学校評価アンケートをどう活用するか(その2)

【より良く知ってもらい、理解と共感を得るために】

学校評価に限りませんが、アンケートには、質問に答えてもらうことで回答者の認識を刺激し、深く考えてもらうという機能があります。
これを利用して「学校の取り組みに対するステークホルダーの認知と理解を高める」のも学校評価アンケートの重要な目的の一つです。
多大なエネルギーと、時に多額の予算を投じた取り組み/教育活動であっても、知ってほしい相手にきちんと伝わっていないのでは、理解者や協力者、支持者を増やすことはできません。

2014/07/14 公開の記事を再アップデートしました。

❏ “尋ねることで認識してもらう”という戦略

学校の取り組みへの理解と関心を深めてもらうために、それまで保護者向けに発行していた学校通信をリニューアルしたとしましょう。
これだけで所期の目的が達せられたら苦労はしません。生徒のカバンにしまわれたまま、保護者の目に触れないことだってよくある話です。
学校評価アンケートを実施するときに、「学校通信をリニューアルしました。十分に学校の様子を伝えているでしょうか」という質問を加えたら、だいぶ違った反応が期待できるのではないでしょうか。
一度も読んだことがなかった保護者も「あれっ?」と思い、「学校通信ってもらった?」と子どもに尋ねてみるはず。生徒のカバンの中や机の引き出しに埋もれていた書面もようやく日の目をみます。

❏ 発信したメッセージに到達してもらう工夫

改めて学校通信を読んでみた保護者は、「あ、学校もずいぶん頑張っているのね」と再評価してくれるかもしれません。
ある学校では、保護者にあてた学校評価アンケートへの協力を依頼する文書に、学校ホームページに掲載した学校通信にリンクするQRコードを印刷して、スマホで読んでもらうようにしたそうです。
学校の教育活動に限りませんが、理解者と協力者を増やすには、先ずはやっていることを知ってもらうところがスタートです。
そのきっかけとして利用できるツールの一つが、配るだけの学校通信とは異なり提出を求めることができる学校評価アンケートです。

❏ 定点観測に終始せずに、理解を得るための質問設計を

学校評価アンケートを長年に亘って実施してきた学校では、定点観測を優先して、質問の変更をためらうケースが少なくありません。
しかしながら、「知ってもらう機会としてのアンケート」という如上の機能を生かすには、学校改革や教育改善を図るたびに、質問設計の見直しを図っていくことが大切です。
教育改善、学校改革に向けて重点的に取り組んでいること、学校が自らの強みと考えていることなどは質問項目に組み入れていきましょう。
学校経営上の重点目標が、学校評価アンケートでまったく触れられていないようなら、質問設計を見直してみた方が良さそうです。

❏ 地域社会との “斜めの関係”を作るきっかけにも

尋ねることで認識してもらうという機能は、卒業生や地域の方々などに対しても有効です。
過年度の卒業生や周辺地域の方に、現在の学校の様子や取り組みを評価してもらうことで、学校をより良く知ってもらいましょう。
質問に答えてもらうことをきっかけに、学校のホームページを見に来てくれるようになったり、進路イベントでの講師をお引き受けくださったり、様々な形での関係作りが進んだとのお話も少なくありません。
一度お願いを聞き入れて下さった方は、その後も継続して学校からの呼びかけに応えてくれることが多く、学校での教育を「斜め」から支えてくれる応援団づくりにもつながるはずです。
ある学校では、周年記念行事を行うにあたって、卒業生や地域の方々にアンケートへの協力を呼びかけたそうです。依頼の文書にQRコードを印刷しておき、携帯やスマホで回答してもらったとのことでした。

❏ アンケートの回答率自体も、点検すべき重要な指標

尋ねることでより良く知ってもらうためには、何はさておき回答してもらわないことには始まりません。
生徒や教職員のアンケートでは回答を集めるのに苦労は少ないと思いますが、保護者や近隣の塾や小中学校を含む地域となると、回答率を高くしていくのは容易ではありません。
高い回答率は学校のメッセージを広く到達させたことを意味します。それ自体が「学校の広報活動」という観点での評価の一つになり得ます。
回答率を高めるカギは、より良い学校になって欲しいという期待を回答者に持ってもらうことであり、そのためには、地域からの期待や時代の要請にきちんと向き合う姿勢を学校が示すことが重要です。
日頃からしっかりメッセージを伝え、寄せられた意見や要望を、実際の教育活動に反映させる(きちんと応えて見せる)ことで、「アンケートに答える動機や意義」を持ってもらえる学校を目指しましょう。

❏ 学校の取り組みをきちんと説明してから回答を依頼

何の意図も伝えず、熱を込めることもなく、機械的に「アンケートにご協力ください」と頼むだけでは、「はい、了解です」とはなりません。
アンケートの結果をどのように利用するつもりか、尋ねる側の意思をきちんと伝えるとともに、学校が目指していること、そのための取り組みなどをきちんと説明した上で、アンケートの回答をお願いしましょう。
意図するところを回答者に共有してもらうところが、建設的な意見や評価を得るための起点です。
学校の教育活動に関心を持ってもらえなければ、おざなりな答えしか返ってこないでしょうし、目的や意図を誤解されていたら、応えるすべもない「あらぬ意見」が多く寄せられ、収拾がつかなくなります。
主旨や意図は、簡潔に伝えてこそ正しい理解が得られます。長々と書き連ねて、読み手の忍耐を超えてしまえば、読んでもらえません。
その3に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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