教科会が年間スケジュールに組み込まれた定期開催となっている学校ばかりではなく、重要な確認事項があるときにのみ開催するというケースも少なくないようです。
教科内の情報共有は主に職員室などでのカジュアルな対話を通じて行われているだけで、議論やすり合わせをしっかり行う場はなかなか確保できないというお話も耳にします。
会議はそれ自体が時間という教育リソースを消費する活動ですので、できれば少ないに越したことはないのでしょうが、教科会に期待される本来の機能(以下1~4)を十分に発揮していることは大前提。その前提を満たした上で省ける無駄は省くという順序が大切だと思います。
- 模擬試験/学力テストの結果分析
- 学年教科内での協議結果や取り組みの進捗状況の共有
- 入学から卒業までの定期考査の出題計画/作問方針の策定
- 好適な指導手法の共有と指導法開発に向けた協働
2019/11/20 公開の記事をアップデートしました。
❏ 模擬試験等の結果を踏まえた改善策の立案
模擬試験や学力テストの結果を受けて、教科学習指導上の改善課題を形成したり、立案された改善行動/計画の進捗を確かめ、成果を検証するといった機能は、当然ながら教科会に期待されるものです。
データの分析は進路指導部が引き受けることが多いと思いますが、学習内容に直結した教科固有の学力向上策を練り上げるには、教科の専門家である先生方の協議が欠かせません。
模試業者から提供されたデータに、進路指導の方針を策定しその結果に責任を担う組織(多くは進路指導部だと思いますが)が解釈を加えた後に、教科主任会を通して各教科に改善策の立案と実行を依頼するという流れが最も合理的だろうと思います。
模試は学年ごとの実施であるため、どうしても課題形成や改善行動の成果検証は学年教科に閉じて行われることが多くなりがちですが、それだけでは大きな落とし穴が待っています。
ある学年教科が抱えた指導上の問題は、そのチームが備える知見や指導への発想ではカバーできなかったところに生じることが多いため、他の学年を担当する先生方とも考えや気づきを交換しながらでなければ、有効な改善策を立てられる保証はありません。
また、ある学年で顕在化した学力形成上の問題は、その前年度の指導の不備に起因することもありますので、全学年を串刺しに教科全体で課題を共有する必要があります。
ある学年教科から起案があったのに、その後一向に成果検証の報告がない場合は、教科主任が報告を促し、「やりっぱなし」にならないようにしたいものです。
❏ 学年教科内での協議結果等の共有
日々の学習指導を通じて検知された課題や取り組みの進行具合などは、指導に直接的に関わる教員間では日々交わされる対話の中で共有できていたとしても、その場に居合わせなかった先生方との情報共有が十分でないケースもあります。
前述の通り、学習指導上の改善課題は学年を跨いで立案・実施しなければならない場面も少なくありませんし、大きな成果を得た取り組みがひとつの学年教科の中に閉じてしまっては、教科全体での指導改善は進まなくなります。
学年教科内で協議された事柄は他学年を担当する先生方とも着実に共有できるよう、簡単なメモでもかまいませんので、記録に残して教科会に持ち寄るようにするのが好適です。
校内サーバー等に報告をアップしているという学校もありますが、必ずしも全員が見てくれる保証はありませんし、報告に対するフィードバック(意見や助言)が得られないデメリットも小さくないはずです。
各学年教科から上がってきた報告には教科主任が目を通し、優先度の高いものは教科会議題予定に組み込んで漏れのない共有を図り、必要があればきちんと協議に時間を取りたいところです。
❏ 考査問題は入学から卒業までを通した仕様で
各学年での教科学習指導を計画するときに、学年や学期ごとにどのような考査問題を出題するかも併せて協議・確認しておきたいところです。
生徒は考査問題に合わせて学習しますので、各学年教科でバラバラの出題方針になっては、生徒の学びにも正しい方向付けができなくなりますし、学力形成の経過をきちんと把握できる土台も整いません。
出題の方針/作問の基本仕様で、学年ごとの段階性を持って規定しておくべき事柄には以下のようなものが含まれます。
- 記述や論述を求める量(選択問題、客観問題、論述問題の比率)
- 初見の題材(テクスト、資料等)を用いた出題の割合
- 見通しを立てて解法を考え、思考や判断を試す問題の比率
- 学力測定項目ごとの得点配分
- 考査以外の評価機会でのパフォーマンスの評定への組み入れ方
当然ながら、毎回の定期考査において、出題方針やあらかじめ決めた仕様の通りに問題が作られているかも、教科会の中で相互に検証するべきだと思います。
こうした場の中で、他学年の出題の中に倣うべき好適な「問い方」を見つけることも多々あろうかと思います。互いに出題スキルを高めていくことは、問いの立て方、評価の仕方を軸に教科全体での指導力を高めていくことに繋がります。
❏ 研究授業・相互参観で指導方法の共有と開発
多忙な校務の中で、研究授業を体系的・計画的に実施できている学校はそれほど多くありません。教員間での相互参観も、各教科での有志による自発的な取り組みに限られているケースが多いようです。
自発的な取り組みにはそこに関わる先生方の高いモチベーションが期待できる一方、課題や成果が教科全体で共有できない不利もあります。
すべての生徒に好適な学びを提供するには、一人/一部の先生が開発・発見した好適な手法を全体で共有すべきですし、未解決の課題にも協働で取り組んだ方が早期に確実な解決が図れます。
定期考査や模擬試験、外部検定のデータから、特に高い指導成果をあげている授業を特定し、そこでの実践を知る機会を作るべきです。大きく伸びたクラスを担当している先生から、どのような指導の工夫・取り組みを行っているか教科会で発信してもらうことからの着手が好適です。
他の先生が興味を持ち、広く応用できそうな手法ならば、授業を公開してもらい、教科全員で実際の指導を見学できる機会を作りましょう。
学力観が新しいものに切り替わる中、対話的で深い学びの実現や、PBLの要素を含んだ授業デザインなど、先生方の協働で手法の開発を進めるべき課題も少なくないはずです。
研究テーマごとに成果検証の方法(=効果測定の指標)をしっかりと固めた上で、それぞれの先生が最善と思う方法を自分が担当する授業で試し、一定期間を経たのちにそれぞれの成果を持ち寄って比較すれば、自校の生徒の特性にマッチした方法を探り当てることもできます。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一