社会の変化が加速する時代にあって、様々な研究者が予測していたことが現実に近づいていることを実感します。曰く、
2011年に米国の小学校に入学した子供の65%は大学卒業時に今はない職業に就くだろう。
(ニューヨーク市立大学キャシー・デビットソン教授)
今後10~20年程度で、米国の総雇用者の47%の仕事が自動化される可能性が高い。
(オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン教授)
将来の夢を早くから決めて、その実現にまっしぐらに突き進ませるという進路指導の在り方は、大きなリスクがあるのではないでしょうか。
進路指導の場で今でも時々耳にする「頑張らせるために目標を決めさせる」というやり方も、どこか本末転倒な気がします。
目標を見つけられないでいる生徒は、「早く決めなければ遅れをとってしまう」というプレッシャーを感じ、脇見をしたり、立ち止まって一つの課題にじっくり取り組む中で自分に向き合う余裕をなくしていないでしょうか。
進路を選ぶ過程の中でじっくり考えることを通じて、選択の力を身につけさせることも進路指導における重要な目的であるずです。
そんな観点で、従来とは異なるアプローチでの進路指導・キャリア教育について考えてみました。
2015/03/03 公開のシリーズをアップデートしました。
社会の変化が加速するとの予測は現実に
計画的偶発性理論~予期せぬ偶然との出会い
興味を追究する行動の中でこそ開ける未来
身近なところを起点に社会の営みを広く知る
グループワークで情報の共有と発想の交換を促す
知るところが広がったら、学部・学科、学問研究へ
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将来やりたいことが見つからないことを悩みにしている高校生は少なくありません。「あらかじめ正解が用意されているはずである」という誤った前提が起点になり、「それが自分には見つけられない」という不要な呵責を生み出します。
履修科目選択や文理分けなど、選択を迫られるなかで焦りやいらだちを感じることも多いでしょう。
立ち止まっていると想像力が変なふうに働いて、不安だけが大きくなります。一歩を踏み出し行動を重ねるうちに、不安は消えて代わりに期待や展望が生まれてくるということを、進路選択に向かう生徒に伝えていきたいと思います。
高校生にとって職業は、大学のさらにその先にある「2つ先の世界」です。先に進んでからでなければ本当の姿は見えないのが当然です。
大学を卒業する4年後ですら、今とは状況が大きく違っている可能性が大であることは、前提となければなりません。
まずは、今見える範囲のものにしっかりと目を向けること、立ち竦んでいるぐらいなら歩き出してみる(調べたり、話を聞いたり、実際に見に行ったりするという行動を起こす)ことだと思います。
しっかり考えさせる前に選ばせてしまっては、その先に見えるものが限定されてしまします。「選択を急がせないこと。そして、急ぐ必要はそれほど差し迫っていないことを伝えること」──これこそ、指導に当たる私たちが常に意識しておくべきことだと思います。
最後にクランボルツの言葉をお借りして。
- 想定外の出来事があなたのキャリアに影響を及ぼすことは避けられない。
- 現実は、あなたが考える以上の選択肢を提供しているかもしれない。
- いろいろな活動に参加して、好きなこと・嫌いなことを発見するために、どんな活動にも積極的に取り組みましょう。
- 間違いを犯し、失敗を経験しよう。間違いや失敗は重要な学びの経験となり、それが予想以上によい結果に結びつくこともあります。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一