実践報告に触れての気づきを言語化することの効果

より良い授業の実現を目指し、全国各地で様々な指導法研究や実践報告が行われています。ご参加の先生方からの意欲的な提案や報告にいつも大きな刺激をいただき、たいへん勉強になります。 各地の先生方が、それぞれの置かれた状況の中で「あるべき学びの姿」を考え続けて生み出してきたアイデアの数々は、それに触れた人が授業をデザインするときの手札を増やし、それを使ってさらに工夫を重ねた実践はまた別の機会で報告され、別…

優良実践に触れたのに改善が進まないのは?

模試や外部検定などのテスト、ルーブリックを用いた活動評価、さらには生徒による授業評価アンケートの結果などから、優れた実践(=有為な学びに大きく寄与した指導)の所在を特定し、それを共有することが組織的な授業改善を進めるときの「基本」です。共有したものは、先生方の協働で更なるブラッシュアップを図ったり、他の手法と組み合わせたりして、より大きな成果が見込めるものに仕立て直していきたいところです。 しかし…

結論を出さずに終える授業

授業の終わりは「今日の授業の内容をまとめて」というのが定番のスタイルかもしれませんが、ちょっと発想を変えて、問いに答えを出さずに次の授業につなぐというやり方はいかがでしょうか。授業を「復習→導入→展開→演習→まとめ」という固定的な構成で考える必要はありません。結論を与えてしまうことで学びや思考を締め括らず、問いをオープンにしたままま授業を終えることが、生徒に考え続けさせることにつながることだってあ…

終了時の工夫で成果を高める(記事まとめ)

同じ教材を用い、同じ展開で授業を行ったとしても、授業を終えるときのアクションや教室を離れて行わせる学びの仕上げのあり方しだいで、学習効果は大きく異なります。授業を進めて、教科書の予定のページまで終わったからと言って「ほっ」としている場合ではありません。以下のそれぞれの場面で、押さえるべきところをしっかり押さえていたか、これまでのご指導をときどき振り返ってみるのも良さそうです。 2016/08/31…

今日の授業でどんな気づきがあったか

授業終了のチャイムが間もなくというタイミングで、生徒に「今日の授業でどんな気づきがありましたか」と尋ねている先生がおられました。いつものことなのか、生徒は戸惑いも見せず、ササっとノートに鉛筆を走らせ、書き終えるとすぐに隣同士で見せ合います。授業のルーチンの一部として「学びの振り返り」が習慣化しているようでした。日々の授業で「本時に得た気づき」を言語化することを習慣づけておけば、授業中に得る瞬間ごと…

学びの成果をたな卸し

傍から見ても、入念に練られた授業できちんと学びの成果が出ているのは明らかなのに、生徒がその成果を実感できていないことがあります。伸びている実感を欠けば、頑張り続ける意欲も維持できません。「科目を切る」という選択で進路の可能性を狭めてしまう生徒も出てきます。学習を通じて進歩を感じ取って頑張っていれば、その先には新たな興味も生まれ、学びへの自分の理由も持てるようになってくるはずです。授業の改善を図ると…

質問を引き出す~学びを深め、広げるために(続編)

前稿「質問を引き出す~学びを深め、広げるために」で書いた通り、質問を見つけ出して文字に起こすことを求めたら、生徒はノートや教科書を見返して「疑問点」や「その先を覗きたい箇所」を探し始めます。漠然とした「よくわからない」に止まっていては、質問の形での言語化はできませんので、否が応でも「何がどうわからないのか」を明らかにせざるを得ず、その中で学びはより深く確かなものとなっていきます。同時に、対象を精緻…

質問を引き出す~学びを深め、広げるために

ひと通りの学習を終えた場面で生徒に質問を考えさせれば、そこまでの学びを振り返らせることができます。質問を考えさせるのは、生徒に問いを立てさせることに他ならず、教材に深く関わる好機になります。しかしながら、「質問はありませんか」と声を掛けるだけでは、その後の展開は期待薄でしょう。もともと積極的な生徒が手を挙げてくれたとしても、他の生徒は押し黙ったまま時間が過ぎるのを待っています。生徒からの質問があれ…

令和6年度も宜しくお願いいたします。

新年度となりました。お陰様で当オフィスも、開業から丸10年を迎えます。ひとえに皆様のご厚情の賜物と、衷心より御礼を申し上げます。気持ちも新たに、現場の先生方の実践から学び、少しでもお役に立てるよう、できる限りを尽くして参る所存です。今後ご指導を賜る機会もますます多くなるかと存じますが、何卒宜しくお願いいたします。年度当初の数週間は、先生方におかれましては、特にご多忙を極める時期と拝察いたします。く…

生徒に問いを立てさせる(続編)

前稿(本編)では、問いを立てることは教材に深く関わることであり、問いを立てることで学びは深く、広いものになると申し上げました。ジャンルやタイプを問わず、どんな文章/テクストでも、問いを立てながら読むことで書き手との対話が生まれます。グラフや図表のデータ、画像などの言語以外の方法で表現されたものも同じです。このようにメリットの多い「問いを立てる」というタスクには、教室で早いうちから取り組ませるべきだ…

