新しい学力観にそった授業と家庭学習の再設計

新課程への移行で学力観が新しいものに更新されていく中、家庭学習にも「学ばせ方の変化」に応じた新しい形が求められるようになるのは、既に以下の拙稿などでもお伝えしてきた通りです。 単純に授業外学習時間の延伸を図れば良いということではありません。宿題・課題の増量といった昔からの対策には、自ずと限界があると思われます。荷物を増やしても学びが膨らむとは限らないことを念頭に、「その宿題、本当に必要ですか?」 …

ノートにメモを取らせる指導(記事まとめ)

授業中にメモを取る力は、深く確かな学びに欠かせないものであり、学びに関わる姿勢と方策の表れでもあります。他者の話を聴きながら(あるいは文章を読みながら)、自らしっかり考え、その痕跡を文字に残していくというのが学びの場におけるメモのあり方ではないでしょうか。ある実験では、同じ講義を聞かせた場合に生徒がノートに残した文字数とそれぞれの生徒の学習効果との間には、統計的に有意な相関が見られました。板書を写…

ノートを取らせて学習スキルを確かめる

教室を覗いてみると、同じ授業なのに生徒のノートの取り方は実に様々です。おざなりなノートの取り方に「あとで復習するときにわかるのかな?」と心配になることもあれば、先生の板書は綺麗に写し取っていても、それ以外まったく書き込まれていない(=本人の思考の痕跡が見て取れない)ノートも少なからず見かけます。その一方、同じ教室にはしっかりと整理されたノートに、散在していた情報をきちんと集め、構造化している生徒も…

ノートにメモを取らせる指導(その2)

メモに起こす内容には、2つの種類があります。ひとつは、相手の発言などを記録するもの。講義を聞きながら大事だと思ったところをノートやレジュメの余白に書き込むのはどなたも行っていると思います。もう一つは、相手の発言に触発されて、自分が感じたこと/考えたこと/思いついたことなどを文字に起こしたもの。こちらは、メモに残しておかない限り、後で思い出せなくなったら復元のすべがありません。その場で得たせっかくの…

ノートにメモを取らせる指導(その1)

ノートの取り方は、生徒が身につけるべき様々な学習方策の中でもかなり重要度の高いものだと思います。先生が板書したものを整然とノートに写し取っているだけで「よし」としてはいけません。自分で工夫してノートを取れるようになるというのは、生徒の内に「考えながら、人(=先生や周囲の生徒)の話を聞く力」「気づきを言語化できる力」「情報を自力で構造化できる力」が養われてきたことを意味しますので、学習者としての自立…

大きな分岐を前に整えるべき指導機会

進路を決定するまでのプロセスの中、生徒は大小様々な選択を経て自分の未来を拓いていきますが、ある場面で行った選択は、その後の選択肢の構成を変えてしまいます。選択を間違えたとしても、後戻り/迂回して正しいルートに戻れますがそこには多大なエネルギーを費やすことになります。時間も巻き戻しはできませんので、進路決定までのタイムリミットを超えるリスクのある歩み直しや迂回は、できることなら避けたいのが正直なとこ…

2学期の指導をより実り多きものにするために

秋は「実りの季節」ですが、9月に始まる学校の2学期もまた、生徒が様々なことにチャレンジする中でこれまでに重ねてきたことを「結実」させる大切な局面であるのは言うまでもありません。3年生は進路希望の実現に挑み、2年生は進路選択という大きな分岐に臨みます。1年生も4月の入学から高校生として積み重ねてきたものを振り返り、これからの自分の行動にしっかり方向を持てるかどうかで、残り2年半の実りが大きく変わって…

学びを軸にICT活用を考える#INDEX

ICTの導入が進む中、利用法にも各地で様々な工夫が重ねられ、新しい学ばせ方の可能性が次々と拓かれています。コロナ禍でのオンライン授業を機に、教室での対面授業でのICTの活用に大きく弾みがついたとのお話は方々でお聞きします。ICTに限ったことではありませんが、すべての教具は「学習活動を膨らませる/充実させるため」に用いるもの。ICTの導入は、これまで余計なところに使っていたエネルギーを節約する「効率…

学びを軸にICT活用を考える#3 「対話」の場面

ICTを活用すべきシーンには、前々稿の「伝達」、前稿の「調査」に加えて「対話の場面」があります。「対話的な学び」に期待されるところの大きさは、ここで改めて申し上げるまでもありませんが、生徒が互いに顔を突き合わせて行うものだけが対話ではありません。対面以外の環境で実現する対話的な学びだってあり得ます。他の生徒が作り上げた「答え」を見て得た気づきをもとに、改めて自分の答えを作り直してみることもまた、間…

学びを軸にICT活用を考える#2 「調査」の場面

前稿では、ICTの活用シーンのうち「伝達」を目的とする場面について考えるところをまとめました。本日は、必要な情報を(信ぴょう性を確かめながら)集める「調査」のフェイズについて考えます。学びを進めながら、情報を集め、知に編む作業はICTを活用することで拡張が容易。もっと言えば、ICTなしには出来ることが限定されてしまいます。日々拡大するインターネットという「超巨大図書館」を上手に/正しく活用させて情…

