生徒による授業評価

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして #INDEX

授業のあり方について先生方が真剣に且つ楽しく話し合え、授業改善に建設的に取り組める協働の「環境」があれば、先生方の授業力、学校の教育力は着実に高まっていくものと考えます。ここで言う「環境」には、教育目標がきちんと共有され、それに基づく率直な意見交換ができる雰囲気にあることももちろんですが、既に校内に存在している優れた実践の所在を知るための「ツール」や、多忙の中でも知見の共有を図れる「研修手法」の存…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その3)

模試や考査での成績、行動評価の記録、授業評価アンケートの集計結果といった「指導効果や学びの状況に関するデータ」を使って優れた成果を残した実践の所在を特定し、そこでの手法を互いに学ぶことが、学校/教科全体での授業改善を確実でスピーディーなものにします。前稿では、どのようにデータを使って優良実践の所在を知るか、その授業を担当する先生からどのように効率的に発信をしてもらうかに触れましたが、本稿はその次の…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その2)

学校全体で授業改善を進めていく上で欠かせないのが、「データを用いて優れた実践の所在を明らかにした上で、それを教科内外で広く共有すること」であるのは言うまでもありません。文字にすると、(やや長いとは言え)一文に収まる単純なことですが、実現にはいくつもの要件を満たさなければなりません。魅力的に見える実践も、それを取り入れたことで生徒の学びに有意な効果をもたらしているかどうか確かめる必要がありますし、共…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その1)

授業評価アンケートは、校内/教科内に存在している優れた実践(=高い評価を得ている授業)の所在を確かめ、それを広く共有して学校全体あるいは教科全体での授業改善を進めていくためのツールです。校外から持ち込んだ新たな手法が、自校の生徒の学習者特性にマッチする保証はありませんが、校内で既に高い評価を得ている授業でのやり方なら、生徒が身につけている学び方との高い親和性が期待できます。こうした優良実践の共有が…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その3)

前稿(その2)の終わりに、「改善に向けた新たな知見を得るのに最も効率的で確実な方法は、既に校内で高い評価を得ている先生の実践に倣うことであり、高評価を得た先生からの積極的な発信が期待される」と申し上げましたが、教科内/校内に向けて発信すべき実践の所在を知るには、個人票裏面の「クラス別集計」をご覧いただくのが好適です。 ❏ 相対的な位置と、クラスごとの違いを確認 個人票(授業評価集計)の裏面には、担…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その2)

前稿(その1)では、授業評価アンケートにおいて最も重要な項目である【学習効果】の集計値をみるときの観点と方法をご説明しました。本稿では、学習効果のさらなる引き上げ/授業改善が必要と判断されたときにどうすべきか、集計値から読み取る方法をご紹介いたします。 ❏ グラフ「強みの所在/改善課題」が示すもの 個人票[授業評価集計]の中段には、下図のようなグラフが表示されています。グラフを上下に分けるように引…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その1)

授業評価アンケートの実施後、しばらくしてお手元に届く集計結果には様々な数値が記載されていますが、その見方を良く知ることは評価結果を授業改善に活かすために欠かせません。下のイラストは、当オフィスが監修、株式会社ディーシーアイが開発・運用している「授業評価&生徒意識アンケート」の個人票(授業評価集計)ですが、これを例に、集計結果として出力されたデータを見るときのポイントを考えてみたいと思います。   …

授業評価アンケートで尋ねるべきこと(質問設計)

学習評価は多様なツールを組み合わせて多面的・総合的に行わなければなりませんが、そこで用いる様々なツールの内、授業評価アンケートが測定を担うのは、「学習の主体である生徒の認識」についてです。とりわけ、確実に把握しておきたいのは「授業を受けて、学力の向上や自分の進歩を実感できているか」です。この質問にYESと答えた生徒は、その科目を学ぶことへの自己効力感を保ち、興味関心膨らませることがデータで明らかに…

日々のチェックで授業デザインのブラッシュアップ

臨時休校、分散登校、短縮授業と、授業日数・指導時間の確保を困難にする要因がズラリと並ぶ中、日々の授業をより効率的で密度の高いものにするには教室の対面授業で行う学習活動を精選する必要があります。 ターゲットとなる問いを設定することは本時の主眼や指導の目標を明らかにするとともに、個人で出来ることと教室で行うべきことの選別にも有益であるというのが、昨日の記事の主旨でした。 そうしてデザインした授業の一つ…

イレギュラーな実施形態の中での授業評価アンケート

臨時休校が続く中、教室での対面授業から自宅学習や遠隔指導といったイレギュラーな形に切り替えての学習指導が続いてきました。そんな中でご相談をいただくことが増えているのが「例年行ってきた授業評価を今年はどういう形で行えばよいか」というものです。 授業再開後に学校が日常を取り戻して一定期間が経過したら、例年と同じ方法・内容で授業アンケートを行い、継続的な授業改善を着実に進めて行く必要があることは言うまで…

