも、取り組みの成果をきちんと検証し、その結果を伝えることは重要です。
行事や活動の実施には、先生と生徒の双方に時間と手間というコストを強います。それに見合うだけの成果がはっきりしないことには、その教育活動への理解や共感は得られず、下手をすれば「無駄なことに巻き込みやがって」という、負の感情さえ生じているかもしれません。
行事が終わった直後の感想だけでなく、卒業してからその行事がどんな意味があったのか振り返ってもらったコメントなども用いて、しっかり効果を伝えられるコンテンツを作りましょう。

❏ サイト構造の再確認と導線チェックを定期的に

優れた取り組み、成果の上がったものほどしっかりした計画に基づき情報発信を進めるべきであるのは当然です。そうした戦略を考える上で、予めきちっと設計しておくべきものが「サイトの構造」です。
更新と追記を重ねて情報が膨らむうちに、サイトの構造が複雑になり、導線が途切れたり入り組んだりしているのは割とよく見かけます。こうしたサイトでは、リンク切れもかなりの割合で見つかります。
探したい情報を求めてせっかく来訪して下さった方が、見つからずに諦めてサイトから離れてしまったら…、残念なことこの上もありません。
内外に伝えたいと思う情報に、トップページからどれだけスムーズにたどり着けるか、定期的に巡回して点検するようにしましょう。
ホームページのリニューアルから何年も経過している場合は特に注意が必要です。情報の追加や削除で構造がおかしくなっているものだという前提でチェックに臨みましょう。

❏ 手直しで済まないときは最初から再設計

少々の手当で修正がきけば良いのですが、「重症」が疑われるときは思い切って作り直してしまった方が、その後のメンテナンスを含めてトータルの作業は小さく抑えられます。
トップページにアクセスしてくれた来訪者を、伝えたい情報のある箇所に正しく効率的に導くのに、もはやリンクの設定し直しくらいではどうしようもなくなっていないでしょうか。
サイト内に境界が不明瞭な複数のカテゴリーが混在していて、どこを探せば良いか見当もつかなくなっていたり、サイト内のナビゲーションもろくに機能しなくなっていたりするケースもあります。
いずれかに該当するなら、対症療法よりも最初から作り直した方が早いかもしれません。
作り直し(サイト構造の再設計)に向けた作業手順はこんな感じです。

  1. サイト内にあるコンテンツを付箋に書き出す
  2. ホワイトボード上に貼って分類[KJ法](グルーピング)
  3. グループごとに名前を付ける(ラベリング)
  4. サイト構造に書き出す
  5. サブの導線(ページ間リンク)を書き込む

こうして整理・構造化した情報のひとつひとつについて、今度は価値を判断します。とりあえずはあまり複雑にせず単純に、「そのまま残す」(A)、「削除する」(B)、「アーカイブに移す」(C)の三段階くらいに分けてみてはいかがでしょうか。
広報は未来を向いた活動ですから、これから先に理解者を増やしていかなければならないものを中心に残していくようにしましょう。過去の記録はアーカイブに移すことでスッキリします。
当然ながら加えるべきもの(これまで漏れていたもの)も出てくるはずです。付箋を追加して構造を整えて行きましょう。付箋の色を変えておくと、あとで「追加作成」だけを抽出するのに便利です。

❏ 学校の教育目的を軸に行う情報の取捨選択

如上の作業は、いかにも面倒に見えますし、校内で貴重な人手と時間を割くより最初からプロに頼んだ方が良いと考える向きもありますが、経験上、丸投げではうまくいくとは思えません。
外の力を借りるにしても、少なくとも作業工程のうち最初の2つは校内でイニシアティブを取って進めるべきです。ホームページに掲載することがらの意味合いや大切さは、中で関わる人にしか判断がつきません。
学校の意図をぼやけさせてしまったり、ときには曲解させてしまったりするようなメッセージが紛れ込んでいることがときとしてありますが、それらを切り出す判断ができるのは、学校を運営する先生方だけです。
こうした不要とまでは言わないまでも、伝える必要性が相対的に低い情報は、「ノイズ」としてメッセージを歪めかねません。
学校の教育目的や伝えたい価値と関連の低いものは軽く触れるだけにしたり、資料編などにまとめて括りだしたりする戦略的判断が必要です。
ホームページの再設計に向けた如上の作業を通して、学校が伝えたいことは何か、本当に注力しなければならないのは何かといった気づきを得ることも、思いのほか少なくないようです。



日々のホームページ更新にあたり、ときに無差別に情報を加えてしまいますし、見落としていたものにはいつまでたっても気づかないことも多いはず。コンテンツのたな卸しは定期的に行うべきです。
ご多用の中、なかなか手がつけられない部分かと思いますが、放置していたら、教育活動の充実に投じてきた多大なエネルギーも、広報の不備により、その成果を伝えきれず正当な評価を得られません。
期待を持ってもらい、進み具合を伝え、効果を示すことで、できるだけ多くのステークホルダーから理解と共感を得られるようにしましょう。

このシリーズのインデックスに戻る
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック

学校評価、学校広報Excerpt: 1 学校評価アンケートをどう活用するか1.0 学校評価アンケートをどう活用するか(序) 1.1 学校評価アンケートをどう活用するか(その1) 1.2 学校評価アンケートをどう活用するか(その2) 1.3 学校評価アンケートをどう活用するか(その3) 1.4 学校評価アンケートをどう活用するか(その4) 2 学校評価アンケートの質問設計で注意すべきこと2.1 学校評価アンケートの質問設計 2.2 同じことを尋ねたつもりでも…(学校評価アンケート) 2.3 相手に合わせて質問もア...
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2017-01-18 08:30:42