板書の技術、教具の使い方

情報の整理・構造化のやり方を板書で学ばせる

情報を整理・構造化する方法は、先人たちによって様々なものが生み出されてきました。それらを活用する場面は、日々の教室にも豊富です。インデントや段落記号で階層性を表現したり、表組でものごとの対応性を捉えさせたりする板書に加え、教材のページには、フローチャート、ベン図、概念地図といった多様なダイヤグラムが方々に登場します。これらについて考え方を身につけておけば、複雑な情報を整理したり、整理した結果を他者…

学びの土台を作る、整理された板書・プリント

生徒に問い掛け、気づかせたことを全員に見えるところに書き出して、前段の理解を教室で共有していくのが「板書の基本的な役割」です。整理された結果を提示するだけならプリントやスライドで十分ですが、授業の展開は「対話的な学び」が根付くほど動的になるもの。臨機応変に展開/構成できる板書の強みを十分に活かしていく必要があります。電子黒板などのICTやデジタル教材の利用はますます増えていくでしょうが、「学びに対…

TIPS! 空所を残した板書

板書は、生徒に問い掛けを重ねながら、順番に書き上げていくのが普通ですが、「敢えて空所を残しておく」という手法もあります。ねらいは「生徒の問題意識を刺激し、強い印象を残す」ことにあります。授業の導入時や、新たな内容に進むときに用いれば、その先の学びを通じて達成を目指すところを認識させる優れた機能を発揮してくれます。例えば、本時の学びを通じて答えられるようになって欲しい問いの「正解」となる文章を元に、…

板書の技術、教具の使い方

1 板書の技術 1.0 板書の技術(序)1.1 (その1)深く確かな学びの実現に適切な板書は不可欠1.2 (その2)伝えるべきものを効率的に確実に伝えるために1.3 (その3)授業展開の各場面での板書とそこで学ばせるもの1.4 (その4)板書を辿り直して、学びの振り返り1.5 (その5)生徒のノートに残ったときをイメージして1.6 (その6)板書を補完するツールとしてのプリント1.7 (その7)生…

生徒にも学ばせたいファシリテーション・グラフィック

先生方の板書などを通じて、生徒は情報を整理し、構造化する方法を学んでいます。(cf. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得)結果として残った板書やプリント/スライドなどは、各単元に固有の知識をすっきりと提示し、生徒が覚える上での利便を図るものになっていると思いますが、それらが出来上がるまでの工程そのものにも生徒に学ばせたいことがあります。話し合いなどの場で、メンバーの発言(発想や意見)を拾い上げ、…

道具が変わっても必要であり続けること(まとめ)

ICTの導入が進み、教室で使えるサービスやアプリもどんどん増えてきました。学ばせ方の可能性が大きく膨らみ、生徒に獲得させることができる能力・資質はさらに幅広いものになったということです。道具の使い方を含めての課題解決力ですので、新しい道具を使った様々なチャレンジの場をきちんと整えてあげることは大切です。 新しい道具は、思考法や行動様式も変える しかしながら、その一方で、たとえ道具が変わろうとも、生…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 #INDEX

科学の進歩や社会の変化で、現在の知識は絶え間なく更新されていきます。与えられた知識を覚えるだけでは、知識のアップデートもできず、時代遅れの知識と発想で正しい選択ができなくなります。教室の学びを通して身につけるべきは、単元固有の知識・理解だけでなく、「情報を整理して理解する/情報を集めて知に編む方法」です。うっかりすると、知識付与の効率を高めるばかりに、生徒が自ら行うべきことを、教える側が肩代わりし…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その4)

前稿では、問い掛けを重ねつつ黒板上で情報を構造化していくことで生徒に「情報整理のプロセス」を学ばせることをご提案いたしました。これにより、知識の断片化や丸暗記に偏る学びといったリスクも、かなりのところまで解消できるはずです。しかしながら、蛍光ペンやサブノート式プリントを使うことになった、根っこの問題がまだ解決されずに残ります。言うまでもなく、学習内容の多さに比して授業時間が足りないという問題です。…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その3)

蛍光ペンでマークアップやサブノート式のプリントに頼る手法が抱える問題点とその悪影響を抑えるための工夫について考えた前稿、前々稿に引き続き、今回は「問い掛けで気づきを促しつつ、黒板上で情報を構造化していく」ことを軸にした、別のアプローチをご提案いたします。 2014/12/12 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 問い掛けと板書で、情報整理のプロセスを学ばせる 問い掛けで生徒の気づきを促し、確…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その2)

昨日の記事で考察した「教科書・参考書にマークアップさせる方法」に加えて、空所を設けて重要語句などを埋めさせる「サブノート式のプリント」を用いている授業も多いと思います。こちらの方法であれば、 「重要語句を一文字たりとも自分の手で書いていない」という、マーカーで色を塗るだけの方法が抱える問題の多くは解消できますが、それでもなお、様々な解決すべき課題が残ります。 2014/12/11 公開の記事を再ア…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その1)

