2学期の指導をより実り多きものにするために

秋は「実りの季節」ですが、9月に始まる学校の2学期もまた、生徒が様々なことにチャレンジする中でこれまでに重ねてきたことを「結実」させる大切な局面であるのは言うまでもありません。
3年生は進路希望の実現に挑み、2年生は進路選択という大きな分岐に臨みます。1年生も4月の入学から高校生として積み重ねてきたものを振り返り、これからの自分の行動にしっかり方向を持てるかどうかで、残り2年半の実りが大きく変わってくるはずです。

2017/09/13 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 休み明けの指導再開の前に目線合わせと現況確認

夏休みを終えて、教育活動を再開するに当たり、学年、教科、分掌などの様々な立場から、生徒のチャレンジにどうコミットしていくか改めて考えてみる必要があると思います。
9月以降に計画されている様々な指導機会の一つひとつについて、何を目指す場面なのか、生徒にどう取り組ませるか、学年・教科・分掌の中ですり合わせをする機会は確保できているでしょうか。
2学期/後期が始まるとしばらくはバタバタとした日々が続きますが、大切な課題が忙しさの中に埋もれないようにしたいものです。
指導機会の中で、とりわけ「進路希望や履修科目の調査」、それと前後して行う「進路面談」、受験本番までに幾度か予定されている「模擬試験」などは、事前の取り組ませ方/準備や事後の振り返りや仕上げ直しまでを見通して指導を考えておく必要性が高いものだと思います。

また、2学期の指導が目標とすることの達成を確実なものにするのに、予め補っておくべきことが現状のどこかに残っているかもしれません。
年度当初に立てた指導計画が完全に履行され、夏までの目標のすべてが達成できているのは寧ろレアでしょう。当初の見込みと、現実の9月の再始動とでは、立ち位置が多少なりともずれている可能性があります。
先の「目標や指導方針の擦り合わせ」に加えて、夏までに取り組ませたことの成果確認も忘れないようにしたいところです。

❏ 模擬試験に向けた準備、結果を受けての振り返り

秋にはどの学年も模擬試験が予定されていると思いますが、模試を受験させることの目的は学年によってそれぞれだと思います。
受験期を迎えている3年生は、大学入学共通テストなり、志望大学の個別入試なりに向けて、出題傾向に慣れて、試験時間の使い方を練習する「実戦的意味合い」が大きくなりますが、先生方にとっては個々の生徒の受験勉強の進み方をチェックする機会でもあります。
模擬試験ごとに生徒が自分の課題を明確にして臨まなければ、その期間の成果は小さなものになってしまいますし、模試の結果が戻るまで何のアクションも起こさず、漫然と過ごしては後手を踏むばかりです。
まずは、こうした意識が生徒にきちんと備わっているかどうかを確かめましょう。その上で、模擬試験の実施日を中心に受験勉強をスケジュールさせることも、9月初めにやるべきことの一つだと思います。
また、模試ごとの結果にどう向き合わせるかも、学年団でしっかり方針をすり合わせておかないと、指導にばらつきが生じてしまいます。

1年生、2年生もまた、模擬試験の結果が戻った後に何をするかはとても大切です。間違い直しを繰り返すだけでは、正しい学習方策も身につかないでしょうし、学習行動も改まりません。
夏までに受けた模試答案をもう一度見直させて、模試の受験日から逆算して、何をどこまで仕上げて当日に臨むかを生徒一人ひとりに考えさせる場は、2学期が始まると同時に持ちたいところですし、結果返却後の指導がきちんと計画できているかの確認もここで行っておきましょう。

❏ 進路希望調査などに向かわせるまでの指導

進路希望や来年の履修科目などの調査も予定されているはずです。調査用紙に記入させる前に、生徒一人ひとりが、選択に必要な情報をしっかり集めたか、自分事として選択に向き合って十分な内省を重ねたかをきちんと確かめておく必要があります。
調査用紙に記入したことは、後になっても修正できるでしょうが、調査に答えた(=言語化した)ことで生徒は(周囲の大人も)用紙に書かれたことを「既定の路線」とどこかで認識してしまうことがあります。
進路希望を調べるときは、前段階の確認も併せて行うことを徹底したいところ。選択に至るまでの工程を正しく踏んでいない「取り敢えずの選択」をさせないことが大切です。
確認の場として最も好適なのは、直接的な対話ができる面談であるのは言うまでもありませんが、調査と面談の順番がことのほか大切です。
調査票を提出した後の面談では、記入された内容を「前提」に今後どうするかを詰めることになりますが、十分な情報と内省に基づいていないことを前提にしては、間違った方向に生徒の背中を押しかねません。
調査に先駆けて進路面談を行い、情報の収集や内省が十分か(自分事としてしっかり向き合っているか)を確かめることが大切です。不足が見て取れたら、生徒に改めて「選択に至る工程」を辿らせ直しましょう。

面談では、「最適解を示すことより選択の力を養うこと」に重きを置くべきであり、生徒が選択に困っているからといって、決断を先生が安易に肩代わりしないようにしたいところです。先生方との相談で、周囲からの刺激を上手に消化させることこそが、面談の目的だと思います。

❏ 生徒に期待する行動や姿勢を改めて言葉にして伝える

もう一つ大切なことは、生徒に対し、生活、学習、進路の各領域で、どのような行動や姿勢を期待するかを、学年・教科・分掌それぞれの立場からしっかり言葉にして伝えることです。
学年や学期に応じて、生徒が向き合う課題は様々であり、どのように取り組んで欲しいか、先生方の期待があるはずです。それらを耳にして、意識にしっかり刻み込むことで、生徒は日々の行動に「指針」と「振り返りの基準」を持つことができます。
期待とともに、指導の方針やそこに込めた思いを伝えておくことで、生徒は個々の指導の背景にある意図を正しく理解できるようになります。
4月のオリエンテーションや授業開きでも同じようなことを伝えたはずですが、数ヶ月の学校生活を通して生徒は成長しています。既にクリアしたハードルを見せ続けても、そこから先の成長は大きくなりません。
夏までの生徒の行動や発言を振り返り、何をどこまで出来るようになっているか確かめた上で、次に挑ませるハードルの高さを決めましょう。
先に伝えた期待も満たせているとは限りませんが、同じところにハードルを置くにしても、改めて伝え直さないと生徒の意識や記憶から消えているかも。4月の時点では言葉を理解するのに必要な前提が揃っていなかった可能性だってあるはずです。
当然ながら、先生方の期待や方針が個々バラバラでは生徒は戸惑うばかりです。生徒に伝える前に、先ずは「先生方の目線合わせ」と「方針のすり合わせ」を密に行っておくのは言うまでもありません。



2学期の授業再開に当たり、生徒に「何のためにいろんな教科・科目を学んでいるのか」を尋ね、考えるところを言葉にさせてみましょう。秋からの学びに、新たな意識と学ぶ理由を持つきっかけになり得ます。

学校行事などが続いて授業から離れる日が増える中、少し離れたところに視点を置き、これまでの/これからの自分の学びについて考えることには、小さからぬ効果があるはずです。
特に1年生は、4月の入学式に抱いていた熱い思いを忘れかけているかも。入学以来、様々な場面で先生方が直接的・間接的に伝えてきたことを、教室内外の体験を通してどこまで消化できているか、如上の問いにどんな言葉を返してくるかで探ってみましょう。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一