面談指導を成功させる#2~気づきを整理し記録させる

面談指導は、生徒がそこまで積み上げてきた思考を対話を通じて相対化させ、これから先の行動に課題を設定させる場です。

  • 年間指導計画の中で「機会ごとの目標」を明確にしておくこと
  • 面談を前に指導に当たる先生方が情報を担任に集約しておくこと
  • 面談に臨ませる前に生徒側でのレディネスを整えさせておくこと

といった前稿に挙げたポイントに加えて、

  • 面談の目標や狙いがどこまで達成できたか評価した上で、
  • 次の機会までの課題を明確にし、やり残しをいつまでも残さない

ことなどもしっかり意識しておきたいところです。

2014/11/14 に公開した記事を再アップデートしました。

❏ 持ち越す課題を洗い出し、生徒自身に整理させる

どんなに周到に準備して面談に臨んでも、持ち越しの課題を残さず所期の目的のすべてが達成できるとは限りません。
面談を通じて実現、達成しようとしたことに「足りないもの」が残ってしまったら、その補完を図る機会をどこかで設ける必要があります。
年間計画にそって進路指導が進められていく以上、次の選択がどんどん迫ってきますから、いつまでも先送りすることはできないはずです。
面談を終えるに当たり、「今の段階でのやり残しは何か」を生徒自身に気づかせ、整理しておく必要があります。
その場での生徒の気づきに不十分と思われる節があれば、問い掛けを通じて認識の深化を支援しましょう。
先生からの見立てを一方的に伝えるよりは、生徒自身が面談で話し合ったことを振り返り、今後のタスクを書き出す形を取った方が、将来を考えた主体的・自律的な行動選択に繋がるはずです。

❏ 面談記録は生徒自身に起草させてみる

如上の「面談の振り返り&次に向けた課題形成」を促すには、生徒自身に面談記録を起草させるのが好適です。
面談記録は先生が書き起こすのが一般的かもしれませんが、実際に生徒に記録を起こさせて提出させてみると大きな効果が期待できます。
生徒自身にとっても、振り返りと言語化を通して、新たに考えるところ/気づくところがあるはずです。

指導側でも、提出してきたものを読んでみると、伝わったと思っていたことがちっともピックアップされていなかったり、こちらの見立てと全く違うところに生徒のこだわりがあったりすることもしばしばです。
そうしたギャップは放置するわけにいきません。次の面談を待って改めてじっくり話し合うか、それまで先送りできないのであれば、どこかで声をかけて対話のチャンスを作るようにしましょう。

❏ 面談前に記入させた調査票に加筆させ、変化を把握

面談に臨ませるときは、事前に調査票(面談シート)の記入を求めているケースも多いはずです。
記入しながら生徒はそこまでに考えたことを整理できますし、先生も記入されているものを手掛かりに対話を深めやすくなりますので、そのメリットは小さくありません。
せっかくなので、如上の面談後の振り返りは、生徒が記入した調査票に加筆させる形で行わせてみては如何でしょうか。
事前に自分で書いたことに照らしながら、先生との対話を通して新たに気づいたことを書き加えたり、それまでの考えに朱入れをして修正する中で、内省が深まるチャンスが訪れます。
先生の側でも、面談後に新たに書き加えられた部分を読むことで、指導の成果や生徒の成長/進歩を効率よく確認できます。

❏ 振り返りを経た面談記録の蓄積がポートフォリオに

面談後の振り返りを経て加筆を終えた面談シートをファイリングしていけば、進路意識の形成プロセスを時系列で追えるようになります。
今後の大学入試では、志望理由書や学習計画書といったものも提出が求められますが、それらを起草しようとするときの材料もファイル/ポートフォリオの中に蓄積されていくはずです。
ポートフォリオに何を記録し、どう活用するかでも申し上げましたが、レコードを生徒自身が入力する/書き込むことの教育的効果は小さくありません。
タブレットなどを生徒に持たせているなら、そのまま電子的に管理することもそれほど高いハードルではないと思いますし、その他の活動記録を面談中にも参照できるのは大きな利点です。

❏ 面談記録の起草が、冷静になって考える時間を作る

面談中に問い掛けを通して生徒が見落としてきたことに気づかせたら、暫く時間を与えてじっくりと再考させましょう。
面談シートを持ち帰らせて記入/加筆させることは、その「時間」を自然な流れの中で作り出してくれるはずです。
調べや考えが足りないまま間違った方向に進もうとしているなら、間違いに気づかせ踏みとどまらせることも大切ですが、その場で頭ごなしに否定してもブーメラン効果で却って頑なにさせるのがオチです。

ましてや生徒なりに時間をかけて考えてきたことなら、面談の短い時間で翻意させるのは無理というものではないでしょうか。
先回りして正解を与えるだけでは「選択の力」は育めませんし、他人が決めたことには達成に向けた強いコミットメントも期待できません。
時には、明確な指示の形で助言を与える必要もありますが、本人のうちに芽生えた意志を後押しするときに限らないと、同じ結論も「自分が決めたこと」ではなく、「先生が決めたこと」になってしまいます。
その3に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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