グループワークで作る学びへの積極姿勢

授業評価アンケートの自由記述意見を読んでいると、グループワークを多く経験する中で、協働での学びに貢献する「責任」を感じた、「役割をきちんと果たさなければ」との思いを強くした、といった記述に出会うことが少なくありません。
グループワークは、個人の発想を超えたところに解を見出すことを目的に、集団知/分散知の活用や対話による気づきの交換を図るために採り入れる活動ですが、協働を経験する中で、個々の学習者としての成長や積極的な学びの姿勢の獲得といった副産物にも期待が持てます。

❏ 学びを放棄しないことで得る達成観と自己効力感

自分のためだけの学びなら、面倒くさくなったり、無理かなと思ったりすれば「あきらめる」というカードも切れます。
簡単にあきらめてしまっては、その先も頑張り続ければ得られたかもしれない「実」を手にせず学びを終えることになりますが、チームに貢献しなければならない状況は、学びの放棄を押し止めてくれます。
周囲に対して感じる責任という、「学ぶことへの自分の理由」とは別の動機からであっても、学び続けることで、どこかで目標を達成(=当座の課題を完遂)する瞬間が訪れます。
集団知の活用で一人で挑戦したら返り討ちにあった課題に歯が立つようになることも、対話による気づきの交換で誰も一人では思いつかなかった「より良い答えへのアプローチ」が生まれることも多いはずです。
そうした体験の中で得た「達成感」は次の学びへのモチベーションにもなりますし、頑張る中で新たに学びの方策が身についた/新たな手札を獲得したと感じれば、その先の学びの中で次の課題にチャレンジするときにもより強い「自己効力感」をもって臨むこともできるはずです。
しっかりと設計されたグループワークなどの協働を十分に体験させることは、個々の課題により高い解決可能性をもたらすだけでなく、学習者としての成長、主体的に学ぶ姿勢の獲得にも寄与するということです。

❏ 協働や他人との関わりが苦手という生徒への配慮

グループワークなどの協働には様々な効果が期待できますが、生徒の中には周囲との関わりを苦手とする生徒がいることにも留意しましょう。
冒頭で触れたアンケートの中には、「自分は他人と人間関係を結ぶのが苦手であることが改めてわかった」「これからは別の生き方を考えるべきだと知った」といった記述も散見され、否定的な自己イメージを強化してしまう結果になることもあるようです。
アイスブレイクを効果的に/十分に行うことも必要ですが、対人関係を苦手とする(思い込んでしまっている)生徒があまり負担を感じないで済むような仕掛けも講じて行きたいところ。例えば、

  • メンバーの面前で発表させる代わりに、答案/課題として提出させて、先生から一定の肯定的な評価を得た意見のみをクラスでシェア
  • 隣同士でのペアなど、やり取りが小さな範囲に閉じたところで意見を揉ませ、自信をもって発言できるようにさせる
  • 人間関係が固定しないよう、個々の生徒の様子をしっかり観察しつつ、フォーメーションを十分な頻度で変更する

といったことにも、一定の効果は期待できそうです。また、討論に参加する準備(個人ワーク)が不十分なままでは、意見を言っても取り上げられなかったり、反論されて凹んだりすることも多くなるはずです。
しっかり準備してから議論に参加できるよう、課題の付与から個人での準備を経てグループワークに至るプロセスをしっかりと設計することもグループワークが苦手という生徒を増やさないカギになります。

❏ 協働には様々な関わり方があることも学ばせる

また、グループでの協働ではすべてのメンバーが同じ役割を担うわけではありません。現実の社会でも、メンバー全員が同じ役割を取り合っては「船頭多くして船山に上る」で、上手くいかないことが多そうです。
リーダーもいれば、それをフォローする人もいますし、調査や情報を集める作業で力を発揮する人もいるでしょう。議事を整理し、記録するのを得意とする人もいるはずです。
教室でのグループワークでも、ある程度まで役割を決めて取り組ませるようにすれば、リーダー役は苦手でも書記でなら頑張れる生徒も救われるかもしれません。
負担や苦痛を感じなくてもすむ、自分なりのコミュニティへの関わり方を学ぶ/見つけ出すことができれば、その後の人生の中でも不要な自己否定の気持ちを持たずに、協働に加わりつつ、少しずつ様々な関わり方/役割の担い方も学んでいけるように思います。
自分にあった協働に参加する方法を見つけることは、より良い生き方を手に入れることの一つ。そうした発見の場を作ることもご指導に当たられる先生方に求められる仕事の一つではないでしょうか。
苦手だからと言って、そこから遠ざかっているばかりではいつまでたっても克服できません。過度な負担を強いず、無理なく少しずつ経験させる中で、生徒一人ひとりにコミュニティに参加する自分に合った方法を見つけさせていきましょう。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一