教材や課題の難易度をどのように設定するかは、生徒の学力分布だけを見て決めるものではありません。同じ負荷をかけていても、生徒が感じている得意/苦手の意識や、授業を通じた学力伸長の手応えを把握しながら調整を行う必要があります。
得意/苦手という意識においても、授業内での学習者活動や、それまでの指導で形成してきたレディネスによって生徒の感じ方が変わります。
模擬試験の成績や進路希望の分布だけを見て、そのクラスにとっての最適な難易度設定を見つけることはできないということですね。
どうやったところでクラス内の学力差は解消しませんし、むしろ適正なばらつきがあった方が、学習成果の総量は大きくなります。このあたりについては、「クラス内で生じた学力・学欲差への対処法」をお読みいただければ幸いです。
また、「負荷の高め方」でご提案させていただいた通り、次の学期・単元に進むときに必要なレディネスを整えることに、当期の学習目標の達成と同じくらいの重みを置いて授業を作っていく必要もあります。
現在教えている単元の内容を理解させることに意識のすべてを取られ、「取り敢えず全部教え切って」というスタンスでは、学びが進んだ時に生徒が自分の足で歩いていく力と技術を身につけるには不十分かもしれません。
先を見越し、今のうちに何をしておかなければならないのかは、3年/6年間の指導計画を考えるときに抑えておきたいこと。生徒に対しても一歩先の学びをイメージさせる機会を持ちたいものですが、まずは教える側が日々の授業の中で「次は何が必要になるか」を考え続けることが大切ではないでしょうか。
難易度についての質問&選択肢と数値化の方法
難易度の適正値はひとつに定まらない
得意寄りの意識を持つ生徒が多いクラスでは高めがベスト
前学期までに積み上げた自己効力感にも影響を受ける
教材を変更する前に打てる手/打つべき手がある
苦手意識を抑制する2つのプローチ
使い込んだ参照型教材も、頼りになる救援者
本シリーズ中でのご参考記事:
- 小テストの余白をアンケート/リフレクションシートに
- 負荷調整は、得意/苦手の分布を見極めて
- アンケートで探る“学ぶ側の認識”
- ひとつの課題から複線的なハードルを作る
- 目標提示が苦手意識を抑制
- 活動性を高めて苦手意識を抑える
- 参照型教材を徹底して使い倒す
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一