さて、高校で新課程の下での学習指導が始まり9カ月が経過しました。獲得を目指すべき学力像が新しくなった中、現場で頑張る先生方は様々な工夫を重ねて来られたことと拝察いたします。
この間に得られた成果と課題が、4月に始まる新しい年度の指導に活かされてこそ、学校全体での教育活動はより良いものに進化する(=より多くの生徒がより良い指導の恩恵に預かる)ことができます。
❏ 先ずは、ここまでの指導の効果をきちんと測定
ここで欠かせないのが「成果検証」であるのは言うまでもありません。
新しい学力観に沿った評価基準に照らして、指導の効果を測定し、先生方がそれぞれ重ねてきた工夫の中から目標に最も接近できたものを選び出していきましょう。
年度当初に「共通指導案」を作り、それに沿った指導をしてきたとしても、ご担当の先生方が個々に行った工夫やアレンジもあるはず。それが指導の成果に大きな違いを生んでいることも多々あります。
❏ 総合的な探究の時間で得られた成果はより密に
今年度に正式に導入された「総合的な探究の時間」では、ご指導に当たる先生方がそれぞれに備えている指導技術などに、教科学習指導以上に大きな違いがあるのが普通です。
始まったばかりのことなので、試行錯誤の中途なのは当然です。学校独自に設けた「特色ある教育プログラム」も同様でしょう。
生徒の取り組みとそこで得られた成果(=レポートなどの出来栄え)をきちんと(=合理的な観点と規準に照らして)評価することの必要性は言うまでもありませんが、生徒の意識を質すアンケートも必要です。
❏ 所在を明らかにした優良実践を共有する場を確保
効果測定を経て所在が明らかになった「大きな成果を得た取り組みや工夫」を共有する場をゼロ学期の早いうちに設定しましょう。
来年度の指導計画が具体化する前に「好適実践の共有」を完了させておかないと、年度末に向けた多忙の中で、今年の成果と課題が埋もれてしまい、新しい年度も試行錯誤を繰り返すことになりかねません。
実践の共有に際しては、本年度当初に起こした(共通)指導案に朱入れをした「新指導計画案」の形をとった方が、より具体的なイメージも伝えられますし、その場で行う議論の成果も組み込みやすくなります。
また、成果を上げた取り組みの中で作成されたもの(教材や課題、考査問題など)も添えて発信してもらうことが、継承をより確実にします。
成果を示すデータを添えないと、その取り組みへの理解と共感も進みません。それぞれの先生が最善と考える方法で取り組んできた以上、修正を求めるには説得力を持ったエビデンスも必要です。
❏ 一連の流れを年度末までのカレンダーに落とし込む
効果測定から実践共有(引継ぎ)を経て、来年度の計画を固めるまでの工程をしっかり想定し、カレンダーに落とし込めるかが問われます。
これらの「ゼロ学期に進めるべき一連の協働」が上手く回らないとしたら、年度当初にこれらを想定した準備をしていなかったからかも。
新しい年度に同じ轍を踏まないためにも、効果測定→実践共有→指導改善の流れを改めて作り直していく必要がありそうです。
年度末に向けて、本年度の教育活動を通して目指してきたところの仕上げに取り組む必要があるのは言うまでもありませんが、「ゼロ学期」としての取り組みにも十分なリソースを当てなければなりません。
学校全体でのかじ取りは管理職のお仕事でしょうが、分掌、教科、学年の各組織でも、個々の先生方の中でも、次年度のより良い教育の実現に向けた準備を進めていきたいところです。
限られた時間の中、やりたいこと/やるべきことと、出来ることの間にはギャップもあるはず。優先順位をつけて効率よく進める必要は言うまでもありませんが、今年については、新課程の下で始まった新しい教育活動の振り返りと次年度に向けたブラッシュアップが最優先事項です。
※各記事は順次更新していきます。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一