授業改善での協働のあり方

共有すべきは付加価値の大きな指導

昨今、耳にすることも少なくない「組織的な授業改善」。何やらヘビーな響きがありますが、それぞれの先生方が重ねてきた工夫の成果を共有して、教科全体、さらには学校全体で「より良い授業の実現」を目指しましょうということにほかならないはずです。別稿「互いの実践に学び、校是たる授業像を作り上げる」でも書いた通り、周囲の先生の優れた手法や工夫に学ぶことなしには、改善に向けた発想も自分の中に閉じたものとなりがち。…

授業を観てもらう「チャンス」を活かす

授業を改善しようとするとき、他の先生にご自身の授業を観てもらうのは、とても有益です。改善に向けた直接的で効果的なアドバイスをもらえる期待もありますが、それ以上に「異なる見方/考えに触れる中で、これまでの実践を相対化してみる」ことに大きな意味がありそうです。自分では様々な改善を重ね、「これが最善」と思えることを実践していても、気づかずにいることが思わぬところにあったりするもの。そんな点に気づくには、…

授業評価の結果に基づく「改善行動の効果検証」

年末を迎え、今年も授業評価アンケートの集計結果をお届けする時期になりました。1学期に続いて本年度2回目という学校もあれば、昨年の実施から1年ぶりとのケースもありますが、集計結果がお手元に届いたら、まず「授業改善に向けた取り組みの効果検証」をお願いします。前回の結果を踏まえ、先生方はそれぞれに「より良い授業の実現」を目指して様々な工夫を重ねて来られたはず。それが「生徒が備える学習者特性にマッチしてい…

優れた実践にも手札は様々、組み合わせて更なる進化

生徒による授業評価アンケートを利用して、継続的な授業改善(=より良い授業の実現)に取り組んでおられる学校が各地にあります。多くのケースでは、集計結果を用いて、校内に既に存在している優れた実践の所在を探り、そこでの工夫や取り組みを共有することで、改善が遅れた授業でのキャッチアップが進められています。また、高い評価を得ることができた授業における工夫も様々。それらを効果的に組み合わせれば、現状を超える「…

実践共有は、学習効果への寄与が大きい項目に焦点化して

授業改善(より良い授業の実現に向けた思考と行動)は、先生方一人ひとりがプロフェッショナルとして取り組む仕事ですが、一人で頑張っているだけでは、発想も手札も膨らまず、なかなか加速がつきません。教科内、あるいは少し狭め、同じ科目を担当している学年教科の先生方の間で、手応えのあった手法を公開し合うことが重要です。改善が遅れているケースがあったとしても、高い評価を得た(=自校の生徒の学習者特性にマッチした…

主体的・対話的で深い学び~どこまで実現したか #2

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図る中で「主体的・対話的で深い学び」がどこまで実現できたか測定することは、これまでに重ねた授業改善に向けた行動の妥当性を検証し、効果を挙げてきた優良実践を抽出するために欠かせません。今後のさらなる改善に向けて、どこに次の一歩を踏み出すべきかの判断をするにも欠かせないデータの一つになるはずです。授業者としての行動/活動の配列などに視点を置くことも大切でしょうが、…

主体的・対話的で深い学び~どこまで実現したか #1

現場で頑張る先生方が「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指して様々な工夫を凝らし、日々の授業改善に取り組んでおられる様子に大いに刺激される今日この頃です。このキーフレーズを定義し直し、構成要素ごとに到達段階の指標を書き出せれば、新しい授業観にそった学ばせ方の転換がどこまで進んできているかの検証もできそうです。 2018/06/19 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 検証の指標は、授業者では…

より良い授業の実現に向けた、管理職の役割

現場で頑張る先生方が日々取り組んでおられる「より良い授業の実現」がどれだけスムーズに進み、大きな成果を結ぶかどうかは、管理職からの支援や関与に左右される部分が小さくないと考えます。別稿「授業観察を行うときに押さえるべきところ」でお伝えしたことはもちろんですが、それ以外にも管理職の関与なしには実現が難しい「授業改善を進めるための環境づくり」があります。授業観察を通して見つけた優良実践を校内に伝えるこ…

研究授業の実りをより大きくするために#INDEX

より良い授業の実現を目指して、参加する先生方の気づきと智恵を交換する場が研究授業です。実施には小さからぬエネルギーが必要ですが、他には代えがたい、先生方にとって貴重な学びの機会です。コストに見合った成果が得られるかどうかは、ファシリテーターを含む参加メンバーの構成に加えて、実施の方法によるところも大です。このシリーズでは、以下の6フェイズで構成する実施手順を提案します。 2017/10/30 公開…

研究授業の実りをより大きくするために(その3)

明確なテーマに沿った研究で継続的に成果を積む 授業を参観し、協議を通じて「より良い授業」を実現するための気づきを交換したり、学習効果をより大きくする方法を考えたりすることで、研究授業は所期の成果をおさめたことになりますが、毎回、これを繰り返しているだけでは発展的、継続的な取り組みにはなりません。そもそも「研究授業」というからには、何らかのテーマにそって研究を進める場として位置づけを明確にする必要が…

