予習の目的と課すべきタスクの考え方

新学期の授業開きで生徒に求めた予習や復習への取り組み方を、生徒はどのくらい身につけているでしょうか。また、その指示に従った生徒は学力と学習意欲を(期待通りに)向上させているでしょうか。
ノートチェックや小テストで履行を促したところで、「取り組んだことの成果」を生徒が実感できなければ、教える側の思いを押し付けただけになってしまいます。

2015/04/14 に公開した記事を再アップデートしました。

❏ 新しい学力観にそった学ばせ方、予復習の方法へ

教室を訪ねて授業を拝見するとき、場の空気が許せばですが、生徒に声をかけて「どんな予習をしてきた?」「前回の復習は何をしたの?」と聞いてみることにしています。
新課程への移行で、学力観がガラッと更新されていますが、生徒の予習や復習の内容は以前とあまり変わっていないこともしばしばです。
学力観が更新されれば、学ばせ方は違ってきて当然ですし、その変化に伴って「予習や復習のあり方」も違ったものになってくるはずです。
予復習で何を課すのが合理的かは、実際に行われている授業のデザインとのマッチングで決まりますので、昔ながらのやり方で支障がないということは、学ばせ方の更新がなされていないのかもしれません。
先生方が中高生の時にご自身で行っていた方法(大抵の場合、今教えている科目は中高時代に得意だったはずなので、「うまく行った方法」と言い換えても良いかもしれません)で学ばせることが、現代の要請にも合っているのか、一度は疑ってみても良いのではないでしょうか。

❏ 予習は、授業で学んだ方法を試して身につける場

授業では、各教科の固有の知識や技能を獲得させるのと同時に、学び方そのものも学ばせています。学ばせた学び方は、生徒自身が実地に行ってこそ習熟が図れますし、生徒自身の工夫も生まれます。
授業を通じて教えた学び方は、予復習という場を通して、生徒自身が先生の直接的な指導から離れて行うように仕向けない限り、自分のものにしていけないということです。
特に予習は、それまでに学んできた取り組み方/学び方を適用するには最適な場です。初見の教材を対象に行うものですから、知っている方法をどう適用するか考えるには絶好機。これを逃す手はありません。
例えば、ある授業で、論説文を題材に頻出語句や接続をマークアップして文脈を把握する方法を教えたとしましょう。
せっかく教えたのですから、次からの授業でその方法を適用すべき場面があれば、教え直すのではなく、予習段階で生徒自身にやらせてみて出来るようになっているか確かめるべきです。

❏ 予習に課すことができる様々なタスクと事前指導

例えば、英語や古文なら、昔からよくある予習のタスクに「教科書を読んで知らない語句があったら調べておく」というものがあります。
単純な作業に見えるかもしれませんが、本文を見て構造から品詞を特定したり連語関係を見抜いたりすることも前提として求められますので、そうした知識と方法を授業内で学ばせておく必要があります。
また、「知っているつもり」でも、文脈に合った意味を特定できなければ、調べたことが本文理解には役立ちません。語義を特定する思考の手順にも、授業の中で予め習熟させておく必要があるということです。
一方、生徒には無理だから課さないと仰る先生もおられる「例題の解説を読んで類題と練習問題を解いてくる」といったタスクも本当に無理なのでしょうか。
例題の解説をきちんと読ませ、正しく理解できているか類題を解くことで確認する練習を授業で積ませておけば、無理ではなくなるはずです。
本文を読んでポイントとなる箇所を探して設問に仕立てるといった高度な活動だって、事前の練習しだいでは十分に可能です。

どんな予習/授業準備をできるようにさせたいかをイメージし、授業を通してそのレディネスを整えていくという発想が必要です。

❏ 学ばせた方法を正しく適用できたか、きちんと点検

予習へのレディネスを整える指導を積み上げながら、生徒がどこまでできるようになったか、実際にやらせてみながら確かめていきましょう。
授業時間を少し割き、課題を与えてその場で予習をさせ、その様子を観察すれば、見極めはそう難しくないはずです。
イケると踏んで、授業内でやらせていたことを予習のタスクに切り替えたら、きちんとできているか観察を怠らないようにしましょう。
ノート点検で予習の様子を確かめるのも結構ですが、「履行管理」の色合いが強く出がちなので、教室での発問などで、予習段階でどのくらい頭を使ってきたかを確かめるのが好適かと存じます。
予習の方法や課題への取り組み方を知識として伝えたとしても、生徒がその方法を理解して自在に使いこなせるようにならなければ、指導者としての責を果たしたことにはなりません。

❏ 指定した方法は学力や学欲の向上に寄与しているか

冒頭にも書きましたが、「指示した方法での予習が習慣として確立した生徒」には、学力や学びの意欲に好ましい変化が現れるはず。
そうした変化(=学習者としての成長)が見て取れないようなら、指導を通して生徒に求めてきた方法が好ましくなかった可能性があります。
授業での学ばせ方と、その授業への準備のさせた方がうまくマッチングすれば、授業での学びも深まり、学び終えての成果(仕上げの課題の出来栄えや、長期的に見れば成績なども)に向上が見られるはずです。
予習をきちんとやっている生徒と、そうでない生徒を分けて、パフォーマンスを比較できるように評価の仕組みを整える必要もありそうです。
しっかり取り組んだことで学びの成果を実感すれば、取り組むことへの意義を生徒は実感しますし、達成感の積み上げの中で予習そのものへのモチベーションも向上するはずです。
また、作業ばかりのタスクより、頭を使って工夫する「知的なタスク」の方が、生徒のやる気を刺激するのは言うまでもありません。
前述の「教科書の問いを立てること」や「自力で理解した方法で問題を解くこと」はそうした要件を満たしてくれるものだと思います。その段階までいかに早く導けるかが問われるのではないでしょうか。
復習の目的と課すべきタスクの考え方」に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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