「正解ありき」で教えていないか?
問題の解き方などを説明するとき、当然ながら、先生方は答え/正解も知っていますし、そこに辿り着くのに最適なルートも分かっています。そのため、うっかりすると「ここに補助線を引けば、〇〇の公式が使えます」「空所に〇〇を補えば、こういう構造ができて…」といった解説をしてしまうこともたびたびではないでしょうか。このやり方では、スマートに問題を解いてみせることはできても、生徒が初見の問題に対して「見通しを立て…

当オフィスは、各地の学校で授業力向上や教育改善・学校改革のお手伝いをしています。
問題の解き方などを説明するとき、当然ながら、先生方は答え/正解も知っていますし、そこに辿り着くのに最適なルートも分かっています。そのため、うっかりすると「ここに補助線を引けば、〇〇の公式が使えます」「空所に〇〇を補えば、こういう構造ができて…」といった解説をしてしまうこともたびたびではないでしょうか。このやり方では、スマートに問題を解いてみせることはできても、生徒が初見の問題に対して「見通しを立て…
生徒から「説明はわかりやすい」「とても面倒見が良い」「訊けば何でも答えてくれる」と言われて悪い気はしませんが、「自ら学び続けられる生徒を育てる」という目的に照らすと、如上の評価を受けたときの心地よさに胡坐をかいてばかりはいられない気がします。もしかしたら、学習者としての自立にブレーキをかけているかもしれません。頼りになる先生が目の前にいるときは良いですが、やがては手放し巣立たせる生徒です。一人にな…
教室を覗いてみると、同じ授業なのに生徒のノートの取り方は実に様々です。おざなりなノートの取り方に「あとで復習するときにわかるのかな?」と心配になることもあれば、先生の板書は綺麗に写し取っていても、それ以外まったく書き込まれていない(=本人の思考の痕跡が見て取れない)ノートも少なからず見かけます。その一方、同じ教室にはしっかりと整理されたノートに、散在していた情報をきちんと集め、構造化している生徒も…
メモに起こす内容には、2つの種類があります。ひとつは、相手の発言などを記録するもの。講義を聞きながら大事だと思ったところをノートやレジュメの余白に書き込むのはどなたも行っていると思います。もう一つは、相手の発言に触発されて、自分が感じたこと/考えたこと/思いついたことなどを文字に起こしたもの。こちらは、メモに残しておかない限り、後で思い出せなくなったら復元のすべがありません。その場で得たせっかくの…
ノートの取り方は、生徒が身につけるべき様々な学習方策の中でもかなり重要度の高いものだと思います。先生が板書したものを整然とノートに写し取っているだけで「よし」としてはいけません。自分で工夫してノートを取れるようになるというのは、生徒の内に「考えながら、人(=先生や周囲の生徒)の話を聞く力」「気づきを言語化できる力」「情報を自力で構造化できる力」が養われてきたことを意味しますので、学習者としての自立…
ICTの導入が進む中、利用法にも各地で様々な工夫が重ねられ、新しい学ばせ方の可能性が次々と拓かれています。コロナ禍でのオンライン授業を機に、教室での対面授業でのICTの活用に大きく弾みがついたとのお話は方々でお聞きします。ICTに限ったことではありませんが、すべての教具は「学習活動を膨らませる/充実させるため」に用いるもの。ICTの導入は、これまで余計なところに使っていたエネルギーを節約する「効率…
ICTを活用すべきシーンには、前々稿の「伝達」、前稿の「調査」に加えて「対話の場面」があります。「対話的な学び」に期待されるところの大きさは、ここで改めて申し上げるまでもありませんが、生徒が互いに顔を突き合わせて行うものだけが対話ではありません。対面以外の環境で実現する対話的な学びだってあり得ます。他の生徒が作り上げた「答え」を見て得た気づきをもとに、改めて自分の答えを作り直してみることもまた、間…
前稿では、ICTの活用シーンのうち「伝達」を目的とする場面について考えるところをまとめました。本日は、必要な情報を(信ぴょう性を確かめながら)集める「調査」のフェイズについて考えます。学びを進めながら、情報を集め、知に編む作業はICTを活用することで拡張が容易。もっと言えば、ICTなしには出来ることが限定されてしまいます。日々拡大するインターネットという「超巨大図書館」を上手に/正しく活用させて情…