研究授業の実りをより大きくするために(その2)

グループの成果をシェアして改善への仮説作り 前稿「参観メモをもとに小グループで気づきの交換」で紹介したような手順を、授業公開後の研究協議の冒頭で踏んでおけば、授業者の工夫や共有すべき優れた手法、改善すべき箇所とその修正案などの多くは、各グループの中で、既にかなりのところまで抽出されているはずです。次のステップはグループごとに取りまとめた「気づき」を発表してもらい、知見の共有を参加者全員まで広げてい…

研究授業の実りをより大きくするために(その1)

参観メモをもとに小グループで気づきの交換 授業改善を目的とする取組のひとつに研究授業があります。複数の先生が同じ授業を参観した後で研究協議に臨むという枠組みは同じですが、後半の研究協議のやり方次第では、より良い授業の実践に向けて得られる知見(=研究授業の成果)の質と量に大きな違いが生じます。 2017/10/25 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 効果の上がる研究授業、形だけで終わる研究授業…

授業観察を行うときに押さえるべきところ

管理職の先生方が「授業観察」を行うときや、教育実習生の授業を指導役の先生が観るときには、押さえておきたいポイントが多々あります。さらには観察で実際の教室に足を運ぶ前にも、観察者と授業者との間で行っておくべきことがあり、参観を終えた後も同様です。どこに観点を置いて授業を観るかに加えて、参観結果をどのように授業者にフィードバックするかは、授業を観察する先生方それぞれの経験則に頼りがちかと思います。授業…

授業改善を確実に進めるための年間実施計画作り

年度末が近づき、新年度の年間行事予定も固まりつつある時期ですが、より良い授業の実現に向けた取り組み/協働についても、スケジュールを考えてカレンダーに落とし込んでいく必要があろうかと存じます。生徒の指導が本分であり、それを中心に年間スケジュールを決めていくのは当然ですが、教育に向けられた期待が膨らみ、大きく変化していく中、指導法の研究と開発に十分なリソースを割り当てたいところです。多忙な毎日の中で、…

授業間の差が拡大したときこそ実践共有の好機

授業評価アンケートは先生方が個々に担当される授業について生徒の評価を得るものですが、結果を見るときには、教科(あるいは学年教科)としての集計値にも注目を向けましょう。別稿でも書いた通り、授業評価アンケートを行う目的のひとつは、校内/教科に存在している優れた実践(授業)の所在を探し出すことです。そこでの工夫や実践を先生方の間で共有していけば、「より良い授業」を「より多くの生徒」が受けることができるよ…

生徒を中心に授業を観る(その2)

本稿のタイトルは「生徒を中心に授業を観る」ですが、教室に足を運んで生徒が学ぶ姿を実際に観る前に、考査や模試などの成績とその推移、行動評価の記録、ポートフォリオなどに残された各種ログ、授業評価の集計結果などの様々なデータを通して、そこまでの指導/学びが生徒にもたらした成果を観ておくことも大切です。これまでの成績推移や学習行動/学びに対する生徒の認識の変化などを把握しておけば、指導の在り方とその成果を…

生徒を中心に授業を観る(その1)

様々なデータで所在を明らかにした「優れた実践」を共有するための相互参観、あるいは管理職による授業観察などの「他の先生の授業を観る場面」では、説明の内容や組み立て、板書の技法やプレゼンテーションの構成、確認の取り方、学習活動の配列といった、授業者の行動に着目していることが多いように思います。やり方を学ぶにも、授業を評価するにも、指導者の行動にダイレクトな関心が向くのは当然でしょうが、学びの主体はあく…

授業改善行動の実効性を高めるために#INDEX

授業評価アンケートの集計結果や模試などの成績データなどから、授業改善の課題がどこにあるかを特定できたとしても、それだけで「改善に向けた具体的な行動」を描き出し、着実に実行できるとは限りません。改善課題の解決に必要な知見を集めるにも相応の工程が必要ですし、授業の進め方や指導計画の中に落とし込むには従来の発想を離れた工夫も必要になります。また、当然ながら、「プランの立てっぱなし(計画倒れ)/やりっぱな…

授業改善を進める準備が整っているか

本シリーズでは、「授業改善行動の実効性を高めるために」と題して、改善課題の特定から、改善に向けたプランの作成、その実行と改善行動の効果測定までの流れについて、考えるところをまとめてみました。授業改善を継続的、効果的に進めるには、如上のPDCAサイクルを適切に回せるだけの環境や準備が整っていることが前提要件。本稿では、シリーズの追記として、この辺りを考えてみたいと思います。もし、現状を鑑みて不十分と…

授業改善行動の実効性を高めるために(その3)

改善行動の効果測定とその後のアクション 授業改善に向けたプランを実行していく中で、所期の目標の達成を引き寄せるべく「中間検証」で小さなPDCAを回しながら、次の授業評価や模試などを機に「改善行動の効果測定」を行います。成果を挙げた取り組みはきちんと共有・継承することで、次の年度でほかの先生方が同じ試行錯誤を繰り返さないで済むようにしたいところ。巨人の肩の上に立つという言葉がありますが、先人が築いた…