学校評価結果の十分な活用のための実施スケジュール

年度末が近づく中で、本年度の学校評価アンケートの結果の取りまとめが進んでいる学校も少なくないと思います。
学校評価アンケートの集計結果は、本年度の教育活動や取り組んできた改革/改善行動の成果を検証するのに欠かせないデータですが、「今年の総括に使って終わり」ではないはずです。
取り組んできたことの成果に不足があれば、目的に近づくための改善を計画しなければなりませんし、状況の変化で従来と違うニーズや問題が発見されたら、それに応える改革に繋げる必要があります。
次年度の教育活動の設計、年間業行事予定への落とし込みといった工程を考えると「集計結果の分析」はそろそろ完了の目途が立っていないといけない時期ですが、進行状況はいかがでしょうか。

❏ 寄せられた声にしっかり答えるために

年度末の学校運営協議会や理事会で報告をするための資料作り、という意識だけで取りまとめに臨むと、勢い、集計値を並べただけの報告書が出来上がりがちですが、これではアンケートに答えてくれた方々の声に応えたことにはならないように思います。
学校をより良いものにするという目的で、様々な立場の方に評価を求めた以上、寄せられた声に答えて学校がどんな行動を起こすか、しっかり考えた結果を表明し、それらを実現していくことが大切です。
アンケートに回答したことで生まれた「良くなってくれるんだな」との期待は、満たされないままだと不満や不信に転じていきます。
声に耳を傾けることでステークホルダーと良好な関係を結ぼうとした結果が、学校に向けられた不信や期待の低下では残念でなりません。
集計結果の中に解決すべき問題や改善課題が見つかった場合、新年度を迎えてからでは動きが取れないことも多々あります。とりわけ、年間行事予定を配布してしまった後では手詰まりも多いはずです。

❏ 年度末までの工程を考え、逆算でスケジュール作り

学校評価アンケートの実施スケジュールを考えるときには、以下の各フェイズを想定した「逆算」で臨む必要があるのではないでしょうか。

  1. 集計結果の取りまとめ
  2. データを用いた成果検証(取り組みは所期の成果を得たか)
  3. 次に向けた改善課題の形成(何にどう取り組むか)
  4. その解決に向けた計画の立案(担当部署で初案の作成)
  5. 組織内/組織間での調整を経た計画の具体化と周知
  6. 担当組織での準備や体制づくり(不足があれば補完策)
  7. 年間行事予定や指導計画への落とし込みとその公開(新年度早々)

この時期になって今さらそんなことを言われても…、とお感じになった方もいらっしゃると思いますが、如上の問題に直面する今だからこそ、次年度に向けた学校評価のスケジュールを、真剣に、且つリアリティを持って考えられるのではないでしょうか。
学校評価アンケート自体も年間行事予定に組み込む必要があるだけに、この時期に問題意識を持っていただくことは大事だと考えます。

❏ 組織間で方向性を共有した学校全体での教育改善

集計結果の分析を通じて、成果の検証がなされ、次に向けた課題のリストアップができたら、その次にやるべきは、改善課題の間に優先順位をつけることだと思います。
学校評価アンケートの結果が出ると、分掌や学年、教科などの組織に結果をそのまま委ね、それぞれで解決策を考えてもらうという「ちょっと問題がありそうなやり方」が定常化している学校が少なくありません。
これでは、各組織がそれぞれの価値観で優先順位を決めることになり、学校全体としての動きに方向性がぼやけますし、限られた教育リソースを学校の教育活動全体に最適配分するのも難しくなるはずです。
部分最適化が図られても、全体のバランスが崩れては、より良い学校にはならないのではないでしょうか。
管理職と各分掌のヘッドが集まり、学校評価の結果に向き合い、学校が描くグランドデザインの中でどの課題に優先的に取り組むか、しっかり議論しコンセンサスを作りましょう。
各組織に課題を持ち帰ってもらい、次年度の指導計画/行事予定の立案や修正に反映してもらうのは、こうしたコンセンサス形成の後です。
分掌や学年、教科といった組織ごとに、指導を計画し、関係者との調整を図ったり、準備~実施~振り返りまでの全工程をイメージしてガントチャートに落とし込んだりといった工程を経てようやく「計画の完成」ですが、この期限は言うまでもなく「新年度を迎えるまで」です。
学校評価の結果の処理(集計)に、2月を迎えてなお取り組んでいるのでは、ちょっと工程に遅れがあるのではないでしょうか?

❏ 次年度の学校評価の実施スケジュールを考える

既にお分かりいただいていると思いますが、学校評価の結果に基づいてより良い学校作りを継続的に、かつ着実に進めていくには、如上の工程を想定した実施スケジュールを立てる必要があります。
年明けからは、受験生の指導、自校の入学選抜などもあって日々の多忙に拍車がかかる時期ですから、通常期であれば1週間で処理できる工数も2週間の余裕をみなければならないこともあると思います。
こうした事情を鑑みれば、学校評価アンケートの実施は2学期の期末試験のテスト期間に入る11月末というのも「あり」です。文化祭などの行事も一巡しているところですので、年間の教育活動の大半については評価を求めることができる状態になっているはずです。
その後(12月~3月)に行う指導や行事については、それぞれの実施タイミングで、目的に応じた質問内容のアンケートを行うほか、ポートフォリオに残ったリフレクション・ログを材料にした評価もできます。
こうして得られた個々の評価結果は、あらかじめ学校評価アンケートの分析で得たものに加えて後の工程を進めていけば良い話ですので、すべての行事が終わるまでアンケートの実施を待つ必要はありません。
年末~年度末にかけて配列されている指導機会ならば、次年度に向けた計画作りやその修正にも多少なりとも余裕があるはずです。



ちなみに、生徒・保護者などのアンケートは「自己評価」を行うときに参考とすべきものという位置づけです。アンケートの分析で立てた仮説は、その他の調査で得られたデータ(学習時間調査の結果や模試などの成績など)と突き合わせて検証してみることもお忘れなく。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一