知識の整理と拡充を図る場面でよく用いられている方法に、蛍光ペンでマークアップさせたり、サブノート式のプリントを用意したりといったものがあります。限られた授業時間の中で、必要な知識をピックアップして漏らさず伝えていくには、一見したところ合理的で効率的なやり方にも見えますが、弊害も少なくなさそうです。情報が断片化しやすいことや、見やすくなっても記憶に刻まれにくいこと、加えて情報整理の方法を学べないこと…

演習中にワンステップずつ進める板書

ひと通りの説明を終えて、生徒に問題演習や作業などを始めさせたら、そこから先はできるだけ生徒の活動を止めないようにしたいものです。指示や説明を追加するのに先生が口を開いてしまっては、生徒は先生の話を聞くために思考や手元の作業を止めてしまいます。 こうした場面では、生徒の様子を観察してタイミングを見極めつつ、口を開かず黙って板書の続きをワンステップずつ進めるのも好適です。 教室で実際にこの方法を試して…

学びを軸にICT活用を考える#INDEX

ICTの導入が進む中、利用法にも各地で様々な工夫が重ねられ、新しい学ばせ方の可能性が次々と拓かれています。コロナ禍でのオンライン授業を機に、教室での対面授業でのICTの活用に大きく弾みがついたとのお話は方々でお聞きします。ICTに限ったことではありませんが、すべての教具は「学習活動を膨らませる/充実させるため」に用いるもの。ICTの導入は、これまで余計なところに使っていたエネルギーを節約する「効率…

学びを軸にICT活用を考える#3 「対話」の場面

ICTを活用すべきシーンには、前々稿の「伝達」、前稿の「調査」に加えて「対話の場面」があります。「対話的な学び」に期待されるところの大きさは、ここで改めて申し上げるまでもありませんが、生徒が互いに顔を突き合わせて行うものだけが対話ではありません。対面以外の環境で実現する対話的な学びだってあり得ます。他の生徒が作り上げた「答え」を見て得た気づきをもとに、改めて自分の答えを作り直してみることもまた、間…

学びを軸にICT活用を考える#2 「調査」の場面

前稿では、ICTの活用シーンのうち「伝達」を目的とする場面について考えるところをまとめました。本日は、必要な情報を(信ぴょう性を確かめながら)集める「調査」のフェイズについて考えます。学びを進めながら、情報を集め、知に編む作業はICTを活用することで拡張が容易。もっと言えば、ICTなしには出来ることが限定されてしまいます。日々拡大するインターネットという「超巨大図書館」を上手に/正しく活用させて情…

学びを軸にICT活用を考える#1 「伝達」の場面

ICTを活用する場は様々ですが、その一つは、生徒の学習活動に必要な道具・材料(知識など)を効率よく「伝達」しようとする場面です。これ以外にも「調査」や「対話」の場面もありますが、これらについては次稿以降で順に触れていきます。どのクラスに対しても確実に提示し、獲得させなければならないことを予めスライドにまとめておくだけで、先生が教室で板書する時間と手間が省けます。浮いた時間は生徒の学習活動に割り当て…

手を使って書き写すことの大切さ

タブレットPCが導入されている教室もどんどん増えています。黒板に書かれたものを生徒がノートに書き写す光景が、教室で見られなくなる時代も遠からずやってくるかもしれません。そんな時代に逆行することを申し上げるようで恐縮ですが、手を使って書き写すことの大切さを、もう一度改めて知るべきではないかと考えています。 2016/03/14 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 映示して見せたものも、ちゃんと観…

スライドや板書案を作り込んでおくだけでは…

板書(スライドを含む)や資料が整う度合いと、説明や指示のわかりやすさは、非常に強く連動します。実際のデータに照らしてみても、両者の間には 0.89 という極めて強い相関係数が確認できました。 【板書や資料】 板書やプリントは見やすく整理され、後で見てもわかりやすい。 【指示と説明】 先生の説明はよくわかり、指示にとまどうこともない。 わかりやすく整理された板書やスライドを用意することで、指示や説明…

黒板を写すと活動が低下?

昔からよく言われることに、「板書を増やすと、生徒は写すことばかりに気を取られ、学びの姿勢が受け身になる」というのがあります。この指摘には納得できる部分もなくはありませんが、「板書が多いこと自体が思考を妨げる」というのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。 受け身の姿勢が強調されたり、自ら考えようとしなくなったりする要因は、板書の多さではなく、板書の仕方、板書に至るまでの進め方にあると思います。実際…

学習効果に直結する活動性、それを支える視覚情報

授業内での活動性を高めることが学習効果の実感に直結することは、これまでの記事でもお伝えしてきましたが、一見したところ授業内活動とは何の関係もないように思える「わかりやすく整理された板書や資料」が、活動性の向上に大きく貢献していることを示すデータがあります。 2018/07/30 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 充足感のある授業内活動は学習効果に直結する 授業内の活動性を高め、それを通して生…