生徒による授業評価

年度の後半で授業評価が下がる?

1学期の授業評価アンケートで見出された改善課題を着実にクリアし、数ヶ月後に実施した2学期のアンケートでは大きく評価を改善しているケースが少なくありませんが、これとは逆に1学期の高い評価を2学期に維持できていないこともあります。経年データを見ると、年度が替わるごとに評価を上げて、夏を過ぎるとまた下がるという繰り返しが観察されるケースも少なくありません。集計結果を折れ線グラフにしてみると、あたかもノコ…

授業評価の結果に基づく「改善行動の効果検証」

年末を迎え、今年も授業評価アンケートの集計結果をお届けする時期になりました。1学期に続いて本年度2回目という学校もあれば、昨年の実施から1年ぶりとのケースもありますが、集計結果がお手元に届いたら、まず「授業改善に向けた取り組みの効果検証」をお願いします。前回の結果を踏まえ、先生方はそれぞれに「より良い授業の実現」を目指して様々な工夫を重ねて来られたはず。それが「生徒が備える学習者特性にマッチしてい…

実践共有は、学習効果への寄与が大きい項目に焦点化して

授業改善(より良い授業の実現に向けた思考と行動)は、先生方一人ひとりがプロフェッショナルとして取り組む仕事ですが、一人で頑張っているだけでは、発想も手札も膨らまず、なかなか加速がつきません。教科内、あるいは少し狭め、同じ科目を担当している学年教科の先生方の間で、手応えのあった手法を公開し合うことが重要です。改善が遅れているケースがあったとしても、高い評価を得た(=自校の生徒の学習者特性にマッチした…

生徒の特性に合わせた教え方・学ばせ方のアジャスト

授業評価アンケートの集計結果が伝えてくれるのは、生徒が身につけている学び方と先生の教え方/学ばせ方のマッチングの度合いです。同じように教えていても、クラスによって集計値が違うのは当たり前で、その違いは想定を超えて大きく出ることもしばしばです。質問項目ごとの集計値から学習者の集団特性を素早く捉え、教え方/学ばせ方のアジャストを図ることも授業評価アンケートの重要な活用法の一つであり、引き出しの中にどれ…

担当クラスごとの評価の違い

同じような教え方/学ばせ方をしていても、生徒の反応が全く違ったものになることがあるのは、先生方もご経験かと思います。生徒による授業評価アンケートでも、同じ先生が同じ科目を担当しているのに、クラス間で評価結果に想像以上の差が生じることがあります。アンケートが測定するのは、「先生の教え方」と「生徒が身に付けている学び方」もマッチングの度合いであり、クラスが備える集団としての学習者特性が違えば、同じ教え…

学習効果への寄与度が通例と外れる/偏りがある場合

この夏も各地の学校で行われた授業評価アンケートのデータが続々と届き、その分析に取り組む毎日を過ごしています。アンケートのご利用をいただきました学校には、心より御礼を申し上げます。さて、別稿「授業評価アンケートの分析に用いる様々な手法」でもお伝えしましたが、アンケートのデータを分析するときには、目的変数とする項目(授業評価の場合は「学習効果」です)を選び、他の項目からの寄与度を重回帰分析という手法で…

授業間の差が拡大したときこそ実践共有の好機

授業評価アンケートは先生方が個々に担当される授業について生徒の評価を得るものですが、結果を見るときには、教科(あるいは学年教科)としての集計値にも注目を向けましょう。別稿でも書いた通り、授業評価アンケートを行う目的のひとつは、校内/教科に存在している優れた実践(授業)の所在を探し出すことです。そこでの工夫や実践を先生方の間で共有していけば、「より良い授業」を「より多くの生徒」が受けることができるよ…

進級を前に「学びへの自己効力感」を点検

進級後の学びを視野に、学びへの自己効力感を生徒がどのくらい持っているか、この時期に確認をしておく必要があろうかと思います。どのフェイズでも、「学び」はそれまでに身につけてきたものを土台に積み重ねるもの。既習内容の理解と定着が不可欠なのは言うまでもありませんが、それと同等以上に重要なのが「学びへの自己効力感」です。 ❏ 学力向上感などを尋ねるアンケートの結果を参考に 年末(11月~12月)に、生徒に…

負荷を抑えて「できた気」にさせてしまうことのリスク

適正な負荷を掛けることは力を効率的に伸ばします。少し背伸びすれば手が届くところに目標が設定されてこそ、頑張ってみようという気にもなるのではないでしょうか。楽々と飛び越えられるハードルでは「本来はできなければならないことなのに出来ていないこと」に気づく機会も持てず、より良いパフォーマンスに向けた課題形成も行えなくなり、メタ認知・適応的学習力の獲得にもブレーキがかかります。生徒が学習内容を確実に理解で…

対話などの学習活動が、学びの成果に直結しない?

授業評価アンケートの標準的な質問設計に含まれる、Ⅵ対話協働「話し合いなどの協働で、気づきや学びの深まりが得られる」は、対話的な学び、深い学びがどこまで実現しているかを測る意図で設けた項目です。対話は、気づきや発想の交換で思考を拡充するために欠かせないものですし、協働の場面は、様々な課題の解決に協力し合って取り組むときに必要な姿勢やスキルを獲得させるトレーニングとして不可欠です。思考力のみならず、表…

学びの成果を妨げているボトルネックはどこに?

