カリキュラム・年間指導計画

参照型教材を徹底して使い倒す#INDEX

教科書の配列に沿って各単元を学んでいくのと、副教材を使って別ルートで知識の拡充を図るのを並行させるのは好適な戦略とは言えません。主教材を軸に学びを進め、わからないこと/知らないことに出会うたびに参照型教材のページを開かせ、生徒が自力で必要な知識と理解を得るようにさせることが大切です。学期が進むにつれて、参照型教材が使い込まれ、書き込みが増えてきたら、生徒はその科目の知識と理解とともに、学び方を身に…

参照型教材を徹底して使い倒す(その5)

問いを起点に理解の軸を形成、知識拡充はその後で 演習(拡張)期、受験(仕上げ)期を待たずに、導入期のうちに基本事項を網羅的に学ばせることには、前稿までの考察の通り、あまり大きなメリットはなさそうです。必要な知識を最初に仕込み切ってしまうという戦略には、「教えられたこと」と「覚えたこと」のギャップを拡大し、生徒にゴールを遠くに感じさせてしまうリスクの方が大きいのではないでしょうか。 2015/10/…

参照型教材を徹底して使い倒す(その4)

ステージごとの学習者特性の違いを踏まえて 学習はその場で完結するものではありません。次のステップに進むための準備(レディネス)を整えることも重要な指導目標の一つです。既習単元の知識がその先の内容を理解するための前提になることは当然ですが、ある単元を学ぶことで身につけた学び方もまた、次以降の単元を学んでいくときの重要な土台になります。不明点があるとき、先生が教えてくれるのを待つのではなく、参照型教材…

参照型教材を徹底して使い倒す(その3)

導入期から仕上げ期に向かう流れで考える「使い方」 前の記事では、参照型教材(いわゆる参考書だけでなく用語集や例文集も含まれます))を常に手元に置かせ、頻繁に使わせることで得られるメリットを考えました。文章を読んだり問題を解いたりしながら、機会ある度にページを開いて使い倒してきた参照型教材は、いつしか生徒にとって「学習を進めるときの大きな拠り所」になっているはずです。使いながら書き込まれたメモは、以…

参照型教材を徹底して使い倒す(その2)

不明を前にしたら手元の教材を参照する習慣を 前稿(その1)では、課題解決に使う場面を十分に経験させないまま、知識の拡充を図ったり、体系的な理解を形成しようとするアプローチのリスクと、コスパの低さについて考えるところをまとめました。生徒にとっての自分事となり得る課題を用意し、それに立ち向かわせる中で、知識の獲得と理解の形成を図っていく、所謂PBL型(課題解決型学習)の授業/学ばせ方への転換を図る中で…

参照型教材を徹底して使い倒す(その1)

記銘のための反復は、課題解決に活用する中で 例えば古典の授業では、まとまりのある文章を題材にした読解指導に入る前に、文法をひと通り勉強させるという手順を採ることがあります。ある程度の体系的な文法理解を作ってからでないと読解に入ってからも躓きが多くてスムーズに進めないという思いからの選択でしょう。英語でも、主教材と切り離して単語集や例文集を個々に覚えさせていくのは「普通」ですし、概説書をひと通り学び…

到達目標は適正な水準にあるか~大学編(後編)

前の記事では、大学で行われる授業評価アンケートで、到達目標の設定が適正な水準にない授業でうけた高い評価を鵜呑みにすることのリスクを指摘させていただきました。目標水準の設定が適正かどうかを確かめる仕組を整える必要があります。既にご紹介した通り、授業の目標を達成できた/できそうかを尋ねる質問と、学習時間を把握する質問とが併存している授業アンケートでは、後者の結果で回答を二分したうえで、前者の回答を捉え…

到達目標は適正な水準にあるか~大学編(前編)

大学生があまり勉強しない――批判的な文脈でよく耳にする話題です。欧米に比べ、あるいは小学生と比べても、学習にかける時間が極端に短いとまで言われる始末。小学生と大学生を一緒くたにするのはどうかと思いますが、それはそれとしてひとまず脇に置いて…。大学からお預かりした授業評価アンケートのデータを見ても、大学設置基準が「標準」とする、授業1回あたり2時間以上の勉強時間を授業外学習に投じている学生の割合は確…

ホームルームの年間実施計画

新学期に向けて、各教科の年間指導計画は完成に近づいていることと拝察いたしますが、各学年におけるロングホームルームの年間実施計画の作成は進んでいるでしょうか。年間で30回ほどの貴重な指導機会に、生活、学習、進路の各領域の到達目標を達成するための活動を余さずに配置するには、実施計画を十分に練る必要があります。活動の一つひとつに優先順位をつけて、限られた指導機会という枠に落とし込んでいこうとする中で、こ…

過去問演習への取り組ませ方(指導計画への組み込み)

受験期に限らず、大学入試の過去問を授業内外の課題に採り入れることは、「今やっている勉強がどう問われるか/どんな場面に繋がるのか」を生徒に知らしめる効果的な方法です。学びに方向性を持てるようになるなど、生徒にとっても小さからぬメリットがあろうかと思います。しかしながら、大切なのは過去問の使い方、取り組ませ方です。単純に過去問演習を増やし、出題の形式に慣れさせ、解法を知っている問題を増やすだけでは、演…

