成果発表会は、先生方が指導を振り返る機会

生徒が1年かけて取り組んできたことの成果は、取りも直さず、先生方が重ねてきた指導の成果にほかなりません。
成果発表会での講評者からの指摘や助言などからどれだけ反省(課題)と展望を得て、その先の活動に活かせるかは、生徒のみならず、先生方にも問われるところだと思います。
日々の学習でも、「振り返り」は次に向けた課題形成を図るのに欠かせませんが、特色ある教育活動として小さからぬリソースを割いて取り組んでいるものならば猶の事、きちんと振り返りを行い、継続的な改善をより確かなものにしていきたいものです。

2017/03/10 公開の記事をアップデートしました。

❏ 成果発表は締めくくりではなく、新たなスタート

総合的な学習の時間などを使った、課題研究や論文作成、探究活動などの成果発表会もあちらこちらで行わています。
これらを振り返りの機会として正しく利用できるかどうかは、その後の指導を大きく分けるはずです。「発表して終わり」ではありません。
最終プレゼンが上手にできたかどうかは、評価の観点の一つに過ぎず、一連の活動全体を通して何を経験し、各フェイズで何を学び、何を身につけることができたかこそに評価の重みを置くべきです。
成果発表を行った学年の生徒たちは、次の学年や上級学校に進んでからも、それまでの学びの成果を土台に、その上に立って学びを続けます。
現時点で足りていないもの、さらに一歩進むために必要なことを、どこまで認識できたかは、その後の学びを大きく左右するはずです。
肝心なのは、探究のマインドとスキルを身につけ、次に生かせるようになっているか、探究を通じて見渡せる世界に広がりが得られたかです。
これらはまさに、「未来を拓く力」であり、探究活動をカリキュラムに組み込んだときの目的だったはずです。成果発表を見る/評価するときは、ここにしっかりと視点を置く必要があると思います。

❏ 講評者からの助言を、次の行動に結び付ける”聴く姿勢”

外部から講評者を招いてコメントをもらっても、生徒が「やれやれ無事に発表が終わった」と言わんばかりの表情で、メモを取るでもなくリラックスしきって後の発表を聞き流しているケースすら見かけます。
中には居眠りしている生徒もいたりして…。これから先の成長にまたとない学びの機会であることをを認識できていない様子に、なんだかこちらががっかりしてしまいます。
成果発表会を通じて、何を目指すのか、その意味を生徒がわかっていない(=理解させていない)のかもしれません。もしかしたら探究活動に取り組んできた意味そのものを把握していないのかも…。
成果発表会に臨ませるときは、発表者としての準備だけでなく、聞く側としてのレディネス(聴く姿勢)をきちんと生徒に備えさせる事前の指導が必要だと思います。

❏ 指導者の視点で、発表への講評に耳を傾ける

成果発表の場で、それまでの成果と取り組みを振り返るべきは、生徒だけではありません。
指導に当たった先生方も、それぞれの生徒の発表を見て、そこに至った指導の成果を客観的に自己評価し、改善課題を明確にすることで、次の指導がさらに良いものになる可能性を膨らませます。
講評者からのコメントは、生徒だけに向いているのではなく、半分くらいは指導に当たった先生に向いているのだと思います。(少なくとも、私が講評者として御呼ばれしたときはそのつもりで話しています)
一つ下の学年の指導に当たる先生方にとっても、発表と講評には次年度の指導に活かすべき反省と教訓がぎっしり詰まっているはずです。
しかしながら、生徒の発表と講評者からの指摘・助言に次年度の学年団が揃って熱心に耳を傾けているとは限りません。(むしろ少ないかも)
講評者は、生徒の取り組みがどんな課題を抱えているのか指摘し、助言まで与えてくれているのに、講評者からどんな発言があったのかも知らないのでは、次年度の指導で同じ轍を踏みかねません。
学年が違えば、同時並行で別の指導を行っていて、発表会に足を運べないというのも想像に難くありませんが、1年間の指導の成果を評価し、次に生かす教訓を得る場と考えれば、優先順位は低くないはずです。
成果発表会の実施計画を立てる段階で、次学年の先生方がきちんと参観できるような配慮は出来ているでしょうか。
直接の参観が無理なら、ビデオで撮影しておき、後で動画を観られるぐらいの対応は取りたいところ。講評の内容を整理して書面に起こし、必要に応じていつでも参照できるようにしておくのも好適です。



成果発表会の現場に立ち会い、一つひとつの発表を見て、その場で自分が感じたことと、講評者からのコメントとを照らし合わせることで、生徒の活動を観察してきたときの視点に欠けていたものにも気づけます。
先生方のご専門によっては、本格的な探究活動にこれまであまり触れる機会がなかったかもしれません。ましてや総合的な探究の時間は多くの先生方にとって指導の経験の浅いところ。
書籍などでの学びだけでは見えてこないところもあるはずです。実地の場での学びを重ねる必要もあります。生徒の成果発表会は、指導者たる先生方が十分な緊張感をもって臨むべき場だと思います。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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