新しい学力観に基づく評価方法(記事まとめ)

どんな道程を辿って目標に導くかは「地図」に相当するカリキュラムや指導計画に描き出されていたとしても、今どこにいるかを知るすべ(=評価)がなければ、この先をどう進めば良いか、判断がつきません。評価は「生徒の学習を改善し、成長させる」と同時に「指導の効果を測定する」ためのもの。適切な評価なしに、指導の改善はあり得ません。指導と評価の一体化を図ることはまさに急務。学びの多様な側面にきちんとモノサシを当て…

論理的思考と批判的思考

別稿「指導と評価の一体化~実現のための発想転換」で書いた通り、生徒の学力を伸ばすにも、評価(学習状況の改善[≒学力の向上]とそれを支える指導の改善を図るためのもの)を行うにも、伸ばしたい学力を構成要素レベルで明確にしておく必要があります。漠然とした捉え方をしていては、それらを発揮させる場としての課題や活動をきちんと選び出せませんし、評価の基準もブレてしまいます。学力の重要な部分をなす「思考力」にも…

失敗から正しく学べているか

昔から至るところで「失敗から学ぶ」という言葉を耳にしますし、口にもしますが、失敗から正しく学ぶには、相応の「失敗への向き合い方」を習得しておく必要があろうかと思います。教室での生徒の言動にそうした姿勢と行動がきちんと見て取れるか、注意を向けておきましょう。失敗をしたときに、きちんと振り返りを行い、その原因を見つけ出し、次の機会にどう修正して臨むかを考え出せれば、より大きな成功の確率が見込めますし、…

指導と評価の一体化~実現のための発想転換(後編)

前編では、「指導と評価の一体化」を図るには「授業のデザイン/指導計画だけを先行して考え、実践し、評価はその場に臨んでから考える」という従来からの発想を離れる必要があるとお伝えしました。各単元(あるいは内容のまとまり)で獲得を図った能力や資質を評価するために課題や活動を整えているなら、それらを指導時間の枠に収めて適切に配列することで、指導計画のフレームは出来上がります。評価のために設ける「能力や資質…

指導と評価の一体化~実現のための発想転換(前編)

新課程への移行でこれまで以上に求められるようになった「指導と評価の一体化」ですが、その実現は、口で言うほど簡単ではないようです。両者の一体化には、それぞれを行うときの発想や観点が一致していることが大前提。指導計画作り/授業デザインを考えるときに、評価の機会と方法も併せて想定しておかなければなりませんが、2つのことを同時に考えるのでは、思考は複雑になり、まとまりにくくなるものです。指導と評価では、こ…

ゴールデンウイークの休業について(お知らせ)

平素より格別のご高配を賜り、誠に有難うございます。4月も下旬を迎え、すっかり初夏の趣ですが、先生方におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。市内の公園では藤棚が見頃を迎えました。昨日、用事の帰りに立ち寄ってみましたが、今年も中々見事に姿です。(拝島の藤:外部リンク) さて、間もなくゴールデンウィークです。当オフィスは以下の期間の業務をお休みさせていただきます。 4月27日(土)~5…

探究活動、課題研究

1 横断的・体験的な調べ学習の先にある探究活動 1.1 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり ★ ・資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に ・探究活動の課題~調べ学習との境界と進路への接点 ★1.2 探究活動の目的から考えるテーマ選び ★ ・探究テーマに偏りは生じていないか ・知りたいから始める探究テーマ選び1.3 中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」1.4 『TO…

調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり

探究活動や課題研究のプログラムを作って導入し、生徒に取り組ませるとき、「何を目的とする活動か」という根源の問いに先生方がどのような答えを共有しているかはとても大事なことだと思います。探究活動には様々な役割がありますが、以下の2つは他の活動での代替は困難です。 指導に当たる中、「調べ学習」で終わっている生徒、そこにも到達していない「検索&コピペ作業」だけで調べ終えた気になっている生徒を見過ごしてしま…

具体的なタスクを通して、作法を学ばせる(探究活動)

各地の学校で探究活動や課題研究の成果発表会を拝見していると、自らの興味を掘り下げ、リサーチクエスチョンを立て、きちんと探究のプロセスを踏んで答えを導いた後に、自分の生き方・あり方まで踏み込めているものも多々見かけますが、そうでないものも少なからず…。先行研究を拾い上げ、そこに書かれていたことを繋ぎ合わせただけに見えるものもあります。高校で体験する探究活動は「どんな研究成果が得られたか」より「各プロ…

教科学習指導と探究活動の重ね合わせ

探究活動にしっかり取り組ませるには、所謂「探究の方策」に加えて、その土台となる様々な力を養う必要があります。「情報を集め、必要な知に編む力」「理解したことをもとに考える力」「問いを立てる力/問題を見つける力」などはいずれも探究を進める上で不可欠なもの。こうした力は一朝一夕に獲得できるものではなく、日々の教科学習指導の中で学びを重ねさせて、時間をかけて培っていくべきものでしょう。指導機会の限られる「…

実践報告に触れての気づきを言語化することの効果

より良い授業の実現を目指し、全国各地で様々な指導法研究や実践報告が行われています。ご参加の先生方からの意欲的な提案や報告にいつも大きな刺激をいただき、たいへん勉強になります。 各地の先生方が、それぞれの置かれた状況の中で「あるべき学びの姿」を考え続けて生み出してきたアイデアの数々は、それに触れた人が授業をデザインするときの手札を増やし、それを使ってさらに工夫を重ねた実践はまた別の機会で報告され、別…

優良実践に触れたのに改善が進まないのは?

模試や外部検定などのテスト、ルーブリックを用いた活動評価、さらには生徒による授業評価アンケートの結果などから、優れた実践(=有為な学びに大きく寄与した指導)の所在を特定し、それを共有することが組織的な授業改善を進めるときの「基本」です。共有したものは、先生方の協働で更なるブラッシュアップを図ったり、他の手法と組み合わせたりして、より大きな成果が見込めるものに仕立て直していきたいところです。 しかし…

結論を出さずに終える授業

授業の終わりは「今日の授業の内容をまとめて」というのが定番のスタイルかもしれませんが、ちょっと発想を変えて、問いに答えを出さずに次の授業につなぐというやり方はいかがでしょうか。授業を「復習→導入→展開→演習→まとめ」という固定的な構成で考える必要はありません。結論を与えてしまうことで学びや思考を締め括らず、問いをオープンにしたままま授業を終えることが、生徒に考え続けさせることにつながることだってあ…

終了時の工夫で成果を高める(記事まとめ)

同じ教材を用い、同じ展開で授業を行ったとしても、授業を終えるときのアクションや教室を離れて行わせる学びの仕上げのあり方しだいで、学習効果は大きく異なります。授業を進めて、教科書の予定のページまで終わったからと言って「ほっ」としている場合ではありません。以下のそれぞれの場面で、押さえるべきところをしっかり押さえていたか、これまでのご指導をときどき振り返ってみるのも良さそうです。 2016/08/31…

進路希望の具体化と実現へ

1 選択の機会ひとつひとつに備えさせる 1.1 大きな分岐(選択の機会)を前に整えるべき指導機会 ★1.2 先に控える選択の機会をいつ認識させるか1.3 進路の手引きは冊子よりもファイリング形式で ★1.4 準備が整わないうちに選択を迫っていないか 2 進路希望の実現をあきらめさせない 2.1 どこまで伸びるか見立てる2.2 第一志望をあきらめさせない指導2.3 受験期は、またとない成長の好機 ★…

今日の授業でどんな気づきがあったか

授業終了のチャイムが間もなくというタイミングで、生徒に「今日の授業でどんな気づきがありましたか」と尋ねている先生がおられました。いつものことなのか、生徒は戸惑いも見せず、ササっとノートに鉛筆を走らせ、書き終えるとすぐに隣同士で見せ合います。授業のルーチンの一部として「学びの振り返り」が習慣化しているようでした。日々の授業で「本時に得た気づき」を言語化することを習慣づけておけば、授業中に得る瞬間ごと…

学びの成果をたな卸し

傍から見ても、入念に練られた授業できちんと学びの成果が出ているのは明らかなのに、生徒がその成果を実感できていないことがあります。伸びている実感を欠けば、頑張り続ける意欲も維持できません。「科目を切る」という選択で進路の可能性を狭めてしまう生徒も出てきます。学習を通じて進歩を感じ取って頑張っていれば、その先には新たな興味も生まれ、学びへの自分の理由も持てるようになってくるはずです。授業の改善を図ると…

質問を引き出す~学びを深め、広げるために(続編)

前稿「質問を引き出す~学びを深め、広げるために」で書いた通り、質問を見つけ出して文字に起こすことを求めたら、生徒はノートや教科書を見返して「疑問点」や「その先を覗きたい箇所」を探し始めます。漠然とした「よくわからない」に止まっていては、質問の形での言語化はできませんので、否が応でも「何がどうわからないのか」を明らかにせざるを得ず、その中で学びはより深く確かなものとなっていきます。同時に、対象を精緻…

質問を引き出す~学びを深め、広げるために

ひと通りの学習を終えた場面で生徒に質問を考えさせれば、そこまでの学びを振り返らせることができます。質問を考えさせるのは、生徒に問いを立てさせることに他ならず、教材に深く関わる好機になります。しかしながら、「質問はありませんか」と声を掛けるだけでは、その後の展開は期待薄でしょう。もともと積極的な生徒が手を挙げてくれたとしても、他の生徒は押し黙ったまま時間が過ぎるのを待っています。生徒からの質問があれ…

令和6年度も宜しくお願いいたします。

新年度となりました。お陰様で当オフィスも、開業から丸10年を迎えます。ひとえに皆様のご厚情の賜物と、衷心より御礼を申し上げます。気持ちも新たに、現場の先生方の実践から学び、少しでもお役に立てるよう、できる限りを尽くして参る所存です。今後ご指導を賜る機会もますます多くなるかと存じますが、何卒宜しくお願いいたします。年度当初の数週間は、先生方におかれましては、特にご多忙を極める時期と拝察いたします。く…