問い掛けの多い授業が良い授業 #INDEX

問い掛けには、様々な役割と機能があります。知識や理解を確かめるという基本機能に加えて、問題意識を刺激する、思考や行動を引き出す、着眼点を獲得させる、課題解決のプロセスを共時的に体験させるといった場面でも、問い掛けは大きくその役割を果たしてくれます。学びの場に必要な生徒への働きかけの大半は、問い掛けで実現できるのかもしれません。題意を理解する、解法を考える、多様な立場や取り組み方があることに気づかせ…

問い掛けの多い授業が良い授業(その3)

生徒自身から問いを引き出す 問い掛けには、生徒に記憶を検索・想起させたり、問題意識を刺激して思考や内省を促したりする機能があります。発想や着眼点を広げさせたり、行動を起こさせたりする場面でも、説明や指示よりも問い掛けの方が効果的なことも少なくありません。(前々稿参照)前稿、前々稿では主に、先生から生徒への問い掛けについて考えてきましたが、教室という学びの場を考えると、生徒から生徒への問い掛けもあれ…

問い掛けの多い授業が良い授業(その2)

問い掛けにきちんと反応させる仕掛け 前稿の通り、発問を軸にして授業を構成することには、生徒の思考や行動を引き出したり、説明などの情報をしっかり受け止める態勢を取らせたりする効果があり、課題解決のプロセスを共時的に体験させていくにも、発問は重要なガイドになります。cf. 問答を通じて論理性を養うどんな問いを発するかで、生徒が身につける学力がまったく違ったものになるのは、拙稿「どんな問いを立てるかで授…

問い掛けの多い授業が良い授業(その1)

問い掛けのタイプとその機能 教室で行う発問の役割は、知識の有無や理解の正しさを確認するだけではありません。発問をきっかけに生徒の思考や行動を引き出すことも可能ですし、問いを真似ることで生徒は先生の思考を再現できるようになります。また、問うことで問題意識を刺激しておけば、情報をしっかり受け取る準備も生徒の側で整うというメリットも生まれます。確かな学び、活発な思考と行動、問題意識を持った深い学びが発問…

宿題を課すときに(再考)

先週末から、朝日新聞で「宿題が終わらない」と題する連載がありました。新課程への移行による学習観の変化や、一人一台の端末が普及したことなどで、新たなタイプの宿題が増えたことが、生徒一人ひとりの学びに様々な形で、好ましくない影響を及ぼしている様子が窺えます。 連載「宿題が終わらない」:朝日新聞デジタル (asahi.com) ❏ 新しい学力観に応じたタスクを加えるだけでは… 各単元の学習内容を学ぶこと…

基礎力不足の生徒にどう学ばせるか

当たり前のことですが、どの教科の学習指導を行うときも、「基礎」が固まっていない生徒がその先に学びを進めるのは容易ではありません。新しい単元を学ばせようにも、関連する既習単元の内容を理解していない/知識として定着していないのでは、それらを土台とする新たな知を積み上げることはできず、勢い、復習や学び直しに終始しがちです。こうした状況を前に、基礎が身についていない生徒に教えるとき、「わかりやすさ」「ポイ…

進歩を止めさせない自己評価の在り方

生徒にこれまで取り組んできたことの成果や、グループで話し合った結果などを表現させるとき、「評価シート」を用意して、自己評価や相互評価を行わせる場面は、多くの学びの場にあろうかと思います。自己評価は、それまでの自分の取り組みとその成果を振り返り、より良いパフォーマンスを得るのに何が必要かを考え出すための練習。言い換えれば、「メタ認知、適応的学習力」の獲得機会ということです。正しい振り返りができるよう…

自己評価、相互評価を行わせるときの工夫

個人の練習やグループでの活動の成果を発表させるとき、生徒に自己評価や相互評価を行わせることで、取り組みの成果のたな卸しもできますし、さらに良くなる/良くするための手掛かりも見つけられます。しかしながら、形だけの自己評価/相互評価を繰り返してもその効果は限定的です。効果に繋げるために必要な工夫について考えてみました。 2017/09/11 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 評価をさせることはメ…

先生方との相談で、周囲からの刺激を上手に消化

周りの生徒の頑張りは、生徒にとって大きな刺激となり、自分も頑張ろうという気持ちを生み出します。ただし、刺激が自動的に頑張りに転化するわけではなく、刺激を消化するには、先生方をはじめとする周囲との対話(相談)の中で得られる助言が欠かせないことが多いようです。 2021/03/30 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 刺激を消化して行動につなげるメカニズム 学校評価アンケートの回答を解析してみると…

授業規律VS学ぶことへの自分の理由

教室は集団で学ぶ場ですので、生徒一人ひとりが安心して勉強に集中するには、一定の規律が保たれる必要があります。しかしながら、勉強に集中しない生徒や規律を乱してしまう生徒がいたとき、きつく指導して従わせるだけでは「主体的な学び」から遠ざかるばかりです。先生に言われたことに従っているだけで、学びが従属的なものになっていては、指示という外圧ががなくなったときに学習は継続しないのではないでしょうか。「自ら学…

