アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟

生徒に新しいアイデアを出させるためには、事前に行う調べ学習が重要というのは別稿でもお伝えした通りです。そこで得た様々な情報を関連付けたり構造化したりすることで、アイデアを考える土台が整います。本稿では、調べ学習の中で得た知識や気づきを拡張しながら、整理していくフェイズでの指導の工夫を考えてみたいと思います。 2019/11/26 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 様々なツールを使い、思考を深…

途中でも、その時点で成果を共有

別稿「積極的に活動させるツボ(全3編)」では、授業内活動に生徒を積極的に参加させるための工夫を考えました。あちこちの学校を訪ねて授業を拝見してみると、生徒が活動性を下げてしまう瞬間には、まだまだ色んなパターンがありそうです。(cf. 不用意な“待て”をかけない)生徒一人ひとりに調べる、考える、まとめるといったタスクに取り組ませるときも、グループなどで話し合わせるときも、限られた時間の中で活動の密度…

受験期は、またとない成長の好機

生徒にとって受験期は、自分の希望を叶えるためとはいえ、大なり小なりの不安を抱えつつ、他のことを脇に置いて頑張る時期です。つらさやストレスを感じる日々ではあるのは確かですが、 など、この期間を通してこそ得るもの(成長)は小さくないはずです。生徒は渦中にいるだけに、他の誰かが伝えてあげなければ、せっかくの受験期を、その意義を知らぬままに終えてしまうかもしれません。それを伝えるのは、先生方をおいて他にい…

目標を見つける入り口~日々の学びでの興味・関心

目標を持った状態で巣立たせるには、日々の学びの中に興味や関心を見つけてもらうことがスタートです。興味は自力で考え工夫して達成したこと(=できるようになったこと)の中に生まれ、関心は「自分事」として認識できる課題に触れて芽生えてきます。せっかく生まれた興味・関心もそのままにしては、深化・拡張することなく埋もれてしまいます。機を逃すことなく、探究的な学びで興味を掘り下げ、関わりの視野を広げることで、「…

学んでいることの有用性に気づかせる

勉強は「役に立つからする」「役に立たないからしない」というものではありませんが、それでも「学んでいることが何かの役に立ちそうだ」と思えれば、身の入り方が変わってくることも確かです。手元のデータもそれを裏付けています。 履修の途中(あるいは入り口)にいる生徒や学生にとって、学びを進めた先にどんな利益や活用の場面があるかは、容易には想像できないはずです。解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える…

興味関心と自ら学ぶ姿勢とのギャップ

主体的に学ぶ姿勢、自ら調べたり考えたりする態度を獲得させることが指導上の重要目標であるのは言うまでもありません。教室で生徒に知識や技能を身につけさせても、社会の変化や科学の進歩の中で、それらがいつまでも価値を持つとは限らず、知識は常に獲得/アップデートする必要があり、生徒には自ら学び続ける姿勢が求められます。自ら学ぶ姿勢を持つには、対象への興味関心が不可欠でしょうが、要件はそれだけではなさそうです…

生徒の興味・関心をどこまで育めたか

授業を通じて科目に対する(あるいは学びそのものへの)生徒の興味や関心を高めることはどの教室にも共通する目標だと思いますが、そのための方法を論じる機会の多さに比べて、「興味・関心とは何か」という根幹に立ち戻った議論はあまりなされていないような気がします。興味・関心とは何かをきちんと定義しないままでは、その高まりを客観的に測定することはできません。方法をあれこれと論じても、それらがどのくらいの成果を得…

対話が思考を育み、深い学びを実現する(まとめ)

新課程への移行を機に、「新しい学力観に沿った学ばせ方への転換」が急ピッチで進んできました。これまでの取り組みとその成果を検証して次フェイズに向けた新たな課題形成を図る動きも、各地に見られます。学校広報においても、これまで/これからの取り組みをただ並べて見せるだけの場合と、きちんと効果測定を行い、その中に見出された新たな課題に具体的な戦略を描いて取り組む姿勢をしっかりと伝えている場合とでは、学校に向…

学び方そのものを学ばせる

教科学習指導の目標は、教科固有の知識や技能を身につけさせて、使いこなせるようにさせることが第一であるのは言うまでもありませんが、これらを優先させるあまり、学び方を身につけさせたり、学ぶことへの自分の理由を作らせたりするのが疎かになってはいけません。ここで言う「学び方」とは、知識を獲得する方法だけでなく、体験を構成して理解を形成する方法、協働で課題解決に当たる場面でのふるまい方など、学びの場での行動…

学習目標の示し方 #INDEX

学習活動において、生徒が学習目標を正しく認識していることは、積極的な取り組みの前提であることに加え、生徒の側での情報補完を容易にすることで生徒の理解力を底上げするなどの効果も得ます。また、目標とするところをきちんと把握できていないことには、目標を達成できたとの実感も曖昧になります。達成感はモチベーションの原資ですが、それが希薄になることのデメリットは計り知れません。学習目標をはっきり示すことで苦手…

学習目標の示し方(その3)~学び方の獲得も重要な目標

学習目標という言葉で最初に思い浮かぶのは「単元の内容を理解すること」かもしれませんが、それだけではありません。内容を学ぶことを手段に様々な能力や資質(基礎力、思考力、実践力など)を獲得することも目標です。(cf. カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する)わからないことがあったときに調べたり、予習復習を進めたりするときの「学習方策」を身につけること、加えて、協働で課題解決に臨む場面でのふるま…

学習目標の示し方(その2)~目標に立ち戻り成果を確認

前稿(その1)でお伝えした通り、学習目標は導入フェイズでしっかりと、生徒が達成検証できる表現を与えて示すのが鉄則ですが、目標を示しっぱなしでは、確かな学びは保証されません。学びを終える前のアウトプットを通して、目標が達成できたかどうか点検させ、不足があればきちんと補うようにさせなければ、「目標を与えただけ」「やらせっぱなし」ということになってしまいます。 アウトプットに用いる課題や問いを、導入フェ…

学習目標の示し方(その1)~目標を共有することの効能

教科学習指導に限ったことではありませんが、生徒に何かを学ばせようとするとき、事前に学習目標を正しく認識させておくことには、 といった好ましい効果が多岐にわたって期待できます。教科学習指導における「目標」には、教科や科目に通底した大きなものもあれば、単元や項目ごとのものもありますし、学びの局面ひとつひとつにも到達を目指すべきものがあるはずです。 それらを生徒にも理解できる表現でしっかりと示し、生徒と…

解くべき課題は明らかなのに学習目標がわからない?

授業で得た理解と知識を用いて解を導くべき課題を導入フェイズで提示しておくと、生徒が学習目標を認識しやすくなるのは、拙稿「目標理解と活用機会を整える授業デザイン」でもお伝えした通りです。 しかしながら、授業評価アンケートの集計データでは、上図にも見て取れる通り、ときとして(先生が)活用機会を整えている度合いと、(生徒が)学習目標を理解している度合いとの間の相関が崩れます。近似線から大きく離れた(ある…

学習目標が伝わらない?(後編)

先生方と違い、生徒や学生は何といっても「新単元を学び始める前」です。単元や項目の目標や意義をどれだけ言葉を尽くして伝えても、意図するところをすべて理解し、受け止めるのは容易ではありません。前稿では、そんな場合に試してみるべき方法として「内容を学び始める前のプレ活動」をご提案いたしました。今回は、それでもうまく行かないときの「次善の策」、終了時に使える一手も含めて考えてみます。 2015/02/24…

学習目標が伝わらない?(前編)

日々の授業に際して「本時の目標」を欠かすことなくきちんと伝えているつもりなのに、あるいはシラバスを通じて示したはずなのに、生徒や学生にアンケートをとってみると、「目標提示」の項目で想定外の低評価…。こんな経験をなさっている先生方も少なくないようです。低評価となったのは、学習目標を先生が伝えていないのではなく、生徒/学生の側に伝わっていなかったということ。「伝えられたものを受け止めるだけの前提」が学…

目標提示と成果確認はセットにして

シラバスや学習の手引きによく見られる「○○について理解する」といった目標の記述は、本時の学びで目指すところを、生徒に正しく伝える機能を十分に備えているでしょうか。これから学ぶ(=まだ勉強したことのない)ことの項目名を挙げられても、何をするのか、何を学ぶのかをイメージできるとは思えません。また、学習が終わった後で「学習目標」に立ち返って/読み直してみてもなお、自分が目標を到達できたのかどうか把握でき…

TIPS! 空所を残した板書

板書は、生徒に問い掛けを重ねながら、順番に書き上げていくのが普通ですが、「敢えて空所を残しておく」という手法もあります。ねらいは「生徒の問題意識を刺激し、強い印象を残す」ことにあります。授業の導入時や、新たな内容に進むときに用いれば、その先の学びを通じて達成を目指すところを認識させる優れた機能を発揮してくれます。例えば、本時の学びを通じて答えられるようになって欲しい問いの「正解」となる文章を元に、…

考え尽くした結果を伝えることはコミュニティへの貢献

問いやお題を与え、一人ひとりに調べたり考えさせたりさせ、その成果を持ち寄ってシェアさせれば、欠けていた理解や気づきを互いに補うことになり、学びがより深く広いものになります。調べる時のソースが違えば、互いに矛盾する情報が見つかることもあるでしょう。それぞれの信ぴょう性を評価したり、矛盾に対処したりする知恵を働かせる(=力を鍛えて評価する)好機が教室に生まれます。同じものを参照しても、そこから拾い上げ…

総合学習/探究活動における「知識の活用」

各教科の学習指導において「評価」を行うのは「生徒一人ひとりの学びをより良いものにする」ためであるのは言うまでもありませんが、これは探究活動や進路指導においても同じだと思います。獲得すべき知識や技能(=各単元に固有の知識など)がきちんと身についていなければ、それを補う機会を与える必要がありますし、知識や技能を「生きて働かせる(=活用する)」ことができていないようなら、できるようにさせなければなりませ…