年度末まで(ゼロ学期)に必ず点検しておきたいことの一つに、「新年度を迎えるに当たって生徒に伝えたことが、どこまで生徒の行動や思考に根付いたか」があります。年明けからは、観察に力を入れましょう。
クラス担任/学年団として、教科担当者として、あるいは部活動の顧問として、年度初めに生徒に伝えたこと(獲得を期待する行動や姿勢など)があるはずですが、それらがどこまで生徒の中に形になって根付いたかは、1年間の指導が所期の成果をどこまで得たかを表します。
2022/03/17 公開の記事をアップデートしました。
❏ 伝えた期待に生徒はどこまで応えてくれたか
4月の授業開きには、各科目の学び方などをクラスの生徒に話して聞かせたかと思いますが、ここまでの授業と生徒の取り組みを振り返ってみて、それらはどこまで生徒の「習慣」になっていたでしょうか。
アタマではわかっていること、意識したときにはできること、意識せずとも自然に行動に発現することでは、根付きの度合いが違います。
クラス担任としても、生徒に期待するところを生活・学習・進路の各領域で伝えたはず。それらは、どこまで実現しているでしょうか。
もし、狙っていたところまで根付いて/実現していないとしたら、…
- 最初に伝えただけで、その後の繰り返しが足りなかった
- 伝えた期待を基準とした観察と指導が十分でなかった
- 伝えたことに照らした振り返りを徹底させなかった
といったところに、指導の上で省みるべき点があったかもしれません。次の年度には、同じ轍を踏まないようにしたいところです。
生徒の実情に照らして、要求/期待が高過ぎたということも「なくはない」かと思いますが、上記3つのどれかが当てはまるならば、指導の改善で達成を図ることは充分に可能。期待の切り下げはまだ先です。
❏ 示された期待、自分の決意に照らして生徒も振り返り
ゼロ学期を迎える今、生徒自身にも「年度当初に示されたことを自分はどこまで実現できていたか」を振り返ってみてもらうべきでしょう。
振り返りを通じて、これから(進級前を含めて)どう行動するべきかを考え、それを言語化させてみれば、行動の変容も期待できるほか、生徒がどのような自己認識でいるのかもログを通じて捉えられます。
また、生徒自身が進級時/入学時に思い描いていたこと(決意や目標)を思い出させ、それに照らした振り返りも求めたいところです。
三日坊主とは言わずとも、多忙な学校生活の中で忘れてしまっていたとしたら、成長の機会を逃していたことになるのではないでしょうか。
入学から1年になる「新2年生」、4月に最上級生となる「新3年生」、そして卒業していく生徒たちそれぞれが、時期に応じた「基準」に照らした振り返りで、自らの進捗と改善課題を、この機に捉えられるかどうかが、この先の成長の大きさを分けていくはずです。
❏ 伝えておくべきことは他になかったか
年度末が近づき、「1年前に伝えたことがどこまで実現したか」を振り返ってみると、「あのときに、これも伝えるべきだったかも」というものが出てきたりします。伝えるべきだったのに、伝え損ねていたことの洗い出しも、次年度以降の指導改善には重要です。
時間を巻き戻すことはできませんが、次の指導にその反省を活かすことはできるはず。「伝えるべき期待」に、生徒に伝えてきた他のこととの整合性を取りつつ、どんな表現を与えていくか、考えておきましょう。
ここで思い浮かぶものには、教科担当者としてものと、クラス担任/学年団としてのものがあります。指導は組織で(=先生方の目線を揃えて)行うものですから、新たに伝えようしていること(生徒への期待)は、きちんと言語化し、教科/学年団と共有していく必要があります。
各教科/学年団の先生方が皆さんで、こうした「振り返り」を行い、それぞれの見立てを持ち寄ってみれば、新年度の授業開き/オリエンテーションで何を伝えるべきか、目線を「より高いところ」で合わせることができるのではないでしょうか。
❏ 1年前に伝えたことを改めて書き出してみる
教科・学年で如上の振り返りを行うときは、1年前にどんなことを生徒に伝えたか、改めて書き出してリストにしてみるのが好適です。
書き出してみることで、忘れていたことも思い出しますし、それぞれを伝えたときの「指導に込めた思い」も改めて蘇ります。
伝えた内容にはそれぞれの先生方がアレンジを加えた部分があるかもしれませんが、それらも一度持ち寄ってみると、新年度に伝えるべきことのリストを、より良いものにアップデートできるはずです。
また、書き出して持ち寄り、改めて整えたリストに照らして、各授業/各クラスでどこまで指導の狙いが達成されたかを比べてみましょう。
同じような期待を同じように伝えたはずなのに、1年間の指導の成果に違いが生じているのは、決して珍しいことではありません。
生じた違いの背景には、「どんな伝え方が効果的なのか」「伝えた後の継続的な指導をどう進めるべきか」といったノウハウが存在するはずです。それらを共有することが、教科/学年全体の指導をより効果的なものにするのではないでしょうか。
ただでさえ多忙な年度末に、改めて集まり対面で話し合う時間は取りにくいでしょうが、クラウド上のチャットや電子会議システムなどを使って準備をしておけば、対面での協議も効率よく進められます。
☐ 年度初めに伝えたことは、どこまで「習慣」になったか?
☐ その根付き具合を、どのように観察してきたか?
☐ 生徒自身の振り返りと言語化は、どこまで機能したか?
☐ 伝えておくべき「期待」は、なかったか?
☐ 来年度に向けて、何を、どのように言い換えるか?
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