学びを軸にICT活用を考える#1 「伝達」の場面

ICTを活用する場は様々ですが、その一つは、生徒の学習活動に必要な道具・材料(知識など)を効率よく「伝達」しようとする場面です。これ以外にも「調査」や「対話」の場面もありますが、これらについては次稿以降で順に触れていきます。どのクラスに対しても確実に提示し、獲得させなければならないことを予めスライドにまとめておくだけで、先生が教室で板書する時間と手間が省けます。浮いた時間は生徒の学習活動に割り当て…

講演会やセミナーを主催される方々のご苦労を改めて

この夏もまた、あちらこちらのセミナーや講演会などに参加させていただき、大いに勉強させていただきました。刺激的なお話を方々でお聞きすることができ、これからやるべきことがまた少し見えてきた気がいたします。こんなところで何ですが、改めて心より御礼を申し上げます。 オンラインでの開催が多く、運営の皆様には例年とは違ったご苦労も多かったと思いますし、講演された先生方にも参加者の反応が読めない中で、不特定多数…

手を使って書き写すことの大切さ

タブレットPCが導入されている教室もどんどん増えています。黒板に書かれたものを生徒がノートに書き写す光景が、教室で見られなくなる時代も遠からずやってくるかもしれません。そんな時代に逆行することを申し上げるようで恐縮ですが、手を使って書き写すことの大切さを、もう一度改めて知るべきではないかと考えています。 2016/03/14 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 映示して見せたものも、ちゃんと観…

スライドや板書案を作り込んでおくだけでは…

板書(スライドを含む)や資料が整う度合いと、説明や指示のわかりやすさは、非常に強く連動します。実際のデータに照らしてみても、両者の間には 0.89 という極めて強い相関係数が確認できました。 【板書や資料】 板書やプリントは見やすく整理され、後で見てもわかりやすい。 【指示と説明】 先生の説明はよくわかり、指示にとまどうこともない。 わかりやすく整理された板書やスライドを用意することで、指示や説明…

黒板を写すと活動が低下?

昔からよく言われることに、「板書を増やすと、生徒は写すことばかりに気を取られ、学びの姿勢が受け身になる」というのがあります。この指摘には納得できる部分もなくはありませんが、「板書が多いこと自体が思考を妨げる」というのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。 受け身の姿勢が強調されたり、自ら考えようとしなくなったりする要因は、板書の多さではなく、板書の仕方、板書に至るまでの進め方にあると思います。実際…

探究活動の目的から考えるテーマ選び

探究活動が目的とするのは、自分を取り巻く世界に、いまだ解明されていないことや解決策が未確立の問題を見つけて、解明や解決に取り組むことを通し、新たな知を創造する方法と姿勢を身につけることに加え、それらの課題に自分はどう向き合うのか/どんな接点で社会に関わっていくのかを考えることにあるのだと思います。 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり 高大接続改革で募集定員が増えた「総合型選抜入試」に…

プレゼンテーション力より質問力

探究活動などに限らず、日々の授業の中でも生徒がプレゼンテーションに取り組む機会が増えています。小学校からの蓄積もあってか、中高生のプレゼン力は確かに高まっていると感じますが、プレゼン後の質疑応答では、ほとんど質問が出ないか、たまに質問が出ても散発的でそこから議論に展開するような場面はめったに見かけません。プレゼン力だけでなく、「質問力」を高めることに注力した指導の設計が必要ではないかと感じています…

夏休みの過ごさせ方を振り返って、来期の指導設計を

昨日のブログで、「自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?」と題して、夏休み中の宿題の代表格(?)である自由研究、課題研究について考えてみました。各教科で課した宿題・課題も含めて、所期の成果が得られたかどうか、2学期の初めにはきちんと検証をしたいもの。夏休み中の講習・補習も同様です。夏の間に行った指導/取り組ませた課題の成果を検証しないことには、2学期からの指導の起点を正しく定めることもできま…

自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?

まだ夏休みが始まっていないのに「何、このタイトル?」と思われた方が多いのではないかと拝察いたしますが、ひと月後に初めてこの問いを思い浮かべたのでは時すでに遅し、与えた課題の効果を検証する準備が十分に整っていない可能性が高いのではないかと考えます。 1学期の終業式を迎えて、夏休み中に取り組むべきタスクはすべて生徒に提示されているはず。生徒の時間(加えて、場合によっては教材等の購入費などの金銭)を投じ…

副作用を抑え、効能を最大化するルーブリック評価の運用

ここで改めて申し上げるまでもありませんが、新課程への移行に伴って「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点での学習評価が行われるようになります。文科省が示した指導要録(参考様式)にも、各教科・科目の観点別学習状況を記載する欄が設置されています。指導要録に、評定とともに観点別学習状況が「AAA」といった具合に記録として残る以上、評価結果に対する説明責任は、これまで以上に…