教室の環境整備と生徒の人間関係との相関

生徒による学校評価アンケートや学級経営評価などを機に、自分が在籍するクラスの状況について生徒に、 を尋ねてみると、前者で高い評価を得ているクラスほど、いじめなどの被害者/目撃者になる生徒の割合が低い傾向が見られます。手元に蓄積してきた様々な学校のデータを引っ張り出してみて、改めて回帰分析やクロス集計による残差分析で検証してみたところ、その傾向には例外なく統計的な有意性が確認できました。 2018/…

係の仕事(学級経営)

係の仕事は、生徒一人ひとりがコミュニティの中でそれぞれの役割を引き受けることを学ぶ大切な機会です。協働で課題の解決を図ろうとする中で、協働性や多様性、主体性の獲得も期待できますし、リーダーシップやフォロワーシップ、社会参画力の涵養にも役立つはずです。アンケートの結果を解析してみると、係の仕事をきちんと割り振り、自分の役割を果たすことを求めることが「生徒が互いに刺激し合いともに成長するクラス」を創出…

生徒に考えさせる授業規律

教室での学びは集団で行うものですから、そこには生徒と教師が互いに守るべき一定のルールやマナーがあります。一人一人が気の向くまま自由奔放にというわけにはいきません。新年度の授業開きなどで各教科の先生から授業中の約束事を話して聞かせることも多いかと思いますが、生徒はなぜその決まり事があるのかきちんと理解しているでしょうか。 2015/09/18 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ そのルールの存…

課外活動も、21世紀型能力の獲得を目指して

昨今、その在り方が問われることが多い部活動ですが、学校が関わる活動である以上、学力や能力、資質(「学力の三要素」や21世紀型能力における「基礎力、思考力、実践力」に挙げられているもの)の獲得を図る場としての機能が、何よりも優先されるべきだと考えます。これは部活動に限らず、生徒会活動や学校行事、ホームルーム活動なども含めたすべての課外活動にあてはまるはず。部活動では、外部に指導を委託する場合も、ここ…

より良い授業の実現に向けた、管理職の役割

現場で頑張る先生方が日々取り組んでおられる「より良い授業の実現」がどれだけスムーズに進み、大きな成果を結ぶかどうかは、管理職からの支援や関与に左右される部分が小さくないと考えます。別稿「授業観察を行うときに押さえるべきところ」でお伝えしたことはもちろんですが、それ以外にも管理職の関与なしには実現が難しい「授業改善を進めるための環境づくり」があります。授業観察を通して見つけた優良実践を校内に伝えるこ…

研究授業の実りをより大きくするために#INDEX

より良い授業の実現を目指して、参加する先生方の気づきと智恵を交換する場が研究授業です。実施には小さからぬエネルギーが必要ですが、他には代えがたい、先生方にとって貴重な学びの機会です。コストに見合った成果が得られるかどうかは、ファシリテーターを含む参加メンバーの構成に加えて、実施の方法によるところも大です。このシリーズでは、以下の6フェイズで構成する実施手順を提案します。 2017/10/30 公開…

研究授業の実りをより大きくするために(その3)

明確なテーマに沿った研究で継続的に成果を積む 授業を参観し、協議を通じて「より良い授業」を実現するための気づきを交換したり、学習効果をより大きくする方法を考えたりすることで、研究授業は所期の成果をおさめたことになりますが、毎回、これを繰り返しているだけでは発展的、継続的な取り組みにはなりません。そもそも「研究授業」というからには、何らかのテーマにそって研究を進める場として位置づけを明確にする必要が…

研究授業の実りをより大きくするために(その2)

グループの成果をシェアして改善への仮説作り 前稿「参観メモをもとに小グループで気づきの交換」で紹介したような手順を、授業公開後の研究協議の冒頭で踏んでおけば、授業者の工夫や共有すべき優れた手法、改善すべき箇所とその修正案などの多くは、各グループの中で、既にかなりのところまで抽出されているはずです。次のステップはグループごとに取りまとめた「気づき」を発表してもらい、知見の共有を参加者全員まで広げてい…

研究授業の実りをより大きくするために(その1)

参観メモをもとに小グループで気づきの交換 授業改善を目的とする取組のひとつに研究授業があります。複数の先生が同じ授業を参観した後で研究協議に臨むという枠組みは同じですが、後半の研究協議のやり方次第では、より良い授業の実践に向けて得られる知見(=研究授業の成果)の質と量に大きな違いが生じます。 2017/10/25 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 効果の上がる研究授業、形だけで終わる研究授業…

授業観察を行うときに押さえるべきところ

管理職の先生方が「授業観察」を行うときや、教育実習生の授業を指導役の先生が観るときには、押さえておきたいポイントが多々あります。さらには観察で実際の教室に足を運ぶ前にも、観察者と授業者との間で行っておくべきことがあり、参観を終えた後も同様です。どこに観点を置いて授業を観るかに加えて、参観結果をどのように授業者にフィードバックするかは、授業を観察する先生方それぞれの経験則に頼りがちかと思います。授業…