出題内容から窺う、大学の教育姿勢

先日、拙稿「出題研究を通して”問い方”を学ぶ」を更新し、新しい学力観に沿った問い方を学ぶのに好適な教材を高大接続改革以降の大学入試問題から探しましょうとのご提案をいたしましたが、出題研究を通して各大学の教育姿勢を窺い知ることも同時にできるはずです。自教科の出題だけを見ても、大学全体での出題姿勢(アドミッション・ポリシー)やその背後にある教育観、教育姿勢までは掴み切れません。…

限られた授業時間を有効に使う

新課程への移行で、「各単元の学習内容をしっかり理解させ、知識として定着させた上で、且つ思考力や判断力、表現力も高める」という高い要求が教室に向けられます。これまで以上にやるべきことが増えるのは明白ながら、授業時間は基本的にこれまでと変わりません。この結果、当然ながら、「授業時間をいかに有効に使うか」がこれまで以上に重要な課題となりますが、解決のアプローチを何かひとつに求めたところで限界があるのは明…

答えを仕上げる中で学びは深まる

授業を通して学力の向上や自分の進歩を実感できることで、生徒はその科目を学びつづける意欲を維持・向上することができますが、その実感をもたらすのは「習ったことを使って課題を解決できた体験」です。課題を与え、知識や理解を活用する場面を整えることが重要なのは言うまでもありませんが、とりあえず答えが出せたところで立ち止まらせては深く確かな学びは生まれません。答えを仕上げてこその学びです。問いを軸に授業を設計…

入試問題を授業の教材に使うときに

新課程への移行に先駆け、新しい学力観を取り入れた出題も、意欲的な大学・学部では既に見られるようになっています。いよいよ新テストも始まりますので、これから暫くは、大学入試問題ウォッチに例年以上の力を入れて、新しい学力観の下での学ばせ方を模索しましょう。出題研究を通して”問い方”を学ぶ ことは、先生方ご自身の持つ学力観を更新するのに代えがたい機会のひとつですし、「問いの立て方と…

学びを深める、問いの立て方とその使い方

別稿「どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる」でも申し上げたことですが、「問いの立て方」とその「使い方」は、授業を通した学びの成果(深まりと広まり)を大きく左右します。問いを起点に展開する様々な学習活動が、生徒一人ひとりの学びをより深く広いもの、確かなものにするには、どんな問いを立てるのが良いのか、時には立ち止まって考えてみるのも良さそうです。より良い授業を目指す気持ちはすべての先生に共通する…

どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる

どんな問いを立てて教室に持ち込むかは、授業の成否を分ける最大のポイントだと思います。拙稿「学習目標は解くべき課題で示す」で申し上げた通り、「問い」は学習者にとって取り組むべき課題そのものです。従来は「導いた結論が何か」が問いの主流でしたが、高大接続改革以降、どうやってその結論を導くかが問いになるシーンも見かけることが珍しくありません。問いのあり方、問いを軸に授業をデザインするかについて発想とスキル…

6ヵ年のストーリーを描く、教育活動の配列

お任せコースのみでやっているような料理屋さんもあれば、メニューが壁一面に「これでもか」と貼り出されている居酒屋さんもあります。後者タイプのお店では、何度も足を運んでその店のメニューを熟知すれば、その日の気分で大いに楽しめますが、そうなるまでは何を頼むかの判断も容易ではないのが悩ましいところ。ときには、並んだ品書きには久しく注文を受けていないものも混じっています。おかしな喩えから入りましたが、学校の…

生徒が持つ知識/イメージを把握してから学びをスタート

新しい単元を学ぶ入り口では、生徒がこれまでの学習(教室の中に限らず生活を送る中でのもの)を通して、これから学ばせる内容/対象について何をどこまで知っているか/どんなイメージを持っているかを把握しておくことが大切です。生徒が既に知っていること/イメージしていることと、授業を経て形成させるべき十分で正しい理解との「差分」を埋めることこそが、本時の指導で達成すべき目標である以上、学びのスタートで生徒がど…

カラムを分けた板書で押さえる共通点と相違点

ものごとを理解するときは、それを単独で扱うよりも、生徒がある程度まで理解している何か対照となるものを引き合いに出し、互いの共通点と相違点を整理しながら学んだ方が、本質的なところ(意義や抱える課題など)を押さえやすくなることが多々あります。 ある時代・地域の政治制度を扱うときに現代日本のそれと照らし合わせたり、バイオームを学ぶ中、サバンナを既習のステップと比べたりするイメージです。共通項を押さえつつ…

質問に答えて不明を解消してあげる前にやるべきこと

生徒が問題演習を行ったり、実験や話し合いに取り組んでいたりするときに、先生方が机間指導をしながら生徒の質問に答えるシーンは日々の授業で頻繁に見かけるものです。わからないことがあったら訊くようにと声をかけ、出てきた質問のひとつひとつに丁寧に答えていくのは、親身になって生徒を指導している姿そのものにも見えますが、よくよく考えてみると、「質問に丁寧に答える」という対処だけでは様々な問題があるようにも思え…

