学校ホームページでの情報発信(その2)

#02 年間行事予定をベースに学校HPの更新計画

校内外に理解者と協力者を増やし、目指す教育を実現するための土台を作る活動が学校広報であり、学校ホームページはその柱となるもののひとつであることは改めて申し上げるまでもありません。伝えるべきことを伝えたい相手にきちんと伝えるには、情報の収集、編集、発信の各フェイズが正常に機能する必要があります。
計画的に物事を進めることが大切なのは、学校広報もほかの活動も同じです。校内の各組織(分掌、学年、教科)がそれぞれの立場で取り組むことを年間行事予定表に配列して整理をつけたら、その結果に基づいて学校ホームページの年間更新計画もきちんと整えていきましょう。

2015/03/10 公開の記事を再アップデートしました。

❏ ホームページ更新計画の土台は「年間行事予定表」

校内の各組織が計画し実行する教育活動は、年間行事予定に書き込まれるはずです。「はず」というのは甚だ失礼な物言いになってしまいますが、実際にはこの段階から躓きが見えるケースも少なくありません。
校内で行われている教育活動なのに、担当している組織以外はその内容をよく知らない、時には存在すら認識していないこともあります。
行事や指導機会に関する情報が先生方の間で十分に共有されていなかった結果、大切な行事を行っているときに「裏番組」が設定され、生徒はそちらに流れてしまっているといったことも時おり見かけます。
教育活動が各組織に閉じがちで、互いの活動にあまり関心を向けない/関わらない「文化」が残っているようなら、早期に払拭すべきです。
いずれにせよ、年間行事予定に各組織の活動がきちんと表示されていないと、各組織の動きがバラバラになりますし、広報担当の先生がホームページを通して伝える情報をタイムリーに集めるのも難しくなります。

❏ ホームページの更新計画に沿った取材と編集

年間行事予定に掲載されている行事については、生徒が何に取り組み、どんな成果があったか、学校ホームページを通して伝える必要がありますので、行事のたびに取材し、記事に編むことになります。
年間行事予定表を掲載したり、予定を伝えただけでば、それが生徒に何をもたらしたか伝わるはずもありません。学校の意図を並べたり、先生方の見立てを記事にしたりしても、それだけでは「生徒が行事にどう関わり、何を感じたか」は読み手に伝わりません。
公開する記事を起こすには、生徒に取材したりポートフォリオに残されたリフレクションログの精査で材料を集めたりした上で、それをストーリーに編集する工程を踏む必要があるということです。
説得力を持った発信には、データに基づく成果検証の結果も添えたいところ。必要なデータの取得と検証、さらにはその結果を踏まえた善後策の立案なども必要になります。
いずれも後からではどうにもならず、前もっての準備が必要です。
行事が終わるのを待って「さて何を書こうか」というスタンスでは後手に回るばかりです。ホームページの更新計画もきちんと策定して、予めカレンダーに落とし込んでおきましょう。

❏ 過年度の更新記録と新年度の行事予定の照合から

まずは、過年度のホームページの更新記録を取り出してきて、新しい年度の年間行事予定と並べて照合してみましょう。
両方とも、時系列で並んでいますので、突き合わせるのはややこしい作業ではありませんが、この照合をきちんと行うと、次年度向けに学校ホームページの更新計画をカレンダーに落とすのが各段にスムーズです。
ただし、この作業が可能になるのは、ホームページを更新するたびに、更新の記録を「新着情報」などに残して蓄積する態勢が取れている場合だけです。もし、更新記録を残すことが習慣化していないようなら、次年度以降に向けてルールをきちんと決めておきましょう。
実際には、目先の更新作業を完了させることに気を取られてか、更新の記録をきちんと残していない学校もかなりの割合にのぼります。
その場合、トップページからすべてのリンクを辿り直し、何が掲載されているか特定するという面倒な作業から始めなければなりません。
定期的に更新されているサイトマップがあれば多少なりとも整合性のある作業ができますが、そうでない場合はFTPソフトなどでディレクトリを開いてファイルをひとつ一つ確認せざるを得ません。
こうなると、力技ですね。アルバイトを頼むか、外部の業者に依頼するか、先生方の負担が余計なところで増えない方法を考えましょう。

❏ ホームページに掲載する情報の取捨選択

多忙が続く中、教育活動の実施に時間を取られ、ホームページでの情報発信まではなかなか手が回らないというのも現実かと思います。
教育活動そのものとその成果や進捗を伝える広報活動を比べたら、前者が大切、優先すべきは日々の教育活動との考えは否定しません。
しかしながら、手元にある学校評価アンケートのデータは、どの学校も例外なく「情報発信が十分で、教育意図や生徒の様子をしっかり伝えているほど、個々の教育活動やその成果に対する評価が高い傾向」を示しています。

学校広報に割り当てられる教育リソース(担当者数✕投入時間)には限りがありますので、なんでもかんでも発信する必要はありません。「どの情報を発信するか」「何をホームページに掲載するか」は、戦略的に取捨選択する必要があるということです。

❏ 大きなエネルギーを注ぐ活動こそ、しっかり発信

教育実践に投じているエネルギーとその情報を伝える活動に投じるエネルギーが、ある程度まで比例しているのが好ましい状態だと思います。
自分たちの組織が担当している仕事のうち、心血を注いで充実を図っているものこそ、これまでの取り組みと成果、今後の展望を発信することに十分な力を入れましょう。
何も、先生方が仕事を増やして負担を抱え込むばかりが方法ではないはずです。生徒会の行事や活動は、発信に生徒も関わらせても良いのではないでしょうか。(cf. 生徒が作る、受験生向けの学校広報誌
他者を魅了する行事を企画する力、その価値を伝える表現の力などは、行事に関わらせる中で生徒に獲得させていきたい能力のひとつ。そうした力を養い発揮する機会を与えるのは教育的にも有意義だと思います。

❏ 情報漏れを少なくするための工夫

すでにご理解いただけていると思いますが、学校ホームページでの情報発信を戦略的、且つ効率的に行うには、更新計画をカレンダーの形に書き出しておく必要があります。
新年度を迎えるまでに、掲載する項目を選び出し、一つひとつに発信の時期と発信元を明確にしておきましょう。下図のように担当組織ごとにカラムを分けた表示にすれば、点検も容易で見落としも防げます。

画像


如上の書式を用意して、各組織にそれぞれ担当する行事を入力してもらい、提出されたものをマージすれば暫定版は出来上がりです。
学校のグランドデザインや学校説明会で力説したことが、きちんと発信の計画の中に組み込まれているか、保護者や地域が欲しがっている情報がきちんと伝えられるかを点検したら、決定稿の完成でしょうか。
ちなみに、成果を伝えるフェイズでは、どのようなデータと指標を使って成果を示すエビデンスとするかも検討しておきたいところです。

その3に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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