月: 2023年6月

論述問題対策の前段階~要約の練習(前編)

新課程への移行で、思考力、表現力、判断力の重要性が高まりました。読んで理解したことを元に思考を展開し、その結果に他者の理解と共感を得られるよう適切な表現を与える力を育み、評価する手段として「論述問題」を課すシーンも、以前に増して多くなっているかと思います。読んだり話し合ったりして集めた様々な材料(情報、知識、気づき)を土台に、自分の考えを展開する前に、しっかり行わせたいのが、それらの材料を筋道を立…

到達目標は適正な水準にあるか~大学編(後編)

前の記事では、大学で行われる授業評価アンケートで、到達目標の設定が適正な水準にない授業でうけた高い評価を鵜呑みにすることのリスクを指摘させていただきました。目標水準の設定が適正かどうかを確かめる仕組を整える必要があります。既にご紹介した通り、授業の目標を達成できた/できそうかを尋ねる質問と、学習時間を把握する質問とが併存している授業アンケートでは、後者の結果で回答を二分したうえで、前者の回答を捉え…

到達目標は適正な水準にあるか~大学編(前編)

大学生があまり勉強しない――批判的な文脈でよく耳にする話題です。欧米に比べ、あるいは小学生と比べても、学習にかける時間が極端に短いとまで言われる始末。小学生と大学生を一緒くたにするのはどうかと思いますが、それはそれとしてひとまず脇に置いて…。大学からお預かりした授業評価アンケートのデータを見ても、大学設置基準が「標準」とする、授業1回あたり2時間以上の勉強時間を授業外学習に投じている学生の割合は確…

学修時間を延ばすには(大学偏)

大学における授業での「学習時間の延伸を図る方策」について、考えるところをまとめてみました。最初にこの記事を起こしてから10年近くになりますが、現実の教室での状況はあまり変わっていないようです。これまでに、様々な大学での授業評価アンケートのデータを拝見する機会を得ましたが。集計結果を合理的に説明するために立てた仮説から、具体的に採るべき「教室で採るべき方策」も見えてきたところです。 2014/11/…

学修時間を延ばすには(大学偏)(その4)

前稿の通り、発表やディスカッションの機会を用意することは「不明解消」への動機づけになりますが、活動に対する評価の基準を明確にしておかなければ、そこにどう関わればよいか学生が戸惑います。場合によっては、徒に発言数を増やすだけの学生や、相手の発言を受け取らずにあさっての方向に議論を乱してしまう学生も出てきそうです。本人のみならず、周囲の学びも歪めてしまっては一大事でしょう。 2014/08/22 公開…

学修時間を延ばすには(大学偏)(その3)

平均学習時間との間で有意な正の相関が確認される項目には、「わからないことがあったとき、自らその解消に努めているか」もあります。確かに、わからないことがあって解消しなければならなければ、方々を調べてみたり、誰かに聞いてみたりしているうちに、自ずと一定の時間を学習活動に投じますので、両項目間に相関が生じるのも当然です。 2014/08/21 公開の記事をアップデートしました。 ❏ まずは解消すべき不明…

学修時間を延ばすには(大学偏)(その2)

前稿の後半で触れた「ちゃんと課題は与えているのに学習時間が伸びないケース」では、点検してみるべきことが幾つかあります。その最たるものは、学生にとって「課題の達成可能性が担保されていたか」です。課題を解決するのに必要な知識や理解、発想、あるいは参照手段への習熟などが授業の中で十分に整えられていなければ、課題に挑もうとしても、あるいは指示に応えようとしても、躓くばかりです。課題に挑んでも「できない自分…

学修時間を延ばすには(大学偏)(その1)

授業準備(予習)や、復習を含めた事後学習に投じる時間(所謂「授業外学習時間」)の十分な確保は、中高のみならず、大学でも長らく課題とされてきました。特に関心が高まったのは、平成24年に中央教育審議会が「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」という答申をまとめた頃でしょうか。学生による授業評価アンケートで授業1回あたりの平均学習時間を尋ねる項目を追加する大学も多く見られました。以来10年余…

生徒と信頼関係を構築する

生徒から信頼される存在でありたい、というのはすべての先生の思いだと思います。信頼関係は、築くには相手と共に過ごす中での様々な積み重ねが必要な一方、些細なことで崩れてしまう「脆さ」もあります。生徒は、学校生活を送る中で大小様々な問題を抱えますが、そんなときに必要なのは、信頼して相談できる相手(=先生)の存在です。また、周囲から受けた刺激を正しく消化し、「より良い自分/より良い未来」への道筋を描くにも…

教わって知ったことvs気づいてわかったこと

授業のスタイルは実に様々ですが、個々の授業を特徴づけるパラメータの一つに「問い掛けの多さ」があります。教わったことを一つひとつしっかりと覚える努力も大事ですが、学び手の側からすれば、自らの気づきがないものを覚えるだけでは面白みもなく、自分ごととして学びに向かう意欲も維持しにくいかと思います。調べさせたり、考えさせたりして、生徒が自ら気づいてわかったことをどれだけ多く出来るかが問われるところ。調べた…

夏休みを迎える前に(まとめページ)