授業評価アンケートの集計結果を分析してみると、「目的変数」であるⅦ学習効果への寄与度で最も大きな値を示すのは、Ⅴ活用機会です。Ⅶ学習効果を目的変数、先生方の直接的なコントロールが比較的容易なⅠ~Ⅵの各項目(評価項目と質問文はこちらでご参照いただけます)を説明変数とする重回帰分析の決定係数は0.827と十分に大きな値です。習ったことをもとに考える機会が課題などで整っていることは、新課程が求める「知識…

授業評価アンケートの集計結果を相対的にみる

今年も多くの学校で授業評価アンケートをご利用いただきました。この場を借りて、改めまして心より御礼を申し上げます。集計データの分析結果のご報告に各校をお訪ねするのはこれからが本番ですが、この機に多くの学校の集計結果を横断的に眺めてみました。下図は、この夏に授業評価アンケートをご利用いただいた様々な学校のデータ(質問設計は当オフィス推奨のものをご採用いただいているため共通です)をマージして作成したもの…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方 #INDEX

より良い授業の実現を目指して、改善課題の形成と改善行動の効果測定を行ったり、校内に存在する優れた実践を共有・継承すべくその所在を特定したりするのに欠かせないデータのひとつが、生徒による授業評価アンケートの集計結果です。質問項目に組み込まれている「授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感できるか」という質問に肯定的に答える生徒がどれだけ存在するか/増加したかを観察すれば、授業改善の進み具合が推定でき…

授業評価アンケートの導入に際して

本年度もまた、様々な学校で新たに「授業評価&生徒意識アンケート」を導入いただくことになりました。改めて、御礼を申し上げます。各校の授業改善がこれまで以上に大きく進むよう、当オフィスも出来る限りを尽くして参る所存です。授業評価アンケートが目的とするところ、実施の方法やお届けする帳票の内容、加えて集計結果を授業改善にどうお役立ていただけるかなど、実施前にお伝えしておきたいことを以下の7項目にまとめてみ…

主体的、対話的な深い学びへ~授業評価アンケート

高校でも新課程での指導が始まります。活動の配列/授業デザイン(=学ばせ方)のみならず、評価(=効果測定)の方法も、新しい学力観に沿ったものに切り替えていく必要があるのは言うまでもありません。既に十分な準備がなされているはずですが、新年度を迎えて、これまで準備してきたことを実際の教室で試して、想定通りにうまく機能するか点検をしながら、必要な修正を重ねていくフェイズに移りました。 新しい学力観の下での…

授業評価アンケートの分析に用いる様々な手法

授業評価アンケートでは、授業を受けた生徒が得ている学力向上の実感などを目的変数に様々な分析を行うことで、より良い授業の実現に向けて、どこから力を入れていくべきかを特定します。経年的にデータを追うことで、前回までの分析で特定された改善課題がどこまで解消されてきているかの「改善行動の成果検証」もまた忘れずに行うべきことがらの一つです。分析には様々な手法があり、状況に応じて使い分けますが、比較的良く用い…

一人一台端末を使ってアンケートを行うときの注意点

新型コロナ対応が拍車をかけ、一人一台端末の環境整備(外部リンク)が急速に進みました。教室でできることは大きく増え、コミュニケーション・ツールとしてのICTは大いに活用していきたいところです。新年度を迎えるにあたり、各地の学校での端末活用をお尋ねしてみたところ、意欲的な取り組みの数々が(新しい環境への多少の戸惑いとともに)見られます。今後、各校の実践に学べることが沢山ありそうです。学習(教科、進路、…

授業評価アンケートを行うときの最小要件

生徒による授業評価アンケートは、「より良い授業の実現/授業改善」を目的に、現状の把握と課題形成を図り、これまで重ねてきた改善行動の効果を測定するためのものです。喩えるならば、健康の維持と増進を目的とした場合の「定期健診」と同じような位置づけでしょうか。この目的のためにアンケートの結果を有効に活用できるかどうかのカギは「質問設計(評価項目と質問文)」と「集計方法」にあります。 2017年03月16日…

理解の確認を怠ると…

授業評価アンケートなどで、「先生は、生徒の理解や状態を確かめながら授業を進めてくれていますか」と尋ねてみたときに、すべての生徒がYESと答えてくれる状態を維持することはとても大事なことですが、実現するのはそうそう簡単なことではなさそうです。実際のデータを見ると、下図の通り、肯定的な回答が9割を占める換算得点75ポイントに到達していない授業もかなりの割合を占めています。 2016/08/24 公開の…

同じ教材で同じように教えても~学習者特性の違いを把握

同じ教材を使って同じように教えているのに、模試や考査での成績分布に違いが出たり、授業評価アンケートの集計結果がクラスごとに大きく違ったりすることも珍しくありません。学習者がこれまでに身につけてきた「学び方」と、先生方が授業で実践している「学ばせ方」のマッチングの度合いによって生じた違いです。テストなどの成績、観察を通した行動評価やアンケートの集計結果、ポートフォリオに残った様々なログなどを手掛かり…