別稿「勘に頼らず、データに偏り過ぎず」でも書いた通り、新しい学力観に沿って学ばせ方の更新を測る必要がある中、新たに採り入れた手法はきちんと効果を測定し、成果を検証していく必要があります。
教育資源の最適配分は学校経営の重要課題ですが、その判断を勘に頼るわけにもいきません。エビデンスに基づいた判断が求められます。
また、効果測定は、理解者と賛同者を増やすためでもあります。どれほど強い信念を持って取り組んでいることでも、データを用いてその効果を示さなければ、周囲を巻き込むムーブメントにはなりにくいのではないでしょうか。説得を受ける側にしても、効果に確信が持てなければ、本気で取り組むことに二の足を踏んでしまうはずです。
強い思いで取り組んでいる指導ほど、きちんとデータを集めて、冷静にその効果を確かめていきましょう。
2015年12月に公開したシリーズを更新しました。
指導方法を考える前に、指導目標と評価方法の定立
平均値の変化だけでは不十分~箱ひげ図の活用
箱ひげ図を重ねて指導の効果を比べてみる
既成の度数分布図に条件付き書式を設定するだけでも
様々な比較を行い、どのターゲットに有効なのかを探る
定性的目標は、評価規準に照らした評価結果の分布で
例えば、総合的な探究の時間における指導でも
効果測定と履行率点検を混同しないこと!
履行した生徒と、履行しなかった生徒を分けて効果を測定
「調査」の結果を「実験」と同等に利用できる
散布図上の分布域の違いや近似線の位置関係に注目
指導が適合する対象範囲も探ることができる
履行状況による差が出ない指導は、その効果を疑うべき
学びのログをきちんとレコードに残して後日に検証
優良実践を共有・継承し、費用対効果に劣る取り組みを廃止・変更するには、これまでの指導についての効果測定が欠かせません。
前者の必要は言うまでもありませんが、後者を欠いては取り組みが膨らんでいくばかりではないでしょうか。
スクラップ&ビルドならぬビルド&ビルドでは、教育リソースの枯渇は火を見るより明らかですし、働き方改革という流れにも逆行します。
新しいことを試みても、手応えがはっきりしないまま生徒を付き合わせることにも戸惑いを覚えますよね。何かを試してみたら、きちんと効果測定を行った方が、その手法に自信をもって生徒に向き合えるのではないでしょうか。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一