家庭学習は、新しい学力観の下、教室でしかできない学びの充実を図るためにも、しっかりとその習慣を形成したいものですが、指導を重ねても、容易には思った通りの成果(家庭学習時間の延伸)が出ません。
授業外で個々に行う「学びの準備や仕上げ」に生徒が十分な取り組みを見せてくれないことの背景には、様々な理由があるはずです。その一つひとつに応じた、適切な対策を取ることで、成果に結びつけましょう。
履行率を高めるべく、昔ながらのペナルティを課しても、その効果は限定的。継続しません。家庭学習への取り組みが改善しない「理由」を複合的に捉え直すところから、改めて効果的な対策を考えるべきです。
まずは、「やらなくても困らない」「やることにメリットが見いだせない」といった状況の打破からでしょう。タスクをこなしても、達成感を得たり、自分の進歩をできなければ、次に向けたモチベーションは生まれません。やっても面白くなければ続かないのが道理です。
2019/11/12 公開のインデックスページをアップデートしました。
適切な対策を講じるには、まずは「問題の切り分け」
・やろうと思ってもできない
・やるべきことが明確になっていない
・机に向かう時間が取れない
・やらなくても特に困らない
・取り組みに喜びが見いだせない
やらせようとしているのは、生徒にこなせること?
対策は、教室を出る前の準備指導と複線的なゴール
何をどこまでやれば必要を満たすか、生徒は把握?
学習範囲に加えて、達成検証可能なゴールを明示
優先順位の判断とタスクマネジメントのスキル
・次の行動への切替に時間が掛かり過ぎる
・優先順位を意識した活動の選択・配列ができていない
学びの成果を持ち寄り、チームへの貢献を果たす
・ペナルティを課しても効果は限定的
・頑張らせるために目標を決めさせるのは矛盾を抱える
・役割を持たせ、チームへの貢献を求める
真面目に取り組んだことの成果を実感できるか
自分の進歩や可能性の広がりを感じ取れる課題か
予習・復習のタスクの妥当性を確かめる「効果測定」
・予習や復習で課しているタスク
・週末や長期休業期間に取り組ませる課題
・平均家庭学習時間の目標値は合理的なのか?
家庭学習時間を伸ばそうとして宿題を増やす戦略が上手く行ったケースもレアです。宿題を与えるときには、「履行率を高める仕掛け」の併用や、提出物の仕上がりに対する評価とフィードバックも必要です。
一部の生徒しか必要ないものを全員にやらせようとすると、こなせない生徒が出現するのは道理。未達成を重ねさせれば、モチベーションが低下していくのは容易に想像できます。複線的なゴールの設定などを軸にした、「学びの個別化」という視点も持つことが求められます。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一