学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"

生徒は各教科を学ぶ中で、教科固有の知識や理解を蓄えているだけではありません。学びへの姿勢や物事の学び方、課題を解決するための思考手順、協働場面でのふるまい方など、様々なものを身につけています。
どんな能力や資質、姿勢を獲得させたいのか(ゴール)を明確にし、生徒一人ひとりが今、成長過程のどこにいるのか(現在位置)を掴まないことには、両者を結ぶプロセスである「指導」も計画できません。
生徒自身もまた、段階的に設定された「目指すべき到達状態」に照らして、「自分がどこまでできるようになったか」を知り、「次に何をすべきか」「もう一歩の進歩のために何が必要か」を考えることで、学びへの自己効力感を高め、主体的に学びに取り組むことができるはずです。
きちんと設定された目標と評価規準に照らした「適切な振り返り」は、メタ認知、適応的学習力の向上には不可欠。きちんと行わせることは、データが示した「勉強を好きにさせる学ばせ方」にも通じます。

2018-07-23 公開のまとめ記事を再アップデートしました。

生徒は「振り返り」を効果的に行えているか

振り返りの結果、学習方策は高まっているか
・考え出した「仮説」は実際に試して「検証」させる
・先回りして教えず、生徒が自ら考え出すのを待つ
目的意識(自分の課題を持った取り組み)は高まったか
発表の場は相対化スキルの獲得に寄与しているか
ログを参考に生徒理解を深めているか
振り返りシートの記入欄を整え直してみるところから

体験のたびに感じたことをしっかり考え、言語化&記録

せっかくの気づきは、揮発させずに深めさせる
自分が書いたものとの対話で新たな気づき
進路選択に向かう体験と内省の記録
体験と気づきを串刺しにしてみて得られるもの
■関連記事:
探究活動と進路指導でポートフォリオに残すログ
言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」

副作用を抑え、効能を最大化するルーブリック評価の運用

A評価を超えたプラスα 要素を言語化&シェア
観点も追加・整理しながら、より合理的なものに
生徒にも評価者スキルを獲得させる
個別場面でのルーブリック評価→観点別学習状況→評定

評価規準は使いながらブラッシュアップ

目標の共有、課題形成、メタ認知
あくまでも使いながらのブラッシュアップ
行動評価を実際に行うときの七か条

チェックリストを用いた目標提示と達成検証

場面ごとの目指すべきものを生徒は意識できているか
ポイントを意識した練習が進歩を大きくする
小さな達成を認識することが積極性に転じる
チェックリストを作らせながら、授業を進める
最初のうちは、先生が用意し、徐々に生徒に任せる

リフレクションシートの記載を参考に観察精度を高める

40人を同時に観察するのはきわめて困難
生徒は、自分の状況をよく理解してほしい
生徒自身が書いたものを手掛かりに理解を深める
一人ひとりの進歩に応じた課題と助言
リフレクションシートへの記入を自己目的化しない
振り返りをきちんと行うことで得られる効果

自己評価、相互評価を行わせるときの工夫

評価をさせることはメタ認知を高めさせること
評価機会を重ねて観点や評価規準を理解させる
目指すべき到達状態をセンテンスの形で明示
規準を満したA評価をベースに評価段階を設ける
その評価を選んだ理由を言葉にさせる
「十分」と「普通」の違い~点数方式の落とし穴
■関連記事:
進歩を止めさせない自己評価の在り方
頑張りをきちんと評価する~学びの意欲向上のために
評価スキルの獲得とメタ認知の向上~思考・表現力を養う

探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るか

探究方策の獲得に焦点を当てた評価を
教える側で評価観点と評価基準を共有しておく
生徒自身にもあらかじめ評価方法を知らしめる
最終結果ではなく中途段階で各フェイズの評価を
仕上がったレポートやプレゼンでの評価だけでは…
探究活動が、自分の将来と向き合うことに繋がったか
課題研究に取り組む前と仕上げが後での変化にも着目

振り返りと行動変容(まとめページ)

領域①:生活(ホームルームでの指導など)
領域②:学習(各教科の学習指導など)
領域③:進路+探究(進路選択までの指導)



新課程への移行後、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図るべく、指導法の研究は盛んですが、目標を検証可能な形で書き出し、それに照らした評価を的確に行わなければ、いつまでも試行錯誤でしょう。
新しい学力観に基づく評価方法の確立は、指導の継続的な改善のための土台作りです。また、評価の結果をどのように生徒自身の「振り返り/次に向けた課題形成」に利用させるかは指導設計の肝だと思います。
指導に当たられる先生方のお一人お一人が、協働場面における個々の生徒の評価をどう行うか多様性をどう評価するのかといった問いに、自分なりの答えをきちんと持つことが求められているのだと思います。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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