知識の活用、学びの仕上げ

質問を引き出す~学びを深め、広げるために(続編)

前稿「質問を引き出す~学びを深め、広げるために」で書いた通り、質問を見つけ出して文字に起こすことを求めたら、生徒はノートや教科書を見返して「疑問点」や「その先を覗きたい箇所」を探し始めます。漠然とした「よくわからない」に止まっていては、質問の形での言語化はできませんので、否が応でも「何がどうわからないのか」を明らかにせざるを得ず、その中で学びはより深く確かなものとなっていきます。同時に、対象を精緻…

質問を引き出す~学びを深め、広げるために

ひと通りの学習を終えた場面で生徒に質問を考えさせれば、そこまでの学びを振り返らせることができます。質問を考えさせるのは、生徒に問いを立てさせることに他ならず、教材に深く関わる好機になります。しかしながら、「質問はありませんか」と声を掛けるだけでは、その後の展開は期待薄でしょう。もともと積極的な生徒が手を挙げてくれたとしても、他の生徒は押し黙ったまま時間が過ぎるのを待っています。生徒からの質問があれ…

出題研究を通して"問い方"を学ぶ

獲得した知識や理解を活用して解決する課題を軸にした授業デザインを採ることで、「学習目標の把握」「授業内活動の充実」「理解確認の徹底」といった学習効果を高めるための必須要件の大半を効率よく整えることができるのは、別稿「知識活用の機会を整えて授業改善を加速」でデータを添えてお伝えした通りです。 2017/09/25 公開の記事を再アップデートしました。 ここで問題になるのが、どのような問いを用意して「…

単元を跨いで作る、習ったことを使ってみる機会

授業で学んだことを使って答えを導くべき問いは、学習目標を理解させるために導入フェイズで示すターゲット設問としても、授業を終えるときの学びの仕上げの題材としても大きな役割を果たします。 しかしながら、「個々の授業で学んだこと」を使う機会は、その日の授業(あるいは単元)に閉じた如上の問い/課題以外にも、その後に学ぶ別の単元の中にも設けることができますし、設けるべきです。ある単元で既に学んだ重要なことが…

目標を見つける入り口~日々の学びでの興味・関心

目標を持った状態で巣立たせるには、日々の学びの中に興味や関心を見つけてもらうことがスタートです。興味は自力で考え工夫して達成したこと(=できるようになったこと)の中に生まれ、関心は「自分事」として認識できる課題に触れて芽生えてきます。せっかく生まれた興味・関心もそのままにしては、深化・拡張することなく埋もれてしまいます。機を逃すことなく、探究的な学びで興味を掘り下げ、関わりの視野を広げることで、「…

総合学習/探究活動における「知識の活用」

各教科の学習指導において「評価」を行うのは「生徒一人ひとりの学びをより良いものにする」ためであるのは言うまでもありませんが、これは探究活動や進路指導においても同じだと思います。獲得すべき知識や技能(=各単元に固有の知識など)がきちんと身についていなければ、それを補う機会を与える必要がありますし、知識や技能を「生きて働かせる(=活用する)」ことができていないようなら、できるようにさせなければなりませ…

"正解を言って欲しい"と言う生徒

生徒や学生にアンケートで授業への感想を尋ねてみると「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと混じります。先生は意図をもって敢えて正解を示していないのが傍からも明らかな場合にもです。ここから垣間見える問題は、「答えは与えられるものではなく、自分で作るもの」という発想をしっかり持っている生徒・学生ばかりではないということではないでしょうか。 2018/04/11 公開の記事を再アップデート…

解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える

単元内容が明示され、何を学び、何を身につけるべきかが示されたとしても、その前段階として、「何のために学ぶのか」という問いに生徒が答えを見いだせないことには、「学ぶことへの自分の理由」は生まれてこないのではないでしょうか。自分の理由がなければ、所詮は他人事。身を入れて学ぶ気にならなかったとしても、生徒を責めるわけには行かないような気がします。何のために学ぶのかという如上の問いには、「学ぶことがどのよ…

授業を終えてからの学びの「仕上げ」と「拡張」

授業は50分という限られた時間の中で行われるものですから、その中でできることには自ずと限りがあります。授業内での学びで得た知識や気づきを携えて課題にじっくり取り組み、学びを深く確かなものにすることや、教室での学びの中で刺激された興味や関心に沿って学びを拡張していくことで、学びの総量(深さ✕広さ✕密度)を大きくしたいものです。 2020/01/27 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 教室での気…

学ばせたことは、きちんと教科書に落とし込む

教室での学びを「きちんと教科書に落とし込む」ことには以下の効果が期待されますし、実際に教室で試してみるとその手応えも十分です。 個々の学習内容を全体像の中においた体系的な理解が形成できる 教科書を深く学べば受験にも対応できるとの安心感が得られる 教科書をきちんと読む[読めるようになる]ことに動機が生まれる しかしながら、授業時間の不足もあってか、その重要性にあまり目が向いていないのか、教科書の落と…