この夏もまた、あちらこちらのセミナーや講演会などに参加させていただき、大いに勉強させていただきました。刺激的なお話を方々でお聞きすることができ、これからやるべきことがまた少し見えてきた気がいたします。こんなところで何ですが、改めて心より御礼を申し上げます。 オンラインでの開催が多く、運営の皆様には例年とは違ったご苦労も多かったと思いますし、講演された先生方にも参加者の反応が読めない中で、不特定多数…
タブレットPCが導入されている教室もどんどん増えています。黒板に書かれたものを生徒がノートに書き写す光景が、教室で見られなくなる時代も遠からずやってくるかもしれません。そんな時代に逆行することを申し上げるようで恐縮ですが、手を使って書き写すことの大切さを、もう一度改めて知るべきではないかと考えています。 2016/03/14 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 映示して見せたものも、ちゃんと観…
昔からよく言われることに、「板書を増やすと、生徒は写すことばかりに気を取られ、学びの姿勢が受け身になる」というのがあります。この指摘には納得できる部分もなくはありませんが、「板書が多いこと自体が思考を妨げる」というのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。 受け身の姿勢が強調されたり、自ら考えようとしなくなったりする要因は、板書の多さではなく、板書の仕方、板書に至るまでの進め方にあると思います。実際…
探究活動などに限らず、日々の授業の中でも生徒がプレゼンテーションに取り組む機会が増えています。小学校からの蓄積もあってか、中高生のプレゼン力は確かに高まっていると感じますが、プレゼン後の質疑応答では、ほとんど質問が出ないか、たまに質問が出ても散発的でそこから議論に展開するような場面はめったに見かけません。プレゼン力だけでなく、「質問力」を高めることに注力した指導の設計が必要ではないかと感じています…
ここで改めて申し上げるまでもありませんが、新課程への移行に伴って「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点での学習評価が行われるようになります。文科省が示した指導要録(参考様式)にも、各教科・科目の観点別学習状況を記載する欄が設置されています。指導要録に、評定とともに観点別学習状況が「AAA」といった具合に記録として残る以上、評価結果に対する説明責任は、これまで以上に…
探究活動に取り組ませるとき、最も重要でありながら、上手くいかないことが多いのが「研究テーマの設定」「問いの立て方」だと思います。導入指導で探究活動が目的とするところをしっかり理解させておかないと、探究の手順をきちんと踏まえることもできず、自分と社会の接点を探すことにもつながらない、興味本位に走った「趣味・道楽の延長」を抜け出せていないテーマを設けてしまう生徒も出てきます。探究を通して答えを見つける…
大学入試問題では、複数のテクストを取り上げた問題が見られるようになり、注目を集めています。今年の大学入学共通テストの国語でも小説の本文と併せて、当時の新聞に掲載された批評が資料として与えられ、両者を読み比べて答えを導く問題がありました。他教科の問題でもどのデータに当たるべきかを考えさせたりする設問が登場しています。 ❏ 新課程が求める「学ばせ方」を実現するために PISAの読解力定義には2018年…
2019年に出版されてベストセラーになった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』では、その冒頭に簡単ながら、答えがちょっと意外なクイズが 13 個用意されています。例えば、こんな問題です。 自然災害で毎年亡くなる人の数は過去100年でどう変化したか。{2倍以上になった/あまり変わっていない/半分以下になった} 単純な三択問題ですので、まったく手掛かりなしに当てずっぽうで答えたとしても33%…
夏休みの宿題では昔からの「定番」になっているものの一つに、英語のサイドリーダーがありますが、「時間の余裕があるときに、まとまった量の英文を読むこと」の意義は、学力観や学習指導を通して目指すところが変わってくる中で、以前とは捉え方を変えるべきかもしれません。そもそも、生徒の夏休みは、体験学習や課題研究/探究活動、大学訪問と様々なコンテンツやイベントが積み込まれる中で、「時間の余裕」があるものではなく…