休校中の学びを把握~リモート指導の好適手法の確立へ

緊急事態宣言を受けて、休校措置が取られ対面での授業は行えない状況が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかる見込みが立たない中で、今の状況に暫くは耐えることになりそうです。休校中も生徒の学びを止めさせないよう、生徒が自宅で取り組む課題を与えたり動画を配信したりと様々な努力が重ねられています。環境整備が先行していた学校ではテレビ会議システムを応用した双方向性の実現も図られていますが、…

授業内での活動を通した達成感・充足感

思考力・判断力・表現力を養うために主体的、対話的で深い学びの実現が求められていますが、思考とは、解くべき課題があってはじめて発動し、対話を通じて着想や知識を交換することで拡張・深化が図られるもの。表現力を磨くためにも、考えたところを相手に伝える活動は欠かせません。観察の窓も、生徒を活動させることではじめて開かれます。討論や練習、作業などの活動を通じて多くの生徒が充足感を得ているクラスほど、学力向上…

LHRで授業評価を行うことのメリット

生徒による授業評価アンケートには、授業毎に教科担当の先生が教室で用紙を配って実施するパターンと、ロングホームルーム(LHR)内でクラス担任の先生の指導のもと全授業について一度に実施するパターンとがありますが、どちらが良いかとのご相談を受けることがあります。結論から言えば、LHR内での実施の方がメリットが多いと思います。大学のように学生ごとに履修科目がバラバラ、ホームルームが実質的に機能していない場…

授業改善をより確実にするためのデータの見方

授業評価アンケートの集計結果は、個々の項目の評価値を別々に眺めるよりも、「目的変数」を設定した上で、それとの関連の中で個々の数値を解釈する方が、授業改善に向けた改善課題を捉えやすくなります。授業評価アンケートの集計が終わったらで書いた通り、授業評価アンケートが担うのは「生徒の学びに対する意識」の把握であり、最も大切なのは「授業を受けて学力の伸長や自分の進化を実感できるか」という問いにどれだけの生徒…

授業評価アンケートにおける目的変数は学力向上感

模擬試験の成績などでも観測できる結果学力(知識・技能、思考力・判断力・表現力)の伸びと、授業評価アンケートなどの集計に現れる学習者側での伸びの実感(学力向上感)とは別物で、両者が一致しないこともしばしばですが、進路希望の実現を目指す意欲と行動を継続できるかどうかは、前者より後者にかかっているようです。学んだことに新たな興味や関心が芽生えるかどうかも、実際の成績より当人の学力伸長感に左右されることが…

学習評価は多様なツールを組み合わせて多面的・総合的に

学習指導が所期の成果を上げているかどうか正しく評価するには、学習の成果として形成された知識・技能、思考力・判断力・表現力を測定する「テスト」や、活動そのものをルーブリックなどの基準に当てはめて行う「パフォーマンス評価」に加えて、学習者の認識そのものを把握するための「アンケート調査」や「面談調査」なども欠かせません。 2014/10/27 公開の記事をアップデートしました。 ❏ テストが測るのは解内…

授業評価アンケートの集計が終わったら

生徒による授業評価アンケートは、授業改善に向けた課題形成とこれまでの改善行動の効果検証のために行うものですから、集計結果が良かったかどうかよりも、結果が出た後の個人/組織の行動の方が大切です。健康診断を受けて気になる数値があったのに生活改善をしないとエライことになるのと同じかもしれません。 ❏ 生徒は授業を受けて学力の向上を実感しているか 教科学習指導を評価し、妥当性を検証するときは、 成績の伸長…

学習効果が期待値を下回るとき(その2)

目的もしっかり示し、活用機会も十分、しかも「わかりやすさ」も十分に備わっているのに、学習効果だけが思ったように向上しない。そんなときに「当座の目標を達成した先をイメージできているかどうか」 を点検してみましょうというのが、前稿のお話でした。本日は、その続きから。 ❏ 当座の目標を達成した先にイメージできるもの 下図は、活用機会の得点から導き出した学習効果における期待値と実測値の乖離を…

学習効果が期待値を下回るとき(その1)

目標提示が十分になされ、且つ習ったことを活用して課題を解決する機会をしっかりと経験していれば、学力や技能の向上を生徒が実感することがデータからわかっています。公式のように表現するなら、こんな感じでしょうか。 学習効果∽目標理解☓活用機会 しかしながら、活用機会と学習効果の間に極めて高い相関が見られるとはいえ、近似線から遠く離れるケースも少なくありません。そんな場合に考えられるのは他の要…

授業評価アンケートの質問設計~まとめと追記

昨日まで、授業評価&生徒意識アンケートの質問設計について、それぞれの評価項目に込めた意図や改善のための着眼点などの整理を試みてきました。シリーズで取り上げたのは、標準的なケースを想定した推奨パターンによる質問群です。 座学・講義系の授業での評価項目 実習・実技系の授業での評価項目 生徒意識調査(学習環境/資質・姿勢の獲得) 学校が掲げる教育目標によって、項目ごとに別のものに入れ替える「調整」が必要…