教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計

中学に続き、高校も新課程に移行した今、これまでと同じように教えていては、学ばせること(学習内容)は減らさず、様々な能力(21世紀型能力でいうところの「基礎力、思考力、実践力」)をより高い次元で獲得させていくという要求には応えきれません。教室を離れた生徒が個人でできることと、教室でしかできないことの線引きをこれまで以上に明確にした上で、後者に重点をおいた授業デザインへの転換が求められます。 2020…

活動させるだけでは学ばせたことにならない

授業のデザインでは、従来の「教えること」から「学ばせること」に発想を切り替えていく必要がありますが、生徒を学習活動に取り組ませることを自己目的化してしまえば、深く確かな学びは実現しません。よく言われる「教え過ぎない」というのは、生徒に取り組ませるべきことを不用意に肩代わりしないということですが、これを曲解してしまったのか、「生徒に活動をさせるだけで、きちんと学ばせていない授業」が生まれてしまってい…

やりきらせる責任~仕上げ切らないことを習慣化させない

課題に取り組み、努力や工夫で達成できたら、生徒の中には自信が生まれ、達成への過程では新たな能力や資質を獲得し、課題への向き合い方も学んでくれますが、レディネスや時間の不足で課題を完遂することができなかったら…。生徒にとっても面白かろうはずがありません。やるべきことを完遂しない/できないでいることを不用意に繰り返させていては、学ぶ意欲や完遂を目指す姿勢は失われていくばかり。その先で得られた可能性のあ…

やりきらせる責任(その2)

知識の獲得・拡充を図る場面でも、獲得した知識を活用して課題に解を導く場面でも「適切な支援を行って完遂に導くこと」は指導者が果たすべき責任です。やりきらない/仕上げきれないことを習慣化させたときに生じる弊害は小さくありません。努力や工夫を重ねて物事を完遂した達成感は、生徒に自信を与えるとともに、その過程で様々な学びの方策を身につけさせていきますが、それと逆に、挑んでみて壁に跳ね返される体験を重ねさせ…

やりきらせる責任(その1)

与えたものをきちんと仕上げさせることは、教える側が常に意識をしておかなければならないこと。課題を与えた以上、達成/完遂させるのは与えた側の責任です。やりきらずに放置した経験/課題を達成できなかった体験を繰り返させるうちに、意図せず、それで良しとする意識や姿勢を「学習」させてしまっては一大事です。生徒に与える課題には、持てる知識や思考力を使って課題解決に当たらせるタイプと、与えたものを覚えさせるタイ…

クイズで導入、教科書への落とし込みで仕上げ

2019年に出版されてベストセラーになった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』では、その冒頭に簡単ながら、答えがちょっと意外なクイズが 13 個用意されています。例えば、こんな問題です。 自然災害で毎年亡くなる人の数は過去100年でどう変化したか。{2倍以上になった/あまり変わっていない/半分以下になった} 単純な三択問題ですので、まったく手掛かりなしに当てずっぽうで答えたとしても33%…

生徒が解法を考える機会(解に至る工程を自力で辿る)

講義座学系の教科で「授業を通じて学力の向上や自分の進歩を実感できるか(学習効果)」に対し大きな寄与度を持つ項目の一つに「習ったことを使って課題解決に取り組む機会(活用機会)」があります。しかしながら、習ったことを使って課題解決に取り組む機会を整えている度合いは、個々の授業で「かなりまちまち」というのが現実の様子。教科による違い(有利・不利)もありますが、データを見る限り、先生方の「学ばせ方」で生じ…

課題解決を伴わない知識獲得は… #INDEX

新課程におけるカリキュラムマネジメントでは、各単元の内容(コンテンツ)を学ばせることを手段に、21世紀の社会を生き抜くために必要な能力・資質(コンピテンシー)を育むという目的を達成していくとの発想を持つことが求められます。実際のカリキュラム編成や指導計画立案においては、各単元の学習内容を縦軸(行)に、育むべき能力・資質を横軸(列)に配したマトリクスを想定し、行と列の交点にある各セルに適切な学習活動…

課題解決を伴わない知識獲得は…(データ検証編)

だいぶ古いお話で恐縮ですが、平成28年に文部科学大臣名で発信されたメッセージ「教育の強靭化に向けて」では、学ぶことがら(知識や技能)は減らさず、思考力・判断力・表現力をこれまで以上に鍛えるという方針が示されました。当時、「ただでさえ不足気味の授業時間の中で、教えるべきことをきちんと教えた上で、思考力・判断力・表現力を鍛える指導まではとても手が回らない」というご感想や戸惑いが多く聞かれたのを覚えてい…

理解確認と活用機会はバランスを取って

授業評価アンケートの結果をみると、理解確認と活用機会のバランスを欠く授業が少なくないことがわかります。下図は、授業評価アンケートをご利用いただいた学校でのデータで作成したものですが、理解確認と活用機会の双方が一定以上の水準に達している授業は全体の一部です。 2015/07/14 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 覚えることに偏らず、活用の前提もしっかり整える 理解確認と活用機会の双方を高い次…