早いもので今年も半分が過ぎようとしています。夏休みも間もなくですが、年度当初から取り組んできたことがどれだけ成果を上げているかを点検して、秋からの指導に見通しを立て準備を進める重要な時期です。教科担当者として、ホームルーム担任として、あるいは分掌の立場で、それぞれに振り返るべき点があろうかと思います。また、管理職の視点からも学校全体の動きを俯瞰し直してみる必要があるはずです。また、授業改善を確実に…

家庭学習の質と量(深く確かな学びの実現のために)

生徒の家庭学習時間を定期的に調査している学校は少なくありません。中には、平均学習時間について数値で「指導目標」を設定している学校も見かけますが、学年平均を算出するだけだったり、データが指導の改善に有効活用されていないケースも散見されます。「学習時間調査」の目的と方法について、改めてきちんと考えてみる必要がありそうです。 ❏ 目標時間を達成したかどうかで成績などに違いはあるか 当然ながら、授業外の学…

予習・復習で何をさせるか~目的に応じたタスクの選定

予習は、授業準備を通じて前回までの授業で学ばせたことを実地に練習させる機会です。せっかく学び方や取り組み方を学ばせたのに生徒自身に行わせず、いつまでも先生が肩代わりしているようでは、生徒はその方法に習熟する機会を得られません。復習にも様々な目的がありますが、当然ながら、「忘れないように習ったことを繰り返す」ことだけがその目的ではありません。より広く視野を持ち、適切な指示と指導ができているか常に振り…

予復習のデザインに加えて、履行率を高める工夫を

前々稿、前稿で予習と復習でどんなタスクに取り組ませるかを考えましたが、もう一つ重要なことは「いかに履行率を高めるか」です。どんなに明確な目的をもって予復習のタスクをデザインしても、履行してくれないことには効果は得られず、却って様々な弊害を招きます。 2015/04/16 に公開した記事を再アップデートしました。 旧タイトル「予習・復習で何をさせるか(その3)」 ❏ 小テスト頼みで予復習の履行率を上…

復習の目的と課すべきタスクの考え方

予習は「授業で学んだ方法を試して身につける場」と捉えて生徒に課すべきタスクを選択する必要がありますが、復習もまた、単に「習ったことを忘れないように反復する」というだけの場面ではないはずです。 といったところにも復習という活動の目的があります。 2015/04/15 に公開した記事をアップデートしました。 ❏ 習ったことを忘れないようにするには反復+活用 記憶は、記銘、保持、想起という3つの過程から…

予習の目的と課すべきタスクの考え方

新学期の授業開きで生徒に求めた予習や復習への取り組み方を、生徒はどのくらい身につけているでしょうか。また、その指示に従った生徒は学力と学習意欲を(期待通りに)向上させているでしょうか。ノートチェックや小テストで履行を促したところで、「取り組んだことの成果」を生徒が実感できなければ、教える側の思いを押し付けただけになってしまいます。 2015/04/14 に公開した記事を再アップデートしました。 ❏…

頑張りをきちんと評価する~学びの意欲向上のために

いつになく頑張った/上手く行ったと自分では思っていたときに、誰もそれと気づいてくれなかったり、評価してもらうどころか、あら探しやダメ出しをされたりでは、次に向けて頑張る気持ちも萎えそうです。褒めれば伸びるというものでもないと思いますが、正当な評価は生徒の自己肯定感を刺激し、同時に与えられる的確な助言は次の機会に向けた課題形成に繋がり、さらなる頑張りとその結果としてのより良いパフォーマンスを引き出し…

問い掛けの多い授業が良い授業 #INDEX

問い掛けには、様々な役割と機能があります。知識や理解を確かめるという基本機能に加えて、問題意識を刺激する、思考や行動を引き出す、着眼点を獲得させる、課題解決のプロセスを共時的に体験させるといった場面でも、問い掛けは大きくその役割を果たしてくれます。学びの場に必要な生徒への働きかけの大半は、問い掛けで実現できるのかもしれません。題意を理解する、解法を考える、多様な立場や取り組み方があることに気づかせ…

問い掛けの多い授業が良い授業(その3)

生徒自身から問いを引き出す 問い掛けには、生徒に記憶を検索・想起させたり、問題意識を刺激して思考や内省を促したりする機能があります。発想や着眼点を広げさせたり、行動を起こさせたりする場面でも、説明や指示よりも問い掛けの方が効果的なことも少なくありません。(前々稿参照)前稿、前々稿では主に、先生から生徒への問い掛けについて考えてきましたが、教室という学びの場を考えると、生徒から生徒への問い掛けもあれ…

問い掛けの多い授業が良い授業(その2)

問い掛けにきちんと反応させる仕掛け 前稿の通り、発問を軸にして授業を構成することには、生徒の思考や行動を引き出したり、説明などの情報をしっかり受け止める態勢を取らせたりする効果があり、課題解決のプロセスを共時的に体験させていくにも、発問は重要なガイドになります。cf. 問答を通じて論理性を養うどんな問いを発するかで、生徒が身につける学力がまったく違ったものになるのは、拙稿「どんな問いを立てるかで授…