年度末が近づき、新年度の年間行事予定も固まりつつある時期ですが、より良い授業の実現に向けた取り組み/協働についても、スケジュールを考えてカレンダーに落とし込んでいく必要があろうかと存じます。
生徒の指導が本分であり、それを中心に年間スケジュールを決めていくのは当然ですが、教育に向けられた期待が膨らみ、大きく変化していく中、指導法の研究と開発に十分なリソースを割り当てたいところです。
多忙な毎日の中で、生徒の指導でカレンダーを埋め尽くしてしまうと、先生方の研究や指導法開発の協働に充てる時間が不足します。準備不足で指導に臨んでは、ねらい通りの成果が得られなかったところの補完や修正に余計な手間が増えるという悪循環も懸念されます。
2019/03/15 公開の記事をアップデートしました。
❏ まずは、必要な研修などを書き出し、優先順位を決める
校内には様々な研究課題がありますが、すべてを実行に移すだけの余裕はないはずです。
まずは必要と思われるものをずらっと書き出してみて、重要度や緊急性を熟慮した上で、優先順位をつけるようにしましょう。
個人でできることや、分掌に任せられるものと、教科などの垣根を超えて学校全体で取り組まなければならないものの区分けも必要です。
新課程への移行で、新たな取り組みも多々行われてきたはずです。その中には、成果もあれば、反省と課題もあるはず。より良いものにブラッシュアップを重ねるには、計画的な行動が欠かせません。
より良い授業とは何か、それを構成する要素は何か、という問いにも改めて答えを見つけていく必要があるのは言うまでもありません。
先生方がそれぞれにより良い授業の実現を目指して重ねてきた工夫も、どこかですり合わせて行かないと、学年間の学びの接続などに新たな問題を生みだしているかもしれません。
❏ PDCAサイクルを意識した年間の流れ
単発の研修を並べても、試行錯誤を繰り返すばかりで手法の開発と確立という成果にはなかなか結び付かないのが実際ではないでしょうか。
目的とするところを共有した上で、それぞれの先生が最善と考える方法を試した上で、その成果を比較し、より効果的なものを選び取っていくことの繰り返しこそが重要です。
先生方が個々に取り組む場合より、知恵と発想を持ち寄ることで改善は加速し、成果もより確かなものになります。効果測定そのものも、作業を一本化した方が効率的なのは言うまでもありません。
授業改善や指導法の開発は、「先生方にとっての探究活動」というべきものです。仮説を立て、エビデンスに照らした検証を行い、わかってきたことを土台にその先を描き出していきましょう。
言うまでもありませんが、一つのサイクルで得られた成果を、次のサイクルでブラッシュアップするという継続性・発展性も重要です。
❏ 効果測定と優良実践抽出のデータをどう用意するか
上のイラスト中にある「成果検証/効果測定」をしっかりと組み込まないと、PDCAのサイクルは作れません。まずは、どのような方法で効果を確かめるのか、しっかりと決めておくことが重要です。
年間の実施計画を策定する段階で、効果測定の方法と時期を決めておかないと、せっかくの取り組みも「エビデンスなしの迷走」になるリスクが高くなります。
生徒の学習活動を評価するのは、とりもなおさず先生方の指導の成果を検証することでもあります。
- 結果学力を測定するテスト
- 生徒の意識を確かめるアンケート
- 学習者行動などの定性的な到達目標を扱うルーブリック
- 各種ログで構成されるポートフォリオ
など、学習評価のツールがそのまま使えますが、大事なのは「目指すべき到達状態」がこれらの設計にきちんと反映されているかどうか。
目指すべき学校像や指導目標が更新されているのに、効果測定のためのツールが以前からの旧いままでは機能不全を起こします。
定期考査の問題ひとつにしても、新しい学力観に沿った問い方でなければ、正しい評価にはならないはずです。
新年度の指導が始まる前に、「目指すべき到達状態」が先生方の間で共有されている必要があります。指導開始後に後出しで「こうやって評価するから」と言われても、面食らうばかりではないでしょうか。
授業評価や学校評価をアンケートで行うなら、質問文の設計は年度の冒頭で完成させておきたいところ。最低限、質問設計の原案は校内に提示しておくべきだと思います。
❏ 効果測定、データ分析、実践共有の予定をカレンダーに
効果測定を行ったら、データの分析が必要ですし、それを共有する場が確保されていなければ、分析をしただけで終わってしまいます。
分析結果を書面にまとめて配布するだけで齟齬なく共有できるのであれば別ですが、たいていの場合、先生方に集まってもらい、データの説明を行ったり、質疑を受けたりすることになりますので、その日程も用意しなければなりません。
データからどれだけの知見を引き出せるか、それを共有した上で更なる改善に向けた課題の形成ができるかが授業改善のスピードを決めます。
また、データを使って抽出できた優良実践、効果的な指導法を共有するには、実践報告や相互参観/研究授業も必要になるはずです。
- 優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(全3編)
- 研究授業の実りをより大きくするために(全3編)
ゼロ学期が進行しています。年間行事予定は形になってきているかと思いますが、決定稿を配布する前に、如上の日程と工期を想定したカレンダーになっているか、もう一度点検しておいた方が良さそうです。
お時間が許すようであれば、以下の記事も併せてご高覧ください。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一