教科固有の知識・技能を学ぶ中で

工業化社会では、正しい手順を正確に身につけ迅速に再現できることが生産性を高めることに直結しました。個々の教科の内容を学ぶ過程で発揮した「与えられた情報を素早く理解し、記憶する力」は、それ自体が武器になり、実際、テストの点数で「覚える力」の高さを証明すれば、次のステージへのパスポートが手に入りました。しかしながら、人工知能(AI)の進化などで社会構造が急激に変化していく、これからの見通しにくい時代を…

"丁寧に教える"ことを取り違えていないか

先日、ある先生とのお話の中で、こんなご意見に触れました。───丁寧に教えてあげれば生徒は理解できるので、自分がその科目をできると誤解してしまう。進路を選んだ後になってからその科目に適性がないことに気付いたのでは、本来なら入れたはずの大学にも進めなくなる。丁寧に教えることが必ずしもよいこととは限らず、適性のなさに早めに気づかせ、ほかの進路を考えさせることも大切だ。───確かに適性のないところにしがみ…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その3)

前稿(その2)の終わりに、「改善に向けた新たな知見を得るのに最も効率的で確実な方法は、既に校内で高い評価を得ている先生の実践に倣うことであり、高評価を得た先生からの積極的な発信が期待される」と申し上げましたが、教科内/校内に向けて発信すべき実践の所在を知るには、個人票裏面の「クラス別集計」をご覧いただくのが好適です。 ❏ 相対的な位置と、クラスごとの違いを確認 個人票(授業評価集計)の裏面には、担…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その2)

前稿(その1)では、授業評価アンケートにおいて最も重要な項目である【学習効果】の集計値をみるときの観点と方法をご説明しました。本稿では、学習効果のさらなる引き上げ/授業改善が必要と判断されたときにどうすべきか、集計値から読み取る方法をご紹介いたします。 ❏ グラフ「強みの所在/改善課題」が示すもの 個人票[授業評価集計]の中段には、下図のようなグラフが表示されています。グラフを上下に分けるように引…

授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その1)

授業評価アンケートの実施後、しばらくしてお手元に届く集計結果には様々な数値が記載されていますが、その見方を良く知ることは評価結果を授業改善に活かすために欠かせません。下のイラストは、当オフィスが監修、株式会社ディーシーアイが開発・運用している「授業評価&生徒意識アンケート」の個人票(授業評価集計)ですが、これを例に、集計結果として出力されたデータを見るときのポイントを考えてみたいと思います。   …

新しい生活様式のもとでの学習指導(まとめページ)

1 授業再開にむけて整えておきたい準備 1.1 授業再開にむけて整えておきたい準備(記事まとめ) 1.2 休校明けの授業を円滑に再始動する ・まずは、家庭学習の成果をしっかり確認 ・確認テストを行うか、単元課題で評価するか ・教室で学ばせることを絞り込んで授業を再計画 ・遠隔指導やICT活用のノウハウを継続開発 1.3 改めて迎える「新年度」の始動に当たって押さえたいこと ・教員間の「目線合わせ」…

臨時休校のリモート指導がきっかけで授業改善が加速?

今年は年度当初から、臨時休校中のリモート学習、学校再開後の分散登校と様々な障害がある中での教育活動が余儀なくされましたが、1学期の授業評価アンケートの結果を見ると、評価が下がるどころか、大きく授業改善が進んだことを窺わせるデータも散見されます。 学習効果をダイレクトに尋ねる「授業を通しての学力の向上や自分の進歩を実感できるか」という問いにも、肯定的な回答が昨年度以上に増えているケースも少なくありま…

課題の仕上げは個人のタスクに(後編)

様々な授業内活動を通じて課題解決の糸口を得るとともに必要な材料を揃えたら、仕上げの段階は生徒一人ひとりの個人タスクに戻すべきというのが前編の趣旨です。活動を通じて深めた学びは、生徒一人ひとりが手元に戻して答案などの形に仕上げてこそその成果を固定できます。アウトプットを通じてインプットの不備を知ること、答案としての充足要件に照らして自分が書き上げたものを分解的に評価することを意図した「機会」を授業デ…

課題の仕上げは個人のタスクに(前編)

学んだことを活用して解決すべき課題をきちんと用意し、対話や協働を含む様々な学習活動を通してその解決に必要なもの(知識や技能に加えて思考・判断・表現の力、学習方策など)を獲得させたとしても、学びの仕上げにどのように取り組ませるかで、学びがどこまで深く確かなものになるかが決まり、その後の学びのあり方も大きく左右されます。対話や協働を通して学びを膨らませた後の仕上げ方で、深く確かな学びの成否が決まるとい…

考えるための道具(体系的知識)を揃えさせるときの手順

思考のための道具は知識です。どの単元を学ぶときでもある程度まで体系的な知識を整えさせないと、その先に取り組むべき思考・判断・表現といった活動には進めませんが、体系的な知識を形成しようと先走り、導入フェイズから長々と説明を聞かせては生徒は退屈するばかりです。その日の授業で学ぶことに「興味」や「理解する必要性」を感じ取る前にあれやこれやと説明を聞くのを苦痛と感じる生徒もいるでしょうし、抽象概念を消化す…