課題(教材)のシェアから始める組織的授業改善
より良い授業の実現を図るには、習ったことを使ってみる機会(=授業を通じて獲得した知識や理解を用いて答えを導くべき問い)をしっかり用意する必要があり、それらが学習目標の理解や学びの仕上げに正しく利用できているか、生徒の学力向上感との間で散布図を描いてチェックしてみるべき、というのが一昨日と昨日の記事の趣旨です。 ❏ 紙の上に固定できることは議論の進めやすさ どのように授業を進めていくかは、教科の中で…
当オフィスは、各地の学校で授業力向上や教育改善・学校改革のお手伝いをしています。
より良い授業の実現を図るには、習ったことを使ってみる機会(=授業を通じて獲得した知識や理解を用いて答えを導くべき問い)をしっかり用意する必要があり、それらが学習目標の理解や学びの仕上げに正しく利用できているか、生徒の学力向上感との間で散布図を描いてチェックしてみるべき、というのが一昨日と昨日の記事の趣旨です。 ❏ 紙の上に固定できることは議論の進めやすさ どのように授業を進めていくかは、教科の中で…
学習場面での「振り返り」は、学びへの目的意識を持った/主体的な取り組みを生徒から引き出し、学習者としての自立に向かわせるために欠かせないものですが、振り返りという行為そのものがメタ認知を用いた高度な知的活動であるため、何の準備指導もなくやらせてみたところですべての生徒がきちんと/的確に行えるわけではありません。的確な振り返りができる生徒を育てるには、トレーニングの機会とその都度与える先生からの的確…
2020年に迫る高大接続改革に備えてこれまでに何年もかけて積み上げてきた準備を土台に、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が図られているものと拝察しますが、同時に、学力形成の中間検証手段である定期考査もそれに見合ったものに更新されていかなければなりません。次に控える定期考査までに、教え方と測り方の双方がきちんと更新できたか、ご自身で/教科の中で確かめておく必要があると思います。生徒は考査問題に合わ…
教科学習指導の目的は、各科目に固有の知識や理解を形成することに止まらず、その教科・科目の学び方を身につけさせることや、論理的に物事を観察し、思考を積み重ねる方法を学ばせることにもあります。前者には、「学習方策は課題解決を通して身につく」「自ら学び続けられる生徒を育てる」という姿勢で授業に臨む必要がありますが、後者には、先生からの問い掛けを起点にした問答を重ねることが最も有効な手段の一つであると考え…
問答を通じた論理性・思考力の涵養は、すべての科目を選ぶことなく学ばせられる高校のうちにこそ推し進めたいところ。様々なジャンルを対象に思考の訓練を重ねた方が、より汎用性の高い力が得られます。しかしながら、生徒の思考を引き出しながら問いを重ねようと、ただ発問を増やしてみても、生徒の反応が鈍いままというケースも少なくありません。「正解を言い当てることではなく、自分の考えを言葉にすること自体が求められてい…
生徒に論理性や思考法を身につけさせる最上の方策の一つは、先生との問答(対話)です。問いを投げかけ思考させ、考えたところを言葉にさせることで、思考そのものやその土台となる観察の欠落に気づくことができます。外からの問いによって、それまでの考えを相対化させることは、より合理的な答えに近づくために欠かせないものだと思います。 2015/04/22 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 考え方そのものを身…
学校は様々な教育活動の集合体として成り立っていますが、相補関係を考慮しないで個々の教育活動を設計すると、部分最適化は図られても、リソースの最適配分という視点が欠落することもあります。新たな要請に応えて足し算(増築)を繰り返し、教育活動を膨らませていくばかりでは、リソースの枯渇は免れません。積み上げてきたものを振り返り、その先を描く中で、新しいものに置き換えるのが好適か、以前からのものを磨き上げるべ…
先生方の多忙はもはや限度を超えており、業務の削減と効率化は先送りできない課題の一つです。多忙の原因には、制度改革を必要とする構造的なものと、現場レベルでの仕事の進め方しだいで解消を図りえるものとがあります。構造的な問題の改善を急がなければならないのは当然として、同時に、日々の教育活動に改善の余地がないかを洗い出し、ひとつひとつ片づけていきたいところです。制度改革で構造的な問題に解決の筋道がついても…