生徒に問いを立てさせる

主体的、対話的な深い学びの実現のカギをにぎるのは、生徒に自ら問いを立てさせることだと思います。先生方の発問や教科書会社が用意した設問が、個々の生徒の興味を十分に刺激するとは限らず、学びは自分事にならない(=学ぶことへの自分の理由を持てない)かもしれません。また、教材を離れ、問いが付与されていないテクストや資料を読む場面では、読み取ったことの中に自ら問いを立てられてこそ、より深い理解が作られますし、…

教科書をきちんと読ませる

検定教科書の内容を中高生の半数近くが読み取れていない、内容を正確に理解できない可能性がある――この研究結果が発表されたのは、本稿を最初に起こしたときの少し前。かなり大きな話題になりました。教科書をきちんと読めないということは、眼前の課題を解決するために何かを新たに学ぼうとしても、誰かが教えてくれでもしない限り、必要な知識と理解を自力で形成することができないということ。21世紀型能力における基礎力(…

限られた授業時間を有効に使う(追記)

各単元の内容を学びながら様々な能力や資質を育もうとすれば、自ずとそれに見合った学習活動を指導計画の中に配列しなければなりません。多様な学びを所与の時間枠に収めるには、本編でも書いた通り、「生徒が個人でできることを教室での活動から切り離す」「各教科(+探究)での学びの重なりをうまく使う」などの対処が欠かせないはずです。単元の構成に沿って、学習内容の理解を欠けるところなく形成しつつ、要所では課題を設定…

自分事としての目標か~達成への行動を考える前に

進路希望なり、将来の夢なり、目標となるものを決めたら、それを達成するためにクリアすべき課題が何かを洗い出し、その一つひとつにどう取り組んでいくかを考えていく必要があるのは言うまでもありません。目標達成の要件/課題を正しく捉え、それを充足するための行動を持ち時間の中に効率よく配列しておかないと、無駄なことに時間を費やしたり、肝心なことが意識から漏れて手付かずになったりしがちです。最上級生となる3年生…

分業で行う出題研究のフィルタリング #INDEX

授業内外に用いる課題に、生徒が志望する/目標とする大学群の入試出題から選び出した良問を用いることで、様々な効果が得られます。今学んでいることが、どのような問われ方をするのかを知れば、学び方にも方向性が得られますし、解けたことで、自分の進路希望が「努力で届く範囲」にあると感じることからの好影響も小さくありません。過去問から好適な問題を選び出して授業に用いるためには、出題研究の充実が欠かせませんが、先…

分業で行う出題研究のフィルタリング(その6)

指導と評価に、良問を効果的に活用するには 出題研究を行い、そこから選び出した良問を学習指導に役立てる機会と方法には様々なものがあります。授業の課題/教材として活用すること以外にも、定期考査や実力テストの出題に転用したり、高い学力を備える生徒の意欲に応える任意課題としたりするケースなどもあります。いずれの場合でも、生徒に与える前に欠かさず行いたいことは、前稿でもふれた「生徒側のレディネスを確認するこ…

分業で行う出題研究のフィルタリング(その5)

選び出した良問は、指導カレンダーにきちんと配置 先生方の分業と協働によるフィルタリングを通じてせっかく選び出した良問ですから、きちんと指導カレンダー上に配置して、授業内外の課題として活用していきましょう。眠らせておいても意味はありません。その際、教科書などに沿って進行する単元と、出題の中心テーマが一致するものを機械的に配置していけば良いというものではありません。その問題/課題を使って、どんな能力(…

分業で行う出題研究のフィルタリング(その4)

作業全体の効率を高めるための手順(進め方) 生徒の進路希望の分布などに基づき出題研究の対象とする範囲(大学や学部)を決めたら、各々に担当を割り振って、第一段階の審査(価値の低い問題を予め除外するフィルタリング作業)に取り掛かりましょう。個々の授業/単元での授業のデザイン(指導計画の中への「良問」の配列とその使い方)の検討に十分な時間を確保できるように、如上の第一フェイズまではできるだけスピーディー…

分業で行う出題研究のフィルタリング(その3)

良問/悪問の選別は仲間と手分けして効率的に 様々な学力要素(知識や理解のみならず、21世紀型能力で言うところの「基礎力」や「思考力」を構成する能力群も含めて)をしっかり測定できる「良問」をどれだけストックできているかは、学習指導の効果を大きく分けます。それらを軸にした授業デザインは、新しい学力観の下での指導を可能にしますし、テスト問題として課せば、学力の向上過程を捉え、ここから何をどう学んでいくべ…

分業で行う出題研究のフィルタリング(その2)

出題の要求を知り、それを満たす活動を配列する 生徒が進路希望先として挙げる大学群の出題例を授業内外の課題とすることには、様々な効果(前稿を参照)が期待できますが、ただ持ち込むだけでは弊害の方が大きくなるリスクがあります。教室に持ち込む前に問題を十分に吟味し、その要求をしっかり把握し、それらを満たせるだけの授業をデザインしておかなければなりません。ときには、出題に加工を施すなどの対処が必要なこともあ…