授業外の学習指導機会の位置づけと実施方法

補習や講習など、学校では様々な学習指導の機会が「授業外」に設けられていますが、通常の(=教育課程の中に設定されている)授業との関連付けが曖昧なまま、それ以外の指導機会(補習や講習)が「追加」されているだけのケースが少なくないように思われます。生徒が学習に向けられる時間には「枠」があります。そこに色々な指導機会を加えていくだけでは、あふれ出すものが増えるばかり。個々の指導機会の関連付けを明確にして、…

年間行事予定の書きだし方#INDEX

向こう3か月、半年、1年、…と先を見渡して、選択の場、越えるべきハードルを意識して過ごす日々と、次々に訪れるイベントを特に準備を整えるわけでもなくただ経験していくだけの毎日とでは、歩みに大きな差が生じます。卒業までの3ヵ年/6ヵ年で到達できるところ(=教育成果)にも大きな違いが生じるのは想像に難くありません。 2016/03/11 公開の記事インデックスを再アップデートしました。 生徒が先の予定を…

年間行事予定の書きだし方(その5)

年間行事予定に配された様々な指導の一つひとつの背後には、生活、学習、進路の3観点での段階的到達目標が存在しているはずです。既存の年間行事予定や来年度の原稿を前に、各行事に込められた指導意図を取り出してみる(=言語化してみる)ことで、これまでの指導計画/行事予定に朱入れすべきところが明らかになるというのが前稿の主旨です。この工程を踏むことで、段階的に設けるべき到達目標を正しく配列した適切な構造に改め…

年間行事予定の書きだし方(その4)

年間行事予定の起草は、単にカレンダーを諸行事で埋めていくことではありません。領域ごとの段階的な到達目標が正しく配列されているか、その目標群を達成するのに必要な指導の機会が過不足なく用意できているかを確認しながら、教育リソースの最適配分を実現すべく調整を重ねることだと思います。選択の場としての行事であれば、そこに至る準備が十分に行えるだけの期間とプロセスが用意されている必要があります。体験や学びの場…

年間行事予定の書きだし方(その3)

あらゆる指導機会は、時期や段階ごとに目指すべき「到達状態」に生徒を導くために設けられるものである以上、年間行事予定に記載されるすべての行事は、学校の教育目標と「生活」「学習」「進路」の三領域のいずれかで関連付けられていなければなりません。これを着実に実現するには、本稿でご紹介するような前工程をしっかりと踏んでおく必要があると考えます。 2014/07/28 公開の記事を再アップデートしました。 ❏…

年間行事予定の書きだし方(その2)

年間行事予定表は生徒が常に参照できるようにしておきましょう。先の予定をきちんと把握していれば、次にどんな選択や課題が控えているのか、それに向けて何をすべきなのか、生徒の意識は自ずと高まります。心構えも準備もなく、指導機会に臨んだり行事に参加したりでは、そこで得られるものはぐっと減ってしまいます。何を学ぶのか、そのためにどんな準備が必要なのか生徒自身が考える機会を作ることが大切です。もっとも、年間行…

年間行事予定の書きだし方(その1)

どの学校でも作られている年間行事予定表。様々な行事が組み込まれ、生徒には行事にじっくり向き合える、忙しすぎない学校生活を送らせてあげたいと思っても、そうそう行事の整理・再編は進みません。すべての行事を3年間/6年間のカレンダーに落とし込むだけでも容易ではなく、分掌や学年、生徒会との調整に当たる先生のご苦労ばかりが目に浮かびます。どうにか行事を配列できても、それでOKという訳ではありません。年間行事…

教材としての大学入学共通テスト問題

週末に行われた大学入学共通テスト。様々な学びの場を想定した出題など、工夫の数々が見て取れます。新しい学力観の下での「学ばせ方」を改めて考える材料として、しっかり目を通したいと思います。出題研究は「教科書で何をどう学ばせるか」を捉え直す機会。指導観/授業観のアップデートに欠かせません。各単元の内容を学ばせる過程にどんな学習活動を配列することで、どんな能力・資質を養っていくかをしっかりイメージしないと…

令和7年度(2025年度)の大学入学共通テスト

先週水曜日(11月9日)に大学入試センターが「令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等」を公開し、大きな話題になっています。国語でも、グラフがいくつも問題に組み込まれ、データを基に考察する場面が設定されるなど、ひと昔前の出題とは大きく様変わりです。試作問題に添えて公開された「問題作成方針に関する検討の方向性について」や各科目の「試作問題の概要」にも目を通した上で、どのような方向で今後の学習指導…

進級後の指導を見据えて(円滑な学びの接続)~まとめ

教科学習指導にしても、進路指導や生活指導にしても、単年度で指導が完結するわけではありません。ある学年での指導は進級/進学後に必要になるものを獲得させるためのものでもあり、そこでの指導目標が未達なら、先の指導は補完やフォローに追われ、計画は崩れていきます。カリキュラムは、単元内容を理解させることを手段に、様々な能力・資質を獲得させるために編まれているものですので、各単元の学習内容を理解させるだけでは…