高大接続改革について耳目にする機会は多いですが、小中高の教育活動の異校種間接続についてはそれほどでもないように思います。生徒が小中高で学ぶ12年間にわたり、指導目標や学ばせ方などが連続性を以て段階的にきちんと配列されていることは、その間の教育活動の無駄や矛盾を取り除き、成果を最大化するための絶対要件です。学習指導要領の上で整合性のある学びが設計されていても、それぞれの校種の先生が現場での経験に照ら…
授業公開を機に行う小中校教員の意見交換、出前授業、考査問題やレポートの閲覧など、異校種間の連携を通じて授業の改善や指導計画の最適化を図る方法をご紹介してきましたが、もう一歩踏み込めるようなら検討してみたいのが、「考査問題の作成(=到達目標の設定)における協働」と「数年後の状態と照らした分析(コホート研究)」「総合的な学習/探究やキャリア教育の接続」です。いずれも、現場の先生の負荷が小さくありません…
校種間の学びを正しく接続するうえでの問題の一つは、下級学校が取り組んだ教育の成果を上級学校が正しく踏まえきれていないことにあるのではないかと思います。生徒が小中学校で体験してきた/達成してきたことを高校の先生方がこれまで以上に知る機会が必要と考えます。小中学校を訪ねて成果発表会や作品展示を見るたびに「こんなことまで出来るのか」と感心させられます。相互参観や研究協議、出前授業などを通して上級学校での…
授業改善を目的として小中高の校種間連携で行う取り組みには、授業公開+研究協議という形以外にも、別校種に出向いての「出前授業」というのもあります。小学生や中学生に現在の勉強の先にあるものを体験させ、学びへの意欲を高めるというのが本来の目的ですが、普段と違う校種の生徒に教える苦労の中に多くの気づきがあるものです。 2014/05/16 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 出前授業を請け負うことでの…
校種間での学びの接続に大きな効果が期待できる「異校種間の先生が協働で行う授業研究」ですが、高校にとっては自校の教育活動への理解者と共感者を地域に増やす絶好の機会にもなり得ます。生徒募集の改善のみにならず、目指す教育を実現する土台作りにも繋がる活動ですので、場の創出・提供には積極的に取り組みたいものです。新たに開催を企画するとなると準備段階での負荷も小さくありません。研究授業や教員による相互参観など…
異校種の授業を参観する機会はどのくらいあるでしょうか。育てている生徒が進学後にどんな学びに挑むのかを知ることや、迎え入れた生徒がどんな学びを経験してきたかを知ることは、どんな力を獲得させるべきか、何を前提に指導を設計すべきかの判断の際に欠かせないものです。学習指導要領がこれまでにない大きな変更を受けた以上、お隣の校種で何をしているかは、改めて確認しておく必要があろうかと思います。中高一貫校なら中学…
以前の記事でも書きましたが、英語は目的科目から手段科目へと立場を変えていくように思われます。ある程度の基礎(言語材料の理解)を身につけた段階では、他教科を学ぶ中で様々な内容の文章を読んだり、考えたことを表現したりする機会をどんどん作ることが、言語能力の向上を促すはずです。同じ言語系教科である国語も同様かもしれません。所謂「イマージョン・プログラム」(1960年代にカナダで始まった目的言語で他教科を…
学校の裁量が拡大され、各地で特色ある教育活動が展開されるようになりました。単位制や総合学科は言うまでもなく、普通科でもコース制を取ったり、独自の教育プログラムを整備したりと様々な価値を打ち出そうとしています。それなのに、”外野”からは、やれ普通科は画一的だ、生徒の意欲が高まる内容になっていないといった批判が届きます。そうした批判をうち消せないでいることの背景には、各校が打ち…
先週、「授業に集中してる? 生徒の脳、活動量をセンサーで計測」という記事を朝日新聞で見つけました。東京大学と横須賀の三浦学苑高校が協働で行なっている実証実験です。脳の司令塔と言われる前頭前野の活動量を調べるセンサーを生徒のおでこに付けて、授業中に生徒の脳がどれだけ活発に働いているかをリアルタイムに把握するとのことです。 ❏ 脳の活動量がリアルタイムに測定できることの恩恵 先生の話を聞いているとき、…
記事に起こすタイミングを少々逸してしまいましたが、政府の教育再生実行会議が高校生の7割が通う普通科の改革を求めているそうで…。教育内容が画一的で生徒の意欲が高まる内容になっていない、との批判からスタートした議論のようですが、高校現場がこれまでに重ねてきた取り組みをきちんと理解した上での議論なのか大いに疑問を感じます。 ❏ そんなに早く、人のタイプを分けても良いの? 高校普通科を、重視する教育内容に…