先生方の多忙解消に~個々の教育活動の価値見直し

先生方の多忙解消が必要であるとの議論が盛んになされるようになってずいぶん経ちますが、なかなか問題は解決に向かわないようです。退勤時間が早くなっても持ち帰る仕事が増えただけとの話もよく聞きます。
多忙を解消するには、基本的には2つの方法しかありません。ひとつは個々の仕事の効率化、もう一つは仕事そのものを減らすことです。

❏ 効率化と外部委託以上に、仕事の見直し

書類仕事の自動化や、教材を含む文書資産の共有・再利用など以前から行われてきた「効率化」を進める必要がありますが、次から次へと沸いて出てくる新たな業務の前には焼け石に水といった感もあります。
焼石が相手でも水をかけ続けないことには延焼のリスクが…。ルーチン化した作業は、マクロでの自動化も進めて行きたいところ。AIの活用への期待も高まりますが、現場での実効はもう少し先でしょうか。
担当者の負担を下げる方法として期待されているのが、外部からの支援受け入れですが、これも必ずしもうまく機能していないようです。
支援者そのものが見つからないこともあれば、頼んだ相手の経験やスキルによっては、その育成や業務の管理(ときには後始末まで!)などで手間が減るどころかかえって増えてしまうこともしばしばです。
こう考えてみると、いずれも決定打に欠けそうです。本気で多忙を解消しようとするなら、先ずはこれまでに取り組んできたことのたな卸し、個々の業務の再評価と取捨選択が欠かせないのではないでしょうか。

❏ 本当に必要なのか、効果は上がっているのか

限りある教育リソースを投入してでも、取り組みを継続し、充実を図るべきかどうかの判断基準は、「必要性が合理的に説明でき、且つ所期の成果を十分に得ている」かどうかだと思います。
これまでに行ってきた様々な指導、整備を重ねてきた教育機会、その中で分掌や学年、教科で発生している業務をすべて書き出してみて、それぞれの必要性と実効性を、冷静に再評価してみましょう。
再評価の結果を以下のような座標面の中に散布図としてプロットしてみると、個々の教育活動の相対的な価値が可視化できます。


なお、座標面を各象限に分ける「軸」の位置は、暫定的に再評価の対象としたすべての取り組みの「中央値」で引いた上で、後述のように位置を調整するのが一般的な手法です。

❏ 必要性は、全体計画との整合性や学校評価等の解析で

必要性の判断には大きく分けて2つの方法があります。
ひとつは、グランドデザインの中での重要性です。個々の取組としては面白く、生徒も喜んでいるとしても、3ヵ年/6ヵ年の教育で目指すものへの寄与が曖昧であれば、必要性は低いと考えられます。
また、教科、探究、進路など、互いに密接に関わり合う領域では、それぞれを個別に設計していたがゆえに、重なりがうまく使えていないことも多々あります。そうした重複も含めて、「この指導がなければ全体目標は達成できないのか」を客観的な目で疑ってみることも大切です。

もう一つは、学校評価アンケートで目的変数(=主要指標)に設定した項目(例えば、「この学校を選んでよかったと思う」など)や、「進路希望の実現」といった学校経営上の最重点目標への寄与度をデータ解析で算出し、定量的に比較してみる方法です。

また、入学オリエンテーションで行ったアンケートで「本校を選んだ理由」の上位に並んだものや、学校説明会などで生徒に約束したこともまた「必要性=高」に置くことになるはずです。
くれぐれも主観で必要性を論じないようにしましょう。事実よりも思い入れが先に立った議論になってしまい、冷静にな判断ができないばかりか、結論が遅れるばかりです。

❏ 実効性は、目標の達成にどれだけ寄与したかで判断

一方、効果を上げているかどうかの判定はかなりシンプルです。
それぞれの指導には固有の目標、つまり「その指導を通じて目指すべき到達状態」があるはずので、指導機会や行事等を経て、どれだけの生徒がその目標に到達できたかをカウントすれば良い話です。
もし、目標がはっきりしていない、教員間でも認識が一致しないという状況があったとしたら、必要性を疑ってみるべきでしょう。
例えば、夏休みの補習の中で「やり直し」を目的にしたものがあったとしたら、2学期のパフォーマンスを観察して、次の単元に進む基礎がきちんと形成されているか、やり直しが必要となった原因(学び方への未習熟、学ぶ意欲の不足など)が解消できた生徒がどのくらいの割合を占めるか、といった視点で指導の成果を評価することになります。
校外での体験的な学習機会についても、その行事を通じて生徒に持ってもらいたかった気づきがあるはずですので、ポートフォリオに残ったリフレクション・ログに該当する記述がどれだけ出現したかを数えれば、効果をある程度の精度で推測することも可能です。

こうして確認された「効果」は、生徒募集における広報材料(教育成果を示すエビデンス)としても大いに活用したいところですよね。

❏ 各象限に置かれた教育活動の今後の取り扱い

上の座標面で第1象限にあるものは、必要性があり、且つ効果も得ているわけですから継続するという判断になりますが、より効率化/省力化ができないか、細かな見直しを重ねて行きましょう。
第2象限にプロットされた「効果は上がっているが、必要性を認知されていない取り組み」については、本当に必要なのかを振り返ってみる必要があります。
もし、必要性を示すロジックが用意できないのであれば、教育リソースの配分において第4象限にある活動を優先すべきとの判断になります。
こうした検討を経てなお、どうしても必要との判断に至ったら、校内外での理解と共感を得るべく、広報活動に注力しましょう。
第3象限に位置するものは、必要性も曖昧で、且つ効果もないのですから、即刻、取り止めるのが妥当な判断です。但し、生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束を違えることのないよう、注意が必要です。
第4象限に位置する教育活動は、きちんと効果を出す(=目的とするところを達成する)ことが求められていますから、事前・事後指導を含めた見直しで、目標を達成する方法/対処を考えましょう。
もし、余力が足りないようなら、第2、第3象限にある他の取り組みを取り止めてでも、回せるリソースを捻出すべきです。
それでもカバーしきれない/余力が作れないようなら、散布図の縦軸を右にずらして全体の区分を見直す(必要/不要の閾値を変える)ことになります。限りあるリソースの中で、優先順位をつけた取捨選択を行うのは経営上、当